要領の悪い人が行いがちな「モチベーションを低下させる習慣」とは?
2024年06月05日 公開
「仕事を速く終わらせる」「生産性を上げる」ために、本当に効果的な手法とはどういったものなのでしょうか? 本稿では要領のいい人が行っている2つのポイントについて、塚本亮さんが紹介します。
※本稿は塚本亮著『要領よく成果を出す人は、「これ」しかやらない』(PHP研究所)より、一部を抜粋編集したものです。
弱さを克服しようとしても、あまりいいことはない
どんな人にも長所と短所があります。多くの人は短所を直そうと努めますが、要領のいい人は、特に直そうとしません。それよりも、相手の長所を活かして、自分の短所を補います。そのほうが、ストレスが少ないからです。
・相手の専門領域を尊重しよう
人にはそれぞれ「向き不向き」や「得手不得手」があります。数字に苦手意識を持つ人もいれば、対人コミュニケーションが苦手な人もいます。新しいアイデアを生み出すことに長けている人や、他者の心を掴むのが得意な人もいる。このように、人はそれぞれ違うから社会が成り立ちます。それぞれの強みを活かしながら貢献しているのです。
スポーツでもそうですよね。守備が得意な人がいれば、攻撃が得意な人もいる。足の速い人もいれば、誰にも負けない戦術眼を持っている人もいる。違う個性を持った人たちが集まり、互いの良さや強みを活かすから、チームが機能します。
だから、要領のいい人は、自分が不得意なことに対して無理に挑戦しません。苦手なことを無理に解消しようともしません。
当然のことながら、どうしても不得意なことでがんばろうとして仕事をこなすのは時間がかかりますし、成果も出にくいものです。苦手なことは、自分よりも上手にこなせる人に任せてしまったほうが、合理的で物事はスムーズに進むでしょう。
私の会社では、英語の添削・校正サービスを提供していますが、ユーザーによって本当にさまざまな要望があります。物理学を専攻している人の論文添削を希望する人もいれば、美術史を専攻している人の論文添削を希望する人もいます。法律文書の添削を希望する人もいます。
たとえ日本語が得意であっても、専門外の分野、たとえば物理学の複雑な論文を読み解くのは困難ですよね。専門的な知識や用語に対する理解が必要になるため、その分野に精通していないと、内容を正確に理解することは難しいのです。これは、言語だけにとどまらず、専門性の高い分野全般に言えることです。
同じように、英語が母国語であるからといって、すべての英語の文書を理解できるわけではありません。特に、専門的な分野では、その分野の専門知識がなければ、文書の内容を適切に理解することは困難です。
たとえば、法律や医学、工学などの分野では、専門的な用語や概念が豊富に用いられており、それらを理解するには、その分野の学習と経験が不可欠です。英語の文書をチェックする際にも、単に言語を理解するだけではなく、文書の内容に関連する専門分野に精通していることが重要となります。
やはりそれぞれの分野にフィットする人をあてるほうが、物事はサクサク進むに決まっています。そのため、海外のフリーランスでそれぞれの道に詳しい人物を見つけ、仕事を依頼するための仕組みを築いています。
その分野に詳しい人にお願いすれば、作業も確実で、スムーズに進むので、ユーザーにも最適なサービスを提供できますから。結局のところ、専門性を尊重し、それぞれの分野のエキスパートに適切な役割を委ゆだねることが、全体の効率性を高め、よりよい成果を生む鍵となるのです。
・あなたの専門性は何ですか?
私は自分の強み(専門性)について考えてみると、新しいアイデアを生み出すことに長けていることを実感します。創造力とイノベーションのスキルを持っているのですが、そのアイデアを実現する過程には、私一人の力では限界があります。私が思い描くアイデアやビジョンを具体的な計画に落とし込み、それを管理し実行に移すには、マネジメントする人が必要です。
私のアイデアが形になるのは、それを細分化し、管理してくれる人たちのおかげです。細かい作業や日々の管理業務は、私にとっては苦手な領域です。そうした細かい部分にエネルギーを消耗するよりも、自分の得意分野であるアイデア創出に集中するほうがずっと効率的です。
そのため、私は組織やチーム内で、細部にわたる作業を得意とする人たちと協力し、彼らにそのようなタスクを任せることで、全体の生産性を高めることが大切だと気づきました。私は、自分の強みを最大限に活かしながら、チーム全体の効率と成果を向上させることができます。
アイデアを思いつくこととそれを実現させることは、異なるスキルセットを要求されます。私のアイデアが現実のものとなるためには、各人の得意分野を活かしたチームワークが不可欠なのです。
あなたはどうでしょうか。苦手なことでも無理して、「なんとか形にしなければ」とがんばっていないでしょうか。要領よく何かを進めるために必要なのは取捨選択です。何をやるかを決めることも大事ですが、何をやらないかはそれ以上に大事なのです。
自分を変えず、「環境」を変えよう
帰ったらお酒をガマンして資格試験の勉強、ダイエット中だから甘い物はガマン......。実はこうしたセルフコントロールは、長期的にモチベーションの低下を招く原因となります。自制心を働かせずに、自分の欲望に勝つ方法はあるのでしょうか。
・意志の力を使うだけで、疲弊してしまう?
こんな研究結果をご存じでしょうか。
2017年にカールトン大学のマリナ・ミリャフスカヤ教授とトロント大学のマイケル・インズリット教授が行った研究では、159人の大学生を対象に目標達成率と誘惑物との接触回数の関係が調査されました。この研究で明らかになったのは、誘惑物との接触回数が少ないほど、目標を達成する可能性が高まるということです。
つまり、目標を達成するためには、誘惑に打ち勝つことではなく、そもそも誘惑物との接触をなるべく減らすことが重要なのですね。誘惑に対するセルフコントロールが、長期的にみると実はモチベーションの低下を招く原因となることが示されています。
たとえば、「ダイエットのためにケーキをガマン」と決める際、「食べたい」という欲求を抑えることは、心のエネルギーを消耗させ、モチベーションを低下させます。
要領のいい人たちは、自分との不必要な戦いを避けます。意志の力を使うことで、精神的に消耗することを知っているからです。
早起きして資格試験の勉強をする場合も考えてみましょう。テキストを購入し、早起きする時間を決め、学習計画を立てる。ここまではいいスタートです。
しかし、重要なのは誘惑物への対処です。周囲に誘惑が多い環境では、計画通りに学習するのが難しくなります。そのため、勉強環境を整え、誘惑物を手の届かない場所に置くなどして、計画に集中できるよう工夫することが重要です。このように、意識的に誘惑物との接触を減らすことが、目標達成の鍵なのです。
特に、スマートフォンが阻害要因になっていることが多いかもしれません。連絡のテンポが上がり、ひっきりなしにスマートフォンが鳴っています。何かをしようと思っていた矢先にLINEの通知が来たり、SNSの更新があったりすることで、気が散ってしまうことがあります。
対処法としては、勉強や仕事の時間にはスマートフォンを別の部屋に置く、または通知をオフにするなどして、集中力を保つ工夫などが考えられます。スマートフォンを使用する時間を決めておくことも、誘惑を減らす1つの方法です。
こうした小さな工夫を積み重ねることで、意志の力を節約しながら、本来の目標に集中することが可能になります。
現代社会において、テクノロジーとの適切な付き合い方を見つけることは、目標達成のために不可欠なスキルと言えるでしょう。要領のいい人たちは、自分の弱さや限界を把握しています。だからこそ、自己制御を要する状況を減らし、モチベーションを維持しているのです。
この方法は、自分自身の限界を認識し、それを素直に認める能力を持っているからこそできることでしょう。自分の能力を過信していないのです。
結局のところ、自分自身をよく知っていること。これが、賢く目的を達成するための重要なポイントなのかもしれません。ストレスなく目標を達成するためには、自分が集中しやすい環境を、自分の手でつくることが一番です。自分の弱さや限界を知り、先に手を打ってみてはどうでしょうか。