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話し上手な人ほど「お世辞」を言わない理由とは? 相手の話を聞き出す真のコツ

井手隊長(ラーメンライター)

2024年06月10日 公開 2024年12月16日 更新

コミュニケーションの難しさを感じている人は多い。目上の人や得意先などとどのように円滑に話が進められるか、日々悩んでいるビジネスパーソンもいることだろう。コミュニケーションのプロであるインタビュアーはどんなスキルを持っているのか、なにを大事にしているのか。年間100本以上の連載を持つ取材のプロ、ラーメンライターの井手隊長が語る。

※本稿は、井手隊長著『できる人が知っている「ここだけの話」を聞く技術』(秀和システム)より一部抜粋・編集したものです。

 

コミュニケーションに天性の明るさは必要ない

「円滑にコミュニケーションを取るためには、明るくしないといけない」という感覚があるかもしれません。じつは、私もそうでした。ですが、世の活躍しているインタビュアーや司会者、記者などがみんな底抜けに明るいかというとそうではありません。

そもそも、天性の明るさを持ち合わせている人はいいのですが、そうでもない人にいきなり明るくなれと言っても、それは酷なことです。会話やコミュニケーションは人と人、つまり相手があって成り立つもので、相手に合わせてコミュニケーションを取ることが本来は正解のはずです。

明るいコミュニケーションがぴったりの方もいれば、人によっては物静かで口数も少ない方もいます。

口数の少ない方にマシンガントークで、とびきり明るくコミュニケーションを取ると会話は破綻してしまいます。相手によって、明るさのレベルを変えられるようになることが理想です。聞き手は、自分をぐいぐい出していくのではなく、相手の明るさに合わせて自分の灯りの輝度を決めていく…そんな感覚でいるといいでしょう。

 

お世辞やよいしょは、百害あって一利なし

そして"よいしょ"も禁物です。

自然に出るものならいいのですが、事前に用意していったよいしょは、相手にすぐバレてしまいます。

私も取材を受けることがたまにありますが、わかりやすいよいしょは、体がむず痒くなりますし、むしろ空気が悪くなってしまいます。

よいしょは単なるお世辞なので、中身がまったくないのです。

また、よいしょなのか本気なのかは、話していればすぐにわかります。

とくに、取材に対する事前準備をたいしてしていないのに、よいしょだけを会話に挟んでいくとほぼ100%印象が悪くなります。

「〇〇の雑誌で特集されている記事を夢中で読みました!すごい記事でしたよね!」

こう言われたら、言われた側としては、その雑誌の中身の話をしたくなるものです。ですがそうなったとき、記事をたいして読んでいないと、途端に話はちぐはぐになります。

薄っぺらな話は全てバレてしまうのです。よいしょではなく、本当に自分がすごいと思ったものに対して言及するほうがいいでしょう。

とくに、有名な人に会うときのよいしょは、本当にやめたほうがいいと思います。

有名な人は、ふだんから褒められ慣れていますし、さんざんよいしょされてきていますから、その中で薄っぺらな人を見分けることにも慣れているのです。

よいしょで安易に懐に入ろうとするのではなく、等身大の自分でぶつかっていきましょう。「正面からいっても、どうせ敵わない人なんだ」と割り切るぐらいがちょうどいいと思います。そのほうが、相手はこちらを包み込んでくれるはずです。

 

絶対に必要なものは「仮説を立てる」こと

取材やインタビューをするにあたって、私がマストでやるべきだと思っていることのひとつに「仮説を立てる」ということがあります。

私であればラーメン店に取材に行くことが多いですが、この店主はどんな経歴で、どういう苦労をされてお店をオープンし、人気店にまでたどり着いたのか、それをある程度「仮説」として、自分の中で立てておくのです。たとえば、高校を卒業してすぐにラーメン店で修業し、その後、独立した店主であれば、幼少期から料理が好きで料理人になるのが夢だったのではないか。

はたまた、昔お父さんに連れていってもらって食べたラーメンが原点でラーメンにハマり、ラーメン職人を目指した人物なのではないかなど、事前に妄想を膨らませておくのです。

こうした仮説を事前に立てておくと、その仮説との差を感じながら話が聞けるので、推理モノの答え合わせをしている感覚でたいへんおもしろく、前のめりに取材を進めることができます。

 

あらかじめ相手のことを調べる事前準備が大切な理由

仮説を作るのに何が必要かというと「事前準備」です。

事前に取材対象者の情報をしっかり洗っておくことが大事なのです。

お店のホームページやご本人のSNSを覗いておくことはもちろん、ほかのメディアで取材されている記事などにも目を通しておきましょう。

私は、割とこれは当たり前のことだと思っているのですが、意外とできていない記者が多いと感じています。

しかし、やはり丸腰で取材に行ってはいけません。

本をしっかり読み込み、他メディアの記事や動画などもしっかりインプットした上で取材に臨みます。

事前準備がないと、基本情報をヒアリングしている時間が長くなってしまい、肝心なおもしろい部分にまで到達せずに取材の時間が終わってしまいます。

とくに、有名な方や経営者などは取材の時間が長くは取れないので、事前準備を十分にしておくことが大事です。

ほかのメディアに書いてあることは置いておいて、肝心な部分にだけ時間を割けば、仮に30分の取材だったとしても、しっかり話を聞くことができるのです。

仮説以外にも事前準備をおこなうメリットはあります。それは、ほかのメディアに書かれていないことを聞き出そうという気合いがみなぎってくるということです。

私は、むしろそのために念入りな事前準備を始めました。

「せっかく自分で記事を書くなら、ほかのメディアに書かれていないことを書きたい」

その思いから事前準備を始めることにしたのです。

そうすることによって、十分な事前準備と仮説を立てた上で、取材に臨むことができるようになりました。

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