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認知症の柴犬を介護する猫 飼い主が忘れられない「二匹の別れの時」

2024年08月07日 公開

 

くぅがしのに一目ぼれ

――くぅちゃんがしのちゃんを介護する姿でも話題になりましたが、2匹の最初の出会いはどのようなものでしたか?本には2013年の夏、くぅちゃんの一目ぼれから始まったとありましたね。

【晴】2匹が出会ったのは、それぞれを保護してしばらく経ってからでしたね。当時私は実家にいたんですけど、母が犬が苦手で、しのは庭で飼っている状況でした。

ある時、くぅは窓越しに偶然しのを見つけたんですが、その時のくぅの瞳はもうキラッキラでしたね。写真に残しておけばよかった。ちゅ~るを見てもあんなにキラキラにはならなかったのに...笑

雨や雷などで天気が悪いときはしのを玄関に入れて寝かせることがあって、そこで2匹が直接会えていたわけなんですが、くぅがしのにまとわりついて... しのは元々猫が嫌いだったので、キュンキュン泣いたり、怒って吠えたり、玄関の隅にいって寝たり、必死に避けていました。

でも、くぅはめげない性格なので吠えられてビクッてするものの、しのが落ち着いたらまた近づいていましたね笑

その後私が引越してしのも室内飼いになり、引っ付いてくるくぅにしのが折れる形で一緒に居るようになりました。

――引越し後、しのちゃんに認知症の症状が見られたそうですね。

【晴】しのは保護してから5年くらいで認知症になってしまいました。室内飼いになって、穏やかに暮らせることに安心したのかもしれません。

徐々に段差を乗り越えられなくなり、目を離すと家具の間に挟まるようになりました。後ろ歩きができないので、挟まったまま鳴き続けていました。呼んだら振り向いたりはするんですけど、身体は動けないので鼻に傷がついてしまったり、目が離せなかったです。

 

認知症で歩き回るしの、付き添うくぅ

――しのちゃんの介護で大変だったことは何でしょうか?

【晴】しのが安心して歩けるようにサークルを手作りしたんですけど、どうしたらいいかわかんなくて四角形で作ってしまって... 四角形って角があるから結局挟まるじゃないですか。それで試行錯誤して、形や高さ、広さや怪我をしない素材とか、ぴったりなものを作るのがとても大変でした。

最終的に円形で落ち着いたんですけど、段ボールに緩衝材を巻いて、見栄えもよくするためにレンガ調のシールも貼りました。

もう一つ大変だったことは、認知症が進行して亡くなるまでの半年ぐらいは、わんわんと1日中鳴くので、常に付きっきりでそばを離れられないことでした。だから3日は連続で徹夜して、家族に協力してもらいながらやっと休めても2時間ほどしか睡眠できませんでした。

その頃、目の手術もしていたので、目に何かが当たらないように24時間ずっと見ていなきゃいけなかったのもあります。今思い出しても、私自身よく倒れずにいられたなと...

――お話を聞くだけでも気が遠くなりそうです... くぅちゃんも介護を助けてくれたのですよね。

【晴】ある晩、2階で寝ているとくぅが切羽詰まった声で呼びに来たんです。見に行くと、しのが1階で家具の間に挟まって動けなくなっていました。それがくぅがしてくれた初めての介護でしたね。

その後、しのがサークルの中をぐるぐるずっと歩き続けるようになってからは、くぅが私の代わりに付き添って歩かせてくれるようになりました。しのが止まったら自分の顔や背中で支えて、また歩き出しやすいように誘導してくれていました。

くぅが付いてくれている間に私はご飯を食べたり、トイレに行ったり、おかげで休憩がとれていたんです。

てんかん発作も起こすようになって、さらに手がかかるようになりました。足腰がふらついて立ち上がることができないのに歩いていないと吠え続けるので、両手でしのの身体を抱えて歩かせて、安定してきたらくぅにバトンタッチして一緒に歩いてもらったり。落ち着くまで4,5時間はその状態が続くんですよ。

脳が起こす発作なので尿失禁、便失禁もあり、目もほとんど見えていなかったですし、自分でも何が起きているのかわからず怖かったんでしょうね... だから、その頃のくぅのフォローはとても助かりました。

 

くぅは亡くなったしのに近づけなかった

――2018年3月7日、しのちゃんは急に容体が悪化して、病院で虹の橋を渡ったのですよね。その時のくぅちゃんや、他の猫たちの反応を改めて教えていただけますか。(こちらの記事にも詳しく書かれています

【晴】しのが病院で亡くなって、その亡骸を連れて帰ってきたときは、みんな状況を察してずっと静かでしたね。病院で綺麗に処置してもらったしのを家で寝ていた場所にそっと横たわらせたら、猫たちが1匹ずつ寄ってきて顔を近づけて、まるでお別れの挨拶をしているようでした。でも、くぅだけは呼んでも近づくことができなくて、離れた場所から怯えたようにこちらを見ているだけでした。

一晩経って、ようやく自分から側に寄り、しのの顔を覗き込むことができました。それが2匹の別れでしたね。その瞬間は悲しくて、いまも深く心に刺さっています。

それからしばらく、くぅは塞ぎ込んでしまいました。元々やんちゃな食いしん坊で面白くて、家の中心的な存在だったんですが、しのが亡くなる3か月くらい前から体調を崩すようになっていました。しのの最期を感じていたのかもしれません。

亡くなった後もくぅはずっと独りで、遊ぶことも走り回ることもしなくなって、暗く、寂しい場所でいつも丸まっていました。近づいて話しかければこちらを見てくれるのですが、表情は暗く悲しい目をしていました。人間のような子だったので、しのの死から色々と受け取っていたようです。

(取材・執筆 PHPオンライン編集部 片平奈々子)

 

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