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仏教では「嫉妬心は毒」 他人の成功を喜べない、卑屈な性格が変わる考え方

大愚元勝(住職・慈光グループ会長)

2024年10月11日 公開 2024年12月16日 更新

SNSの投稿を見て、つい嫉妬してしまった経験はありませんか? 嫉妬心は心の毒。他人を妬むのは、苦しいものです。つらい感情を手放すにはどうしたらいいのでしょうか。本稿では書籍『自分という壁』より、仏教の教えから学ぶ、嫉妬心を克服する方法を紹介します。

※本稿は、大愚元勝著『自分という壁 自分の心に振り回されない29の方法』(アスコム)より内容を一部抜粋・編集したものです。

 

嫉妬の反対は喜び

「すぐに人と比べて嫉妬してしまう自分が嫌」

それこそ現代ではSNSなどで他人の生活や行動が丸見え状態なので、不必要な嫉妬の感情を抱いてしまう方が多いのも無理はありません。じつは嫉妬に対する処置は至ってシンプル。

「他人の喜びに対して、あなたも一緒になって喜んであげること」

これが最も効果的です。ただ、誰しもどうしても競争心があって、ついつい相手を妬ましく思ってしまうものなので、なかなかすぐにはできないでしょう。

例えば、私たちはオリンピックを見ながら「頑張れ!」とスポーツ選手のことを応援したりしますよね。まったく知らない赤の他人なのに、金メダルを取ると「やったー!」とその活躍ぶりをみんなで喜びます。

そもそも仏教では「嫉妬」の反対語が「喜び」なので、「自分ごとのように、本当に喜んであげることを練習しなさい」とブッダも説いていました。

嫉妬は怒りの一種であり、毒のひとつですので、ずっと持ち続けると心を破壊していきます。全然知らない人、自分とはレベルが違っていて敵わないと思える人に対しては素直に喜べるのに、これが自分の知り合いや自分と似たようなレベルの人(だと思い込んでいる人)だと、妬ましく思ってしまう。

野球の大谷翔平選手やゴルフの松山英樹選手、あるいは世界的に活躍しているアーティストに対して「妬ましい!」と思う人はほとんどいないでしょう。これが自分のチームメイトや同僚、友達だと嫉妬してしまい、その成功を素直に喜ぶことができないのです。だからこそ、意識的に喜ぶ練習をしなければなりません。

 

他人の成功を喜べる人は自分も幸せになれる

プロゴルファーのタイガー・ウッズ選手は、同じ試合で戦っている相手のショットでも「入れ!」と一緒になって応援したそうです。ふつうは自分が勝ちたいのですから「外れろ!」と念じてしまいますよね。でも、彼はライバルのショットだとしても、自分の脳内に外れるイメージがつくられることを嫌いました。

自分にとってもネガティブなイメージトレーニングになってしまいますので、彼は当たり前のように他人の成功を願い、喜んでいるということです。そうすることで、いざ自分が打つときにも、失敗する姿ではなく、成功する姿を想像しやすくなり、結果的にポジティブな循環が生まれます。この原理を知っておくと、他人の成功を喜ぶことの意義もわかってくるのではないでしょうか。

私の実体験としてもお伝えしたいお話があります。

私は僧侶であるとともに空手家の顔も持っていますが、同じ道場に黒帯を取るのに16年かかった後輩Yくんがいました。黒帯は流派にもよりますが、私の所属している団体では、8~10年くらいで取得できるので、時間がかかったほうだといえます。

Yくんは試合に出る仲間のためにミット打ちやアップに付き合うことを優先してしまい、自分の試合の出番を忘れてしまうくらいのお人好しでした。そして、同期や後輩たちがどんどん自分を追い越していくにもかかわらず、妬みの感情などを見せることなく、相手の成功を心から喜んでくれるような人でした。

大会で良い成績を残したことはなかったのですが、「Yくんに黒帯を取らせたい」「Yくんが黒帯じゃなかったら、誰が黒帯だというんだ」―道場にいる誰もがそう思っていました。

だからといって黒帯の昇段試験に情状酌量はありませんので、やはり戦いになると先輩たちに敵わず、何度も何度も倒されてしまっていました。それでも、16年目のその昇段試験では最後まで闘う姿勢が崩れませんでした。

小さいときからいじめられっ子だったYくんは、強くなりたいと思って空手道場に入り、長い年月をかけて黒帯を手にしたわけです。本人も泣きながら喜んでいましたが、道場の仲間も同じように一緒になって喜びました。

試合でもなかなか勝てず、後輩たちにも追い抜かれる状況にありながら、Yくんはつねに他人の成功を一緒になって喜べる人でした。だからこそ、周りの誰からも好かれ、心から応援されたのだと思います。

 

「それは本当にほしいものか?」を見極める

そうはいっても他人の成功を喜ぶことはなかなか難しい......と思ってしまう方には、それ以外の対処法もお伝えしておきたいと思います。

ひとつは、競い合わないで済む人間関係をつくることです。

年の離れた人、まったく違う業界の知り合いなど、ふだんの自分の生活とは関係のない場所で出会った人や、属性が異なる人であれば、比較したり、競争したりするところがあまりないため、フラットな気持ちで付き合うことができるでしょう。

誰かに対して「いいなぁ」と思ってしまうのはしょうがないことですし、それ自体がダメなわけではありません。けれども、そこから「どうしてあの人ばっかり!」「自分のほうが......」などといった黒い気持ちに吞まれないことが大切なのです。

「いいなぁ。でも、私は私で頑張ろう」と、自分とは切り離して、切り替えて考えられるようにできれば、苦しい気持ちにとらわれることは減っていくでしょう。

また一方で、「いいなぁ」と感じてしまうことは、「本当に自分が求めているものなのか?」を自問自答してみるのも良いと思います。

例えば、毎日たくさんの人に囲まれて食事や遊びを楽しんでいる人や、高価なブランド品に囲まれている人。「たくさんの友達がいる人は優れている」「高価なブランド品を持つのは成功している証だ」などといった、世間の価値観に惑わされていないでしょうか。

よくよく考えてみたら、あなた自身はひとりで静かに過ごすほうが好きだったり、高価なブランド品よりも自分が本当に気に入るものを探すほうが好きだったりするかもしれません。

自分の心を見つめ、「自分が本当に大切にしたいものはなにか?」を考えてみると、苦しい嫉妬の感情がじつは「錯覚」だったことに気がつけるでしょう。

著者紹介

大愚元勝(たいぐげんしょう)

僧侶

佛心宗大叢山福厳寺住職。僧侶・作家・事業家・セラピスト・空手家と4つの顔を持つ。YouTubeのお悩み相談チャンネル「大愚和尚の一問一答」は、登録者60万人を超える(2023年10月現在)。著書に『自分という壁』(アスコム)などがある。

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