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上司に叱られたくない...「ミスを恐れる若手社員」が褒められる人材に変わるには?

原邦雄(株式会社スパイラルアップ代表取締役)

2024年10月10日 公開

コロナ禍をきっかけにリモートワークが浸透するなど、私たちの働き方はこの数年で大きく変化しました。社内コミュニケーションが希薄化するなかで、新しく社会に飛び出した若者たちはどのように生き抜いていけばよいのでしょうか?

人材育成メソッド「ほめ育」の開発者で、人材研修の専門家、株式会社スパイラルアップ代表取締役の原邦雄氏が解説します。

※本稿は、原邦雄著「社会人3年目までの、ほめられる技術」(ぱる出版)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

今こそ「自力で生き抜く力」を身につけろ

まさに現代は、VUCA(ブーカ)の時代です。VUCAとは「Volatility:変動性」「Uncertainty:不確実性」「Complexity:複雑性」「Ambiguity:曖昧性」という4つの単語の頭文字をとった造語。「先行きが不透明で、将来の予測が困難な状態」を指します。

どうすれば、「VUCAの時代を自力で生き抜く能力」を身につけていけるのでしょうか。

そのカギを握るのが、社会人3年目までの「ほめられる技術」です。

ほめられる技術を使い、20代で「ほめられ貯金」を増やすと、困難を乗り越える力が身につきます。すると、どんな時代であろうと自力で生き抜くことができるようになるのです。一方で、ほめられ貯金を増やすには、注意される・叱られることも経験しなくてはならないのも事実です。

もちろん前近代的な悪しき習慣を押しつけるつもりはありませんが、現代の過剰な"アンチ厳しさ"の風潮には危惧を感じています。高校や大学を出て社会人になり、リタイアするまでは約45年間にも及びます。この長い期間を何のよろいも身にまとわず、無防備な"丸腰"状態で乗り切れるでしょうか?

たとえばプロ野球の世界では、シーズン開幕前に約1カ月間春季キャンプを行います。この期間の練習量や質によって、レギュラーになれるかどうかが決まります。厳しいトレーニングではありますが、このときにどれだけ努力するかで、勝負の舞台に立てるかどうかが決まるのです。

「石の上にも3年」という古いことわざがありますね。成果を出すためには時間がかかるもの。その目安として昔から言われてきたのが「3年」なのです。入社して最初の3年間は、過ぎてしまえば二度と戻ってきません。この時期に何を考え、どう行動するのかが、あなたの成長を決めます。

上司から注意されたら、最初はこたえるかもしれません。でも、厳しい言葉や叱責の中にこそ愛があるととらえ、まずは上司と自らコミュニケーションを取ってみてください。

若い皆さんは、行動や経験から決して逃げてはいけません。どんどん場数を踏みましょう。そして大量に学びましょう。もしかすると壁にぶつかるかもしれませんし、思い切り叱られることもあるでしょう。でも、その全てが貴重な学びになるのです。

 

恐れず果敢に失敗することが成長の糧になる

誰だって、仕事で失敗はしたくありませんね。けれども今の20代の人たちを見ていると、その気持ちが過剰にはたらきすぎだと感じます。

皆さんの親は、リーマンショックを経験した世代。子を失敗させまいと安全地帯ばかりを歩かせる傾向があります。先回りして失敗させずに育ててきたのだから、失敗の経験がないのも当たり前なのです。

だから失敗をしたくないし、失敗することを過剰に恐れてしまう。そして失敗することを避けてきた結果、失敗に慣れていない。だから余計に「失敗は怖い」と感じて、避けたくなってしまう...そんな悪循環に陥っているように感じます。

ですがその一方で、あえて挑戦する若者が増えていることも感じます。とても頼もしく、思わず「頑張れ!」と応援したくなります。

失敗したら注意されるでしょう。ミスをしたら小言を言われるかもしれません。でも、それでいいじゃないですか。最初から何でもできる人なんていませんし、失敗すること自体は決して悪いことではありません。

そもそも失敗しない人は、チャレンジすること自体を放棄している人です。何かにチャレンジするからこそ、失敗という結果がついてくるわけですから。失敗して叱られる。それは、うまくいかなかった原因や改善のためのアドバイスをしてもらえる絶好の機会です。

クライアントに提案書を送ったけれど、いい結果が得られなかった。しかも上司からは「なぜ顧客の要望もろくに聞かず、提案書をつくったんだ。そんな独りよがりな提案でうまくいくわけはないだろう」と、思い切り注意されたとしましょう。

でも、それでいいのです。

今回失敗したのは、上司が指摘している通り、「自分の視点だけで仕事を推し進めたこと」が原因。次からはヒアリングシートをつくって丁寧に要望を聞き取り、提案内容に活かせばうまくいくはず。「失敗は成功のもと」とは言い古された言葉ですが、今の時代も変わりません。やはり「失敗は成功のもと」なのです。

 

デキる社員はみんな、「叱られ上手」で「ほめられ上手」

皆さんの周りにも、いわゆる"デキる社員"がいるはずです。営業成績がいつもトップの先輩や、ユニークな企画を次々と提案する先輩、事務処理が抜群に速い先輩など、きっと思い当たる人がいることでしょう。

デキる社員には、ある共通点があります。それは「叱られ上手」だし、「ほめられ上手」だということです。叱られたときにやりがちなのが、素直に受け止められず、ふて腐れたり、「でも、それは...」と反論や言い訳をしてしまったりすること。

気持ちをコントロールできずガタガタ震えたり、涙を流してしまったりする人もいるでしょう。その根本には「攻撃されている」「自分のことを否定している」という強迫観念があるのかもしれません。

でも、叱られ上手な人は違います。じっと相手の目を見つめ、じっくり話を聞いています。感情を出さずに、いったんアドバイスを受け入れるのです。そして話が終わった後「分かりました。これから〇〇〇しようと思いますが、どうでしょうか」と、自分の考えが合っているか確認します。

このような対応ができるのは、「叱ってくれる人は自分の味方だ」と分かっているから。だから話をしっかり聞くし、反省の気持ちを素直に示せるし、具体的な解決策も真剣に考えるのです。

こういう人は、同時に「ほめられ上手」でもあります。人はほめられると、つい「いえ、そんなことありません」と謙遜してしまいがちですが、ほめられ上手な人は素直に受け止め、ほめられたことを喜びます。するとほめる側も自然と表情がゆるみ、笑顔になるのです。

上司は、あなたに期待しているから注意するし、叱るのです。可能性を信じてくれている証拠なのです。

その結果、ほめられるようになれば、あなたはどんどん成長します。「いえ、そんなことはありません」といった言葉を返すのではなく、ほめ言葉をしっかり受け止め、自分が成長するための燃料に変えてほしいと願っています。

 

コミュニケーションが希薄な時代だからこそ、「ほめたくなる人材」になれ

「社内コミュニケーションの希薄化」は、今や多くの企業が頭を抱える問題です。けれども実は若手社員にとって、この状況は逆にチャンスだと言えます。

というのも、社内コミュニケーションが希薄化した今だからこそ、あなたたちが"潤滑油"として活躍できるチャンスがあるからです。

若手社員はまだ"できていないこと"だらけ。普段は淡々と仕事をしていた先輩社員たちも、皆さんの失敗や間違いを見れば気になって、アドバイスします。先輩同士で「どうやって教育したら良いだろう?」と相談することもあるでしょう。つまり若手社員が失敗することで、自然と社内にコミュニケーションが生まれるわけです。

あなたたちが潤滑油となって社内の空気が変わり、しかも貴重な学びが得られるわけですから、一石二鳥だと思いませんか?

もちろんコミュニケーションの機会を増やしたいからと、わざわざ失敗する必要もありません。若手社員ならではの「まだよく分かっていない」という立場を活かし、どんどん質問するのも良い方法です。

たとえば上司に「絶対に目標をクリアしたいのですが、おすすめの動画や本を紹介していただけませんか?」と聞いてみましょう。

上司も答えてくれるでしょうし、その現場を見ていた先輩が「さっきおすすめの本を聞いていたけど、〇〇は読んだ?」とアドバイスしてくれるかもしれません。さらに他の先輩も、「その本もいいけど、まずは〇〇のほうが読みやすいんじゃないかな」と、話に加わってくれるかもしれません。

コミュニケーションを生むための働きかけをしているうちに、あなたは気づけばいつでも輪の中にいるはず。潤滑油としての役割を果たしていることに周りも気づけば、ほめてくれることでしょう。

ぜひコミュニケーションの潤滑油になって、「ほめられる人材」になってください。

 

著者紹介

原邦雄(はら・くにお)

株式会社スパイラルアップ代表取締役/ほめ育財団代表理事

兵庫県芦屋市出身。大学卒業後、メーカーを経て、船井総合研究所に転職。様々な業種の人材育成に関わる。その中で、従業員のエンゲージメントの重要性を実感し、独自の教育メソッド「ほめ育マネジメント」を開発。これまでに600社以上の企業や教育機関に研修を行なっている。また、アメリカ、インド、中国、オーストラリアなど世界20か国に進出。著書に「今すぐできる! 今すぐ変わる!『ほめ育』マネジメント」(PHP研究所)など。

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