布団に入ってもうまく眠れない...、夜中に何度も起きてしまう...。そんな睡眠にまつわる問題が起きるのは、一体なぜなのでしょうか。睡眠専門医の白濱龍太郎さんが、不眠の原因となるNG習慣について解説します。
※本稿は、白濱龍太郎著『ぐっすり眠る習慣』(アスコム)より、内容を一部抜粋・編集したものです。
「寝る前スマホ」は睡眠ホルモンの分泌を抑える
寝る前のNG行為はたくさんありますが、ここでは「厳禁」といえるものを優先的に紹介していきます。
まず、いちばんやってはいけないのは水分をとりすぎることです。理由はいたってシンプルで、トイレが近くなるからです。せっかく気持ち良く眠っているのに、尿意に起こされてしまうのはもったいない。とくに頻尿の自覚のある高齢の方は注意しましょう。
寝る直前の水分摂取は、確実に安眠を妨げます。一時期、「寝る前にコップ一杯の水を飲むと健康にいい」ということがメディアで紹介されましたが、睡眠専門医からすると、推奨できる行為ではありません。
寝る前に水を飲むのではなく、夕食時に水分をとり、寝る前にトイレに行って用を足すのが正解です。
水分のなかでも、極力控えたいのはお酒です。「寝酒」という言葉があるように、寝つきを良くするためにお酒を飲む人は多いですが、できることならやめましょう。確かに身体はリラックスして眠りやすくなるかもしれません。しかし、マイナス要素のほうがはるかに多いのです。
アルコール(とくにビール)には利尿作用がありますので、よりいっそうトイレが近くなります。また、睡眠中にアルコールが分解されることによって交感神経が優位になり、身体も脳も休息しづらくなります。さらに、首回りや気道周辺の筋肉の弛緩をうながし、いびきの原因をつくります。
もしお酒を飲むのであれば、ビール1本+αをなるべく就寝3時間前までに飲むようにしましょう。また、就寝1時間前からは、お茶やコーヒーなどカフェインをとらないようにしましょう。カフェインに反応しやすい方は、3時間前から控えるのがベターです。
ブルーライトの弊害も忘れるわけにはいきません。ブルーライトは脳の松果体を刺激し、睡眠ホルモンのひとつのメラトニンの分泌を抑えます。これは体内時計を狂わせ、「眠りたくても眠れない状態」をつくってしまいます。それを防ぐため、就寝30分前からテレビの視聴やスマホの使用を制限することをおすすめします。
2020年に実施された中国の研究チームの調査によると、スマホを制限することで、「12分早く眠りに入る/睡眠時間が18分長くなる/主観的な睡眠の質が高くなる/入眠前の眠気が強い/起床時の気分がより良い/作業記憶テストがより正確で早い」といった結果が出ました。
「寝る前スマホ」を止めると、これだけのメリットが期待できるのです。
足がクタクタの日は「筋肉の暴走」に気をつける
ふくらはぎの筋肉が突然つり、激しい痛みを伴うことを一般的に「こむら返り」といいます(医学的には「筋クランプ」)。健康な人でも、激しい運動のあとや長時間の立ち仕事のあとに起こることがあります。夜間のこむら返りは高齢の方に高い頻度で起こり、多くの人が経験しているといわれています。
原因はさまざまですが、ひとつは水分不足です。睡眠中は汗を多くかくので脱水傾向にあります。さらに身体をあまり動かさないので、血行もよくありません。この状態で寝返りを打って筋肉に刺激が加わると、筋肉が暴走してこむら返りが起こることがあるのです。
予防には、寝る前に太ももや足首のストレッチをすることや適度な水分補給をすることが効果的です。
ただし、先ほども述べたように、水分のとりすぎはトイレが近くなる可能性がありますので、飲みすぎないようにしてください。