台湾在住の料理家が、親子2人で移住して気づいた「仕事と子育ての両立」しやすい社会
2024年10月09日 公開 2024年10月15日 更新
台湾料理研究家として活躍する小河知惠子さん。8月に出版した『秘密にしたい台湾のおいしいお土産』(辰巳出版)は、台湾の食に魅せられた小河さんの「台湾に来たらコレ買って帰って!」という思いが形になった一冊です。お子さんと台湾で暮らして5年が経ちます。移住のきっかけや台湾での生活、台湾人の食へのこだわりについてうかがいました。
1歳の息子を連れ、1か月半料理留学
――台湾のどのような部分に惹かれたのですか?
元々、「食」に対する興味が強くて食いしん坊なんです。食べることももちろんなのですが、食べ物を見ることも作ることも好きでした。
台湾って日本から3時間の距離じゃないですか。そんな近い土地に見たことのない食材や味の想像がつかないものがたくさんあるのですから、自然に、何回も訪れるようになりました。
ですが、その都度その都度、何十回と来ても食べ切れない、知り尽くせないことばかりだったんです。そういう底知れない食の魅力に強く惹かれたのにだと思います。
――移住にいたった経緯を教えてください。
台湾の料理や食材の勉強をきちんとしようと決意して、当時1歳になったばかりの長男を連れて1カ月半の短期料理留学を試み、いろいろなレシピや食材のことを教えてもらいました。
赤ちゃん連れの長期滞在ということで、生活の中で戸惑うことも多々ありましたが、そんな時はいつも周りの台湾人が優しく助けてくれたんです。
台湾なら、息子と2人でも暮らしていけると確信しました。食の勉強も奥が深すぎて、1カ月半ではとても足りず、さらに翌年も料理を学びにきました。
その後にまた、1年間の予定で語学留学をしましたが、結局離れがたくなって、現在に至ります。
――台湾での子育てはどのような感じなんですか?
共働きが前提の国なので、ワーママにはとことん配慮されています。
そもそも幼稚園、保育園という区別がなく、夕方は5時、6時くらいまで子ども見ていてくれます。さらに、公立の幼稚園では朝ごはんも提供されます。
一番助かるのが病院ですね。夜8時、9時くらいまで診察しているところが多くて、仕事が終わってから余裕で子どもを病院に連れて行けます。さすがに発熱では休みますが、ちょっとしたことで、仕事を早退したり休んだりしなくてもいいんです。
あと、台湾の人はおおらかで、電車の中で子どもの声が大きくても大目に見てくれるし、高級なレストランやカフェにも気後れせず子どもと入れます。やむを得ず夜遅い時間に子どもと外でごはんを食べていても、周囲の視線が気になる、ということはありません。
デリバリーサービスが充実している
――仕事も子育てもしやすい国なんですね。他に、これは便利と感じていることはありますか?
UberEatsに代表されるデリバリーサービスですね。もともと外食文化があったので、日本よりも普及が早かったと思います。日本と大きく違うのは、料理の出前だけでなく、市場の食材や、雑貨店の食材や日用品まで届けてもらえることです。
例えば、「明日学校で使う縄飛びがない!」というときもUberEats で30分後には届いたりします。手数料も日本よりも安いですし、一部のスーパーなどの商品は店頭と同じ値段で買えます。スーパーに行かずとも夕食の食材が買えるので、ワーママは本当に楽ですよね。私は週3回くらいデリバリーを利用してあとは自炊していますが、平日はすべてデリバリーで、土日のみ自炊する、という人も多いです。
ちなみに、行列しないと食べられない人気のかき氷店のかき氷も、デリバリーしたら、ちゃんと凍ったまま届くので、毎回感激してしまいます。
「小さな子どもを連れての外国暮らしはたいへんでしょう」とよく言われるのですが、台湾だと、日本で暮らすよりも全然楽なのではないかと思ってしまいます。