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なぜ心の問題は「紙に書き出す」ことが推奨されるのか? 手帳を使うと生まれる意外なメリット

本橋へいすけ(pure life diary開発者/ライフコーチ)

2024年10月17日 公開

あらゆるもののデジタル化が進む現代社会。ビジネスにおけるタスク管理ややり取りの効率化など、その利便性は多くの方が実感しているはずです。一方で、自分の内面や人生に向き合う際に適しているのは、手書きをはじめとしたアナログツールかもしれません。

ライフコーチであり、「pure life diary」という自分を整えるための手帳を開発・販売する本橋へいすけさんによると、人生をより豊かにするためにはデジタルとアナログの使い分けがおすすめだといいます。そのワケを詳しくお聞きしました。

 

デジタルとアナログ、それぞれのメリット

デジタルツールは非常に便利ですが、同時に気が散る要因も多く含んでいます。スマートフォンで何か作業をしているときに、SNSの通知やメッセージに気を取られることはよくあるかもしれません。スマホには、世界中の開発者たちが作ったアプリや情報が詰まっているので、それに引き寄せられるのは自然なことです。

デジタルツールのメリットを挙げるなら、効率が上がることです。例えばスケジュール管理においては、Googleカレンダーのようなツールが便利です。変更が容易で、リンクやファイルも一元管理できるため、業務効率も良くなりますよね。

一方で、紙のメリットは「単一デバイス」であることです。紙の手帳は「手帳であること」に特化しており、他の情報に左右されることなく、純粋に自分の考えに集中できる空間が作り出されます。そのため、頭の中にある考えやイメージを整理する作業にとても適しています。

 

手書きには偶然の出会いがある

私たちは、『pure life diary』という自分を整えるための手帳を毎年発売しています。

開発の経緯としては、コーチングなどを通して対人支援をしていると、1対1の支援では対応できる方の人数に限りがあり、もっと多くの人にアプローチしたいと感じたことがきっかけです。

そこで、コーチングや認知科学のメソッドをプロダクト化すれば、何万、何十万、あるいは何百万人もの人々の人生に影響を与えられるのではないかという考えが生まれました。そこから、私たちは手帳という形に落とし込むことを考えました。手帳であれば、習慣化しやすいし、個々の生活に深く根付くツールになるだろうという確信があったのです。

ではなぜ、アプリではなく手帳というアナログな形にしたのかというと、やはり「自分に向き合う」という点で、手書きの方が適していると感じたからです。その理由は大きく3つあります。

まず1つ目は、先ほどもお伝えした手帳は「単一デバイス」であるという点です。今の時代は、常に複数の情報に触れられる環境にあります。しかし手帳は、デジタルデバイスのように他のアプリや通知に邪魔されることなく、自分と向き合うための時間を作り出すことができます。デジタルに囲まれた今だからこそ、再びアナログに戻ることで、自分だけの静かな空間を持つことができるのです。

2つ目は、「偶然の出会い」です。手帳はスケジュール管理のためのものだけでなく、自分の気持ちや価値観、人生について書き留めることにも有効です。手帳は、ふと昔のページを見返すと、その時の自分が感じていたことに出会うことができます。「あの時はこんなことを考えていたんだな」と振り返ったり、今との違いに気づいたりすることができるのです。これが、手帳の中で起こる偶然の出会いです。

デジタル時代においては、検索という行動が中心です。明確な意図を持って情報を探し、必要な情報が表示される仕組みになっています。しかし、そこには偶然の出会いはあまり存在しません。この偶然の出会いや成長の実感は、手書きだからこそ生まれるものだと感じています。

3つ目に「感情の記録も残る」です。デジタルは楽しい時も悲しい時も同じフォントで記録が残ります。一方、手書きはその時の感情が字に表れます。

振り返った時に文字に書いてある内容と共にその時の自分の感情の状態もわかるのが、デジタルツールにはない手書きならではのメリットです。

デジタルの利便性ももちろんありますが、こうした理由から自分の内面と向き合うためには、やはり手書きの手帳が最適なのではないでしょうか。

 

モヤモヤを感じやすい人は、手書きが向いている

紙の手帳を手に取る人々の中には、日常生活の中で漠然としたモヤモヤや生きづらさを感じている方が多いようです。デジタルツールではなく紙の手帳を選ぶ理由は、自己と向き合いたいという欲求にあるのかもしれません。その「モヤモヤ」の原因が具体的にわからなくても、紙に書き出すことで少しずつ整理され、解消されていくことがあります。

特に内向型やHSP(Highly Sensitive Person)と呼ばれる繊細な性格を持つ人々には、紙の手帳が内省を深めるための強力なツールとして機能します。デジタルツールよりも、手書きの方がアウトプットしやすく、深い自己理解に繋がるという点でも、紙の手帳の価値は高いといえます。

 

メンタルが整う手帳の使い方

メンタルを整えるための手帳の使い方には、大きく2つのポイントがあります。

まず1つ目は「振り返り」を習慣にすることです。これは、ポジティブ心理学でよく知られている「スリー・グッド・シングス(3つの良いこと)」のように、その日にあった良かったことを振り返るということです。特に、つい自分を減点方式で責めてしまう人には効果的です。日々の中でできたことや良かったことに焦点を当てることで、自己肯定感を高めることができます。

2つ目は「TO BEリスト」を作ることです。これは、やるべきことを記載する「TO DOリスト」とは異なり、「自分がどうありたいか」「何を大切にしたいか」を書き出すリストです。このリストは一つでも十分です。たとえば、その日自分が何を大切にするかを1日の初めに考え、それを意識して過ごすことで、結果に振り回されることなく、心の平穏を保つことができます。

「TO BEリスト」は、手帳に手書きで記すのが理想ですが、デジタルツールやメモでも構いません。自分にとって大切なことを意識にあげることが目的なので、自分が使いやすい方法で続けることが大切です。

さらに、これらの習慣を取り入れる際に大切なのは、「スモールステップ」で始めることです。つまり、いきなり多くのことをやろうとせず、少しずつ取り組むことがポイントです。たとえば、振り返りも最初は1行書くだけでも十分です。重要なのは、書いたことによって自分がどう感じるかです。日々、小さな成功体験を積み重ねることで、徐々に脳の認知を変えていくことができます。

例えば、弊社の『pure life diary』では、1日あたりの記入時間を3分程度に設計しています。ページの枠を小さくすることで、完璧に書き込むプレッシャーを減らし、短時間で手帳を使えるようにしています。結果的に、集中力が続かなくても、無理なく日々の記録ができるようになります。

もし、これらの取り組みが一人では難しいと感じる場合は、他人の力を借りるのも一つの方法です。たとえば、職場の仲間や家族、友人と一緒に取り組むことで、モチベーションが続きやすくなります。認知行動療法でも言われているように、自己管理は非常に難しいため、周囲のサポートを得ることで環境を整えることが重要です。

(取材・執筆=PHPオンライン編集部 片平奈々子)

著者紹介

本橋へいすけ(もとはし・へいすけ)

pure life diary開発者/ライフコーチ/コンサルタント|

大学卒業後、ギタリスト、外資系保険会社、国内大手保険の総合代理店で営業、教育、100人規模のマネジメント業務など経験。2018年にフリーランスのSNSマーケターとして独立。SNSやビジネス全般のコンサルティングをするなかで、本質的な限界を感じ脳や心のしくみである認知科学を含むコーチングアカデミーに通いコーチになる。その後コーチングメソッドを手帳に落とし込んだpure life diaryを考案、feppiness株式会社創業。まじめながんばり屋さんの悩みを自信へ変えるサポートを行っている。

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