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やるべきことが多くて思考が止まらない...メンタルが疲弊しがちな人を救う“1分の習慣”

佐々木正悟(タスクシュート協会理事)

2024年08月30日 公開

「あれもやらなきゃ、これもやらなきゃ」と、頭の中が整理できずに悩んでいると、心はみるみる消耗していきます。思考のループから抜け出して、心に余裕を取り戻すには? 書籍『「ToDoリスト」は捨てていい。』から紹介します。

※本稿は、佐々木正悟著『「ToDoリスト」は捨てていい。』(大和出版)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

消耗しないコツは、思考を止めること

アメリカ発の有名な仕事術である「ゲッティング・シングス・ダン(GTD)」は、いきなり時間を費やして「気になっているすべてのこと」を紙に書き出すようにいいます。私が推している「タスクシュート」では、「今日中に手がけるすべてのこと」をひとつのシートにリストアップします。

両者はまったく異なる方法です。しかし、共通点もあります。どちらにも、「思考を止めて手を動かす」作用があるのです。先のことを考えると、私たちの心は消耗します。

「あれもこれもまだ終わってないのに、さらにあのプロジェクトと、さっき言われた用事と、ずっと手をつけられていないことなんかで頭がパンクしそう!」となってしまうのです。

気になることを紙に書き出すのであれ、シートにリストアップするのであれ、「それらについていちいち考えなくてもよくなる」という利点は得られます。これは、用事を忘れなくなるというよりも、思考を止めるわけです。ただ、思考がすっかりクセになっている人も少なくありません。

とくに消耗しがちな人ほど、考えごとに浸る習慣があります。中には、「思考を止められるわけがない。私は自動的に思考してしまうのだから」と抵抗する人もいます。でもそれはまちがっています。思考はそれほど特別なトレーニングを積まなくても、だいたいにおいて止めることが可能です。

いまでは、どんなスマホにもタイマー機能がついているでしょう。1分間だけセットしてなにもせず、いっさいの考えごとを停止してみてください。最初から欲張って、瞑想やマインドフルネスに挑戦するのはやめましょう。

「これではとても泳げるようになれそうにない人」でも、練習して水に慣れれば不思議なほどラクに泳げるようになります。考えごともこれに似ていて、考えないほうがずっとラクだと気づくことができれば、そこからは早いものです。

 

考えるのをやめてみたら、ものすごくラクになった

私も以前は、「今日はあれとこれをし、明日はああしてこうして、これを1週間続ければ......」などと考えずには仕事ができませんでした。それがいまでは、明日の予定など頭に浮かべるのもムリで、それどころか午前中には午後の予定すら想像できません。

これは、努力して「考えるのを止める習慣」を試行錯誤した成果です。どうせ「先の計画」を立てても役になど立たないのです。

以前の私は、一年中24時間の記録を残し続けていました。その精密な「過去のデータ」をもとに「先の予想」をしていました。ここまでやれば、少しは役立つ計画を立てられそうに思うでしょう。しかし、結果としては「2日先の計画」ですら支離滅裂なものでした。

初めは少し怖いでしょう。でも、少しでいいから私を信じてトライしてみてください。仮にうまくいかなくても、失うのは1分です。思考を止めるのが怖くても、考えないのは1分だけです。1分経ったらいつもどおり頭が痛くなるまで、「考え」と「悩み」に浸りたいだけ浸りなおせるのです。

特殊なドラッグも、アルコールもカフェインすらいりません。タイマーを使って1分間、なにも考えないだけです。それでも習慣にできれば、消耗せずに仕事を進められる精神が手に入ります。

 

タイマーを1分間セットして、ダッシュしてみる

これを以前は5分でおすすめして、「5分だけダッシュ」と名づけていました。やることはしごくシンプルです。タイマーを5分でセットし、その間だけダッシュしてたとえば部屋を掃除するのです。

これをさらに短くして、「1分間ダッシュ」するというわけです。やることはなんでもかまいません。ただ、これは「ダッシュ」して「1分間で終了」にしましょう。

片づけてみたら思った以上にできそうだからといって、1時間も2時間もやってしまわないようにします。1分でいったん終了、できればそこで切り上げましょう。この方法のメンタルへの効果は、不思議なくらいにあります。

少なくとも先に述べたとおり、思考が停止してくれます。さらに作業が進みます。思考を止めて作業を進めるのが、心の消耗を防ぐ小さなコツなのです。

逆に思考だけが走って行動が止まったままだと、心は激しく消耗します。頭の中で「やらなければいけないこと」や「できたときの達成感」を空想し、その空想が体を駆り立てるのに、現実はひとつも変わらないというのはつらいものです。

 

取りかかってみる「1分着手」

「1分間ダッシュ」とは別に「1分着手」というやり方もあります。これは拙著『先送り0』(技術評論社)で説明したやり方です。こちらもとても簡単で誰でもすぐにできます。

少なくとも1分間、作業や仕事に「取りかかってみる」というだけです。ただしこちらは、「1分間ダッシュ」のように1分で必ず打ち切るのではなく、続けてやれそうだったら作業を続けましょう。そういう意味で「ダッシュ」しなくていいと思います。あくまでも、1分間はダラダラとでもいいので作業すればいいわけです。

これは場合によっては2時間、3時間と続けてしまってもかまいません。まとめると、「1分間ダッシュ」と「1分着手」のちがいは、「1分でやめる」と決めておくかどうかだけです。

これは先に決めておき、それだけは守るようにしてください。「ダッシュ」のほうは「ダッシュすること」にも意味があります。続けてしまったといっても、1時間もダッシュし続けられるものではありません。

 

著者紹介

佐々木正悟(ささき・しょうご)

タスクシュート協会理事/ビジネス書作家

1973年北海道生まれ。タスクシュート協会理事。ビジネス書作家。1997年獨協大学外国語学部を卒業。2004年Avila University心理学部卒業。2022年タスク管理・時間管理術であるタスクシュートの普及と、自分らしい時間的豊かさの提唱を目的として「一般社団法人タスクシュート協会」を設立。タスクシュートのユーザー数は、25000人を超える。ポッドキャスト「働く人に贈る精神分析チャット(グッドモーニングボイス)」を平日にSpotifyから配信中。

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