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避難所ではコンセントが大人気? 子どもに“非常時の電気なし生活”を教えるには

奥村奈津美(防災アナウンサー),マミ(CAMMOC)

2024年11月05日 公開 2024年12月16日 更新

地震、台風、水害。災害関連のニュースが引きも切らない昨今の日本。備えておいたほうがいいことはわかっているけど、つい後回しにしてしまう......。仕事や子育てに追われていればなおさらでしょう。

今回、防災士やキャンプインストラクターの資格をもつママキャンパー3人組「CAMMOC(キャンモック)」の著書『ラクして備えるながら防災 フェーズフリーな暮らし方』の刊行を記念して「防災アナウンサー」こと奥村奈津美さんとの対談が実現。

著書では、"いつも(平常時)"と"もしも(非常時)"のフェーズをなくす「フェーズフリー」の考え方のもと、理想的な暮らしと防災の両立を提案しています。

奥村さんもまた、数年前に防災に関する著書を出版しています。フェーズフリーアワード2024では審査員を務めました。

CAMMOCの一員であるマミさんと奥村さん、防災やフェーズフリーでつながり、ともに一児地震、台風、水害。災害関連のニュースが引きも切らない昨今の日本。備えておいたほうがいいことはわかっているけど、つい後回しにしてしまう......。仕事や子育てに追われていればなおさらでしょう。

今回、防災士やキャンプインストラクターの資格をもつママキャンパー3人組「CAMMOC(キャンモック)」の著書『ラクして備えるながら防災 フェーズフリーな暮らし方』の刊行を記念して「防災アナウンサー」こと奥村奈津美さんとの対談が実現。

著書では、"いつも(平常時)"と"もしも(非常時)"のフェーズをなくす「フェーズフリー」の考え方のもと、理想的な暮らしと防災の両立を提案しています。

奥村さんもまた、数年前に防災に関する著書を出版しています。フェーズフリーアワード2024では審査員を務めました。

CAMMOCの一員であるマミさんと奥村さん、防災やフェーズフリーでつながり、ともに一児の母であるふたりは何を語るのか。第1回は、全国的に猛暑日がつづき、災害もつづいた今夏の振り返りからスタートしました。

 

気候変動と防災

【マミ】今年の夏はほんとうに暑かったですよね。私は子どものころガールスカウトに入っていたのですが、そのときとは気候が違っていると身体で感じます。当時は関東近郊でも夏の山は涼しかったのに、いまは信越のほうまで行かないと「涼しい」と感じられません。でも気候が変わってきているのは、アウトドア好きにかぎらず、みなさん生活のなかでリアルに体感していることですよね。

【奥村】熱中症になる人も増えていますね。高温や蒸し暑さが引き起こす健康被害など「暑熱災害」が発生しています。熱中症もそのひとつです。地球温暖化の影響で、水害もいままでにない頻度と規模になっていますし、これからますます激甚化する恐れもあります。それに備えていかないといけないわけですが、気候変動と防災を結びつけて考えている人は、防災の専門家でもまだ多くないと感じます。

【マミ】わかります。私も、もどかしい想いをしています。

【奥村】ひとりひとりがCO2の排出量を減らし、カーボンニュートラルなど地球温暖化対策に取り組まなくては、根本的な防災にならないと思っています。

 

夏の避難所、暑さ対策がマスト

【マミ】これまで、防災バッグのなかに用意しておくものは、寒さ対策に必要なものが多かった気がしませんか? 冬の災害で、凍死や低体温症が起こりうるということはだいぶ知られるようになってきたと思います。でもこれだけ夏の気温が上がると、暑さにも備えておく必要がありますよね。


▲マミさんの防災バッグ。中身がわかりやすいようビニールの袋で小分けに。悪天候のなか避難しても中身を水濡れから守ることができます。

【奥村】冬も夏も、気候による二次災害をどう防ぐか。今年は台風の被害も大きかったですが、台風では窓を開けられないし、停電することも多いので、どこで避難するにしても熱中症対策は重要です。去年も今年も台風で停電が発生し、窓が開けられず部屋のなかが蒸し風呂のようになったという声がたくさん届きました。停電してからでは遅いので、日ごろから冷凍庫にペットボトルや保冷まくらを凍らせておきたいですね。

【マミ】私は、子どもの「夏は暑い、冬は寒い」という感覚を養うことも、防災につながると思っています。冷暖房のきいた屋内で過ごす日常だと、それも忘れがちですよね。私はキャンプが専門でもありますが、キャンプの経験は役立つなと実感しています。子どもは楽しむことを入口に、いろんなことを覚えていきます。同じところでキャンプをしても、季節によって植物や鳥の声が違うとか、雲や風の様子が変わるとか。

【奥村】雨が降ったあとは、川がまっ茶色になるとか。景色として知っておくことも大切ですね。

【マミ】それを見ながら、「このまま雨が何日も降りつづいたら、川とこのあたりはどうなると思う?」って、大人がヒントをあげつつ、子ども自身が考えるようにするといいですよね。

 

地面に寝るという経験

【奥村】キャンプでは、電気ガス水道のライフラインがない生活を、楽しみながら体験できますよね。子どもにとって1回でも経験があるのとないのとでは、大きな差が出ます。硬い床のうえに寝たことがある、真っ暗闇を知っている......。そうした体験はいざというときに活きると思います。

【マミ】キャンプをする機会にはぜひ、一度はテント内で地面にそのまま寝てみてほしいです。整備されたキャンプ場でも、地面は地面で硬いんです。それでも土の地面であれば、まあまあ寝られます。これが川べりで石がゴツゴツしたところでは、痛くてとてもじゃないけど眠れません。あと、冬の地面は身体に堪える冷たさですが、夏はひんやり気持ちいい。そんなことも、子どもはすぐに吸収しますよ。

【奥村】野外での活動でいうと、農業体験もいいですよね。私は今夏、子どもを連れて〈すももレスキュー〉という取り組みに参加してきました。

【マミ】なんですか、すももレスキューって?

【奥村】果樹って一斉に実がなるのですが、農家さんの高齢化もあって収穫時期を迎えているのに人手が足りず、熟れすぎると出荷できなくなるという事態が起こってしまうんです。そういうところに、お手伝いにいきます。その活動が、すももレスキュー。

 

「楽しい」「おいしい」は忘れない

【マミ】素敵ですね! 名前も可愛い。果物が樹にどんなふうに実をつけているか、子どもだけでなく、大人も案外知らないかも......。

【奥村】自分の手で収穫すれば忘れませんよね。何より、穫れたての果物はおいしい! そうした楽しい体験のなかでも、山に行けばすぐそばに土砂災害の爪痕があったりするんです。これもやはり景色として記憶に残りますよね。

【マミ】スイッチを押せば電気がつくし、蛇口をひねると水が出る。子どもには、そうならないときもあるっていう体験をしてほしいなと思いますね。

【奥村】電気といえば、子どもたちは避難所でも自然とコンセントの周りに集まります。スマホやゲーム機を充電したいんですよね。いままで日常的に遊んでいたものだし、しばらくは静かに集中していられるものなので、彼らにとってはとても大事。3.11のときもそういう光景を見ました。

 

アナログの遊びの魅力を知っておく

【マミ】うちでは、子ども用の防災バッグに折り紙とトランプを入れています。いま小6で、5歳のときから「Switch」で遊んでいてゲームも大好きなのですが、災害時に電気が使えないこともあるので。


▲マミさんの子ども用防災バッグ。

【奥村】電気は比較的早く復旧する傾向にありますが、1週間は通電しないかもしれない、と考えておいたほうがいいですね。

【マミ】そうですよね。電気がないと暮らせず、遊びもそれしか知らなければ、ゲーム機を使えないことが大きなストレスになると思います。我が家は日ごろからアナログな遊びも取り入れています。キャンプのとき、夜は決まってトランプ。子どもとの会話が増えたり、新しい発見があったりして、私も楽しいです。

【奥村】うちの子はいま5歳。絵や工作が好きなので、防災バッグには鉛筆・ノート・折り紙などを入れています。遊んでいるうちに心が落ち着くものがいいですね。

※この対談は、第2回へ続きます。

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