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柳井正「日本は現実を視るべきだ。成長しなければ即死する。」

柳井正(ファーストリテイリング代表取締役会長兼社長)

2012年09月27日 公開 2022年12月01日 更新

Ⅹデーが訪れる日

政治の責任は大きい。

バブルの崩壊以降も、無駄の是正はなされず、非効率な組織がそのまま温存された。国際的に見れば、賞味期限の切れた業界を保護する一方で、ITの覇者となったグーグルやアップルのような産業を興す努力もしない。

国民に日和って、景気対策という名目で公共事業などの応急処置を繰り返す。その財源は国民の預金を担保にした国債である。

2009年の総選挙。自民党から民主党への政権交代では、「これで日本は変わるのではないか」というかすかな期待が集まった。しかし、その期待もすぐに裏切られる。

民主党には定見も、政権担当能力もなかった。子ども手当や高速道路無料化などのばら撒きで、国家財政は加速度的な悪化を続けている。

2011年3月11日に起こった東日本大震災、その後の東京電力福島第一原子力発電所の事故の後始末や、被害者の救済すら、いまだにしっかりなされていない体たらく。

さらに私が絶望するのは、「日本はもう成長をめざさなくていい」という意見を、メディアで評論家や経済学者が堂々と口にするようになったことである。

経済成長をせず、いったいどうやって生きていくのだろうか。

この国には2億3000万の人間を食べさせていける資源などない。だから日本人は必死に働き、知恵を絞って付加価値を生み出し、稼いだお金で生活を成り立たせてきた。いまだにそれなりの暮らしができているのは、過去の蓄積がかろうじて残っているからにすぎない。

その蓄えも、もうすぐ尽きようとしている。

いまや国と地方を合わせた累積債務はGDPのおよそ2倍に膨れ上がり、税収よりも大きな額を、国債を発行して調達しなければ予算も組めない財政状況。約40兆円の税収で90兆円以上を支出する国家会計は、誰がどう考えてもおかしい。

ギリシャ危機は、日本にとって対岸の火事ではない。国債を償還するためにさらに国債を発行し、その財源を賄うために大増税へ突き進む構図はまったく同じである。

ますますボーダレス化する国際金融市場がわが国に見切りをつけ、日本国債が売り浴びせられたら、ギリシャ危機は日本にとって現実のものとなる。国家財政が破綻した例は歴史上いくらでもある。日本だけが特別ということはありえない。

猶予期間は、もう長くない。国民の意識と行動が変わらなければ、Ⅹデーは早ければ3年以内に訪れる。そう私は危惧している。

 

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