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寺島実郎×柳井正  ビジネスチャンスは世界中にある

マネジメント誌「衆知」

2018年01月09日 公開 2024年12月16日 更新

寺島実郎(てらしま・じつろう)
日本総合研究所会長、多摩大学学長
1947年北海道生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了後、三井物産入社。ワシントン事務所長、三井物産常務執行役員、三井物産戦略研究所会長等を歴任。国の審議会等委員も多く務める。著書に『新経済主義宣言』(新潮社、石橋湛山賞受賞)、『世界を知る力』(PHP新書)、『シルバー・デモクラシー』(岩波新書)など多数。

柳井正(やない・ただし)
ファーストリテイリング代表取締役会長兼社長
1949年生まれ。山口県宇部市出身。早稲田大学政治経済学部卒。ジャスコ(現イオン)を経て、’72年父親の経営する小郡商事に入社。「ユニクロ」という店名でカジュアル小売業に進出。1991年社名をファーストリテイリングに変更。2002年代表取締役会長兼最高経営責任者(CEO)に就任。著書に『経営者になるためのノート』(PHP研究所)など多数。

 

日本企業は混迷する世界で生き残れるのか

現在、世界中で巻き起こっている反グローバリズムとポピュリズムの動きは、なぜここまで大きなうねりとなったのか。そして、どの方向へと進んでいくのか。激変する世界経済の最前線でビジネスを展開する柳井氏と、国際社会の潮流を鋭く論じる寺島氏が、現在の世界情勢を独自の視点で分析し、グローバリズムの行方と日本企業が進むべき道について語り合った。

取材・構成:平出 浩
写真撮影:吉田和本

 

グローバリズムの先にあるべき姿を見る

柳井 当社は韓国や中国本土、台湾、マカオ、香港でもビジネスをしていますが、民間同士の関係は極めて良好なんです。当社はロシアに17店舗、店を出していて、ヨーロッパの企業がどんどん撤退していく中、業績はとてもいい。

一般的にもそうでしょう。東南アジアやインドが成長しているし、オセアニア、南アフリカ、中南米にも日本企業は進出できる。

ビジネスチャンスは世界中にあるんですよ。その際に大事なのは、その国の国民のためにビジネスをすること。その企業がその地域(ローカル)の人たちに支えられることが最も大事なんです。

当社では、数年前から“Global is local, Local is global”というスローガンを掲げています。グローバルはローカルだし、ローカルはグローバルである、ということです。グローバルを前提に、この2つが共存するのが望ましい。この2つが共存しない限り、わが社に未来はないと、社員に話しています。

最近、ヨーロッパのいろいろな地方自治体から出店要請がよくあるんです。パリやロンドンの店を見て、「うちの町にも出店してくれないか」と言われる。

最初の産業は世界各国どこも、繊維業や縫製業などの軽工業です。中国が飛躍したのも軽工業からです。それと同じことをわれわれの国でしてくれという依頼がとても多いのです。

寺島 私どもの研究所の分析で、2016年の最新の家計消費統計が出ました。これを2000年と比較すると、衣料品に対する消費はこの16年間に32パーセントも落ちているんです。ところが、その中でユニクロは10倍ぐらい伸びている。

その理由の一つは、IoT(モノのインターネット)といわれる時代に、ユニクロは実は情報企業でもあって、情報技術革命の成果をこれほど集約している企業はないからです。そして、それにグローバル化がかけ合わせられている。つまり、「IoT×グローバル化=ユニクロの経営」なのだと私は見ています。

柳井 当社はバブル経済崩壊後の1994年に上場しました。その当時、私は日本は大航海時代を終えたポルトガルみたいになるんじゃないかと危惧していました。人口も減少している小さな国では、国内で事業ができなくなるから、海外に出ないといけない。

それで、執行役員を全員連れて、東レさんに行って、当社と一緒に海外に出てくれないかと話した。というのも、当時の東レ会長の前田(勝之助)さんが、ある経済誌に「繊維産業は成長産業だ」と書いていたからです。

私も同じ意見でした。世界的に見たら、中産階級が増える。中産階級は自動車や家を買う前に服を買うんです。それで、会いに行って、前田会長にお願いしたけれど、先方の他の役員は全員、反対。表情でわかった(笑)。でも前田会長が「これは重要だから、チームをつくって、会長直轄でやれ」と指示してくれました。前田会長は肝が据わっていて、先見の明がありましたね。

寺島 東レにとっても、ユニクロとの連携で、グローバル化の1つの突破口が見えたということでしょうね。

柳井 グローバルに打って出ることは、やはり大事ですね。でも、先ほども述べたように、グローバル化するということは、その国や地域――ローカルでいかに貢献するかという精神と実践が必要なんだと思います。

※本記事は、マネジメント誌「衆知」※2017年9-10月号掲載記事の一部を抜粋編集したものです。

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