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「人脈がすべて」ではない…愛される営業マンが“実践してること”

千田琢哉(時代創造館代表)

2012年10月01日 公開 2021年02月09日 更新

営業マンが成功するには「人脈がすべて」だと思い込んでいないだろうか。この考えに固執するあまり、既存のお客様をぞんざいに扱い、ひたすら新規開拓に精を出す。その結果、知り合いだけは多くなり営業成績は残せなくなるという。

時代創造館代表の千田琢哉氏は、自分がいかに得するかではなく“相手がいかに得するか”を考えることが、愛される営業マンに必要な構えであると指摘する。

※本稿は、千田琢哉 著『その人脈づくりをやめなさい』(PHPビジネス新書)より、一部内容を抜粋・編集したものです。 

 

営業マンは人脈が命、は本当か 

営業で実績を残した人たちが共通して述べるセリフに、こんなものがある。

「人脈がすべてです」
「ここまでやってこられたのも、支えてくださったみなさんのおかげです」

たいていは拍手喝采で感動のエンディングとなる。人脈がすべてであり周囲に支えられたというのも、たぶんその通りなのだと思う。本人たちは自分が嘘をついている気など毛頭ないし、本心からのありのままの気持ちを語っているに違いない。 

これを鵜呑みにした新米営業マンや業績不振の営業マンたちは、早速人脈を増やそうと行動に移す。

異業種交流会に申し込む人もいるかもしれない。手当たり次第、周囲に紹介を依頼し続けるかもしれない。毎日何人に会うといったノルマを自分に課すかもしれない。

その結果はどうだろう。一時的にはわずかな変化があるかもしれないが、まもなく以前と何ら変わらない人生が繰り返されるだけだろう。否、むしろ無理した反動で業績が落ち込むかもしれない。

ずっと継続できる人ならいいかもしれないが、継続できない人にとっては毎日が地獄のような人生になってしまう。 

長期的に実績を残し続けた営業マンたちの多くは、ごく少数の人たちをとことん大切にすることによって人脈が広がっていったのだ。

つまり最初から数を増やすことを考えていたわけではなく、まず既存のお客様を大切にしていった。今まさにお付き合いしていただいているお客様からの信頼が厚かったのだ。 

人脈がすべてだと早合点している営業マンは、既存のお客様をぞんざいに扱い、ひたすら新規開拓に精を出す。その結果、確かに知り合いだけはやたら多いが営業成績は残せなくなる。

信頼を獲得するより人脈を増やすのが目的であると、自分が望んだ通りの結果になるわけだ。

表面上の人脈だけはやたら多くなってしまうために、飲み会に誘われる機会が増えて年賀状の枚数も半端ではない。営業成績はパッとしないのに、時間ばかりが奪われていくことになる。実際にそんな地獄の人生にも耐え続け、ついには健康を害してしまう人たちも少なくない。 

どうせなら時間にゆとりを確保しながらも、大好きな人たちとだけ会っていくことが理想ではないだろうか。やたら人と会ってばかりいては、時間がいくらあっても足りなくなってしまう。

しかも好きでもない人や苦手な人に無理に会っていても、楽しくも何ともない。忙しくて不幸な顔をしている人というのは、たいていは嫌いな人に振り回されて忙殺されている。 

そんな人生とは今すぐ別れを告げよう。 

大好きな人以外とは会わないようにすればいい。それだけであなたの時間は倍増するだろう。倍増した時間で大好きな人にとことんサービスをする。その結果、大好きな人から繰り返しサービスを購入してもらえる。

おまけに頼んでもいないのに知人を紹介してもらえる。あなたが大好きな人の知人は、やっぱり大好きな人と似ていることが多い。つまり紹介してもらった知人も大好きになる可能性が高いというわけだ。本当の人脈はこうして増やしていくのだ。 

人脈を増やしたかったら、時間をかけることだ。一気に人脈を増やそうとすればするほどその関係は長続きしない。長続きしない人脈は時間の無駄だ。まず目の前の人に感謝して大切にするところからスタートだ。人脈は広げるものではなく、広がっていくものだ。

 

一方的に、好きな人の役に立とう 

商談において人脈を広げていく方法は1つしかない。自分がいかに得するかを考えるのではなく、相手がいかに得するかを考えることである。冗談ではなくこれを死守するだけで商談も上手くいくし人脈も広がっていく。 

多くの人たちはいかに自分が得するかだけを考える。だから商談も上手くいかないし人脈も途切れていく。シンプルだがそれだけのことなのだ。 

勘違いしてはいけないのは、何でも安請け合いしろということではない。逆だ。ビジネスとして適正価格は死守するが、その分サービスは最高品質を約束するのだ。

だから不本意な値切り交渉や理不尽な要求には一切応じない。お互いに敬意をベースにした関係を構築していくことにこだわっているから、尊敬できない相手とは即緑を切る。換言すれば、その覚悟があれば相手にも一目置かれるということだ。 

相手が得するという意味は値切って得してもらうのではなく、純粋にサービスを受けることによって幸せになることを意味する。相手の幸せだけをとことん考え抜いた提案だから、いくら自社の利益が低いものであっても相手が幸せになるのであれば躊躇することなくおススメする。

反対にいくら割高に見えても、そのサービスを受けた相手が確実に幸せになると確信した場合は、妥協せずおススメする。サービスを受けた相手は、今の時代、そのサービスが適正価格かそうでないかなど理解するのにそれほど時間を要しない。

「もっと儲けることができたのに、あえてこちらを勧めてくれたのだな」
「高いと思ったけど、長い目で見たらやっぱりこれにしておいて正解だった」

そう納得してもらえる。これが全幅の信頼となり、より強固な絆となって人望が構築されていく。その結果、繰り返し購入してくれるリピーターと紹介が自然発生するというわけだ。 

実はこれは商談に限らない。人間関係すべてに当てはまる。 

人と話をする際に「この人と付き合っていきたい」と感じたら、自分は何で役立てるだろうかと考える癖をつけるのだ。付き合っていきたい相手とは、何かしてくれそうだから付き合っていくのではない。

まず先に「よくわからないけど、何となく好きだ」というのがくる。自分が好きだから付き合っていくためには、何かで相手の役に立とうと考えるのだ。

自分が儲かるから、得するから見返りを期待して役立つのではない。見返りの期待は必ず相手にばれる。見返りを期待した瞬間、いやらしさが漂ってしまう。だから自分がひたすらもっと相手のことが好きになるために役立つのだ。 

この調子で「よくわからないけど、何となく好きだ」という人の役に立ち続けていくと、仮にお返ししてもらえなくても人生は楽しくなる。好きな人に役立てるだけで、幸せだからだ。

もちろん現実には、お返ししてもらえないことはあり得ない。本人から直接お返ししてもらえることもあれば、知らない人から間接的にお返ししてもらえることもある。直接的なお返しはもちろんうれしいが、間接的なサプライズのお返しもうれしい。 

勘違いしてはならないのが、嫌いな人に対してがまんして役立つ必要はない。好きな人に見返りを期待せずに一方的に役立つのだ。忘れた頃に、お返しが留まることなくあなたに向かって返ってくることをお約束する。

金融商品と同じで、元本という種まきは必要だ。ただしその利息は、金融商品の比ではないとだけお伝えしておこう。

 

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