“本物の営業マン”は、売れるものを「作る」ことを考える
2011年08月09日 公開 2024年12月16日 更新
一般的に営業の仕事とはたんに物やサービスを売ることであり、より多くの商品を売った営業マンこそ優秀であると思われている。しかし佐々木常夫氏は、それは大きな間違いだと指摘する。本稿では営業の仕事の本質とは何か、そして「一流の営業マン」について解説する。
※本稿は、佐々木常夫著『「本物の営業マン」の話をしよう』(PHPビジネス新書)より一部抜粋・編集したものです。
営業の本質は「顧客は何を求めているのか」
営業の仕事というと、自社製品をお客様に売ることと大半の人は思っています。営業マンの多くも「営業の仕事は会社の利益を極大化すること」と上司や先輩から教えられるようです。そしてそれを営業の役割と信じています。
その目的のためには極端な言い方をすれば顧客を不利にしてもいい。顧客を犠牲にしても我が社が儲かることが第一。社長ですらそう思っている人はたくさんいます。
そこから「営業マンは口がうまくなければいけない」「トラブルが起きたとき、お金を使わず口先で相手を丸め込むのがよい営業マン」「同じものを他社より高く売ってこそ営業マン」などといった考え方も生まれてきます。自身が営業マンかどうかを問わず、おそらく大半の人が営業について、こうした考え方を抱いています。
しかし、営業の本質はそんなところにはありません。どんなに優れた営業マンでも、世の中に需要のない商品を売ることはできません。逆にどんなに駄目な営業マンでも、需要のある商品を担当すればいくらでも売ることができます。
例えば、カメラのフィルムです。フィルムが必要なカメラを使っている人など、今ではごくわずかです。そんな中でカメラのフィルムを売ろうとしても絶対に無理です。
会社の先輩が「俺がお前ぐらいのときは何十億円も売っていた。売れないのはお前の根性が足りないからだ」といくら発破をかけたところで、無理なものは無理です。
逆に今、自分の担当している商品が売れているからといって、それがすべて自分の力かというとそうではありません。先輩たちが苦労をして需要を作ったり販売ルートを築いたりして、それが世の中に認められ、たまたま自分の時代に売れるようになっただけとも考えられます。
時流に乗った売れる商品でありさえすれば、どんな人でもいくらでも売ることができます。そう考えると、営業マンの本当の仕事は「顧客は何を求めているのか」「顧客は何を提供したら喜ぶのか」という、その「何」を探し、見つけることといえます。
そして見つけたものを会社に作らせることです。もちろん、そのためには大変な時間がかかります。しかし、これこそ営業マンにとって最も肝心な仕事なのです。
「ライトパーソン」を見抜く
一般に営業マンはどれだけ商品を売ったかで評価されます。売上の多い営業マンほど優秀であると評価されますが、どれだけ売ったかは、実は会社にとってさほど大きな問題ではないのです。
商品が売れたのは営業マンの努力以上に、その商品を作った人のおかげです。あるいは、その商品が売れると見越し、作るように働きかけた人のおかげです。
売れるのが当然の商品は誰でも売れます。そういう商品が売れている間に次に売れる商品を見つけ、開発し、販売ルートを築いたり、世の中に知らしめていく。それこそが真に営業マンに求められる仕事なのです。
では、売れる商品はどうすれば見つけられるかというと、1つはエンドユーザーが何を考えているかキャッチすることです。そして同時に、営業を行うにあたって取引先のライトパーソンを見つけ、そこに向かって売り込むことです。
その商品をほしがるかどうかは人によって違います。例えば、ある商品を購買部に売り込んでもけんもほろろだったのに、直接社長に持ち込んだら興味を持って買ってくれたということは少なくありません。
誰がこの商品に興味を持ってくれるか、この商品を買うにあたって決定権を持つのはその会社の誰なのか、そうしたライトパーソンを見抜くカを持つことが大事です。
多くの人はそのあたりを考えず、慣例どおりの部署にやみくもに売り込もうとします。そして無駄なエネルギーを費やしたり、無駄な残業をしたりすることになるのです。
うまくいかないときは「今のやり方はひょっとしたら間違っているのではないか」と少し立ち止まって考えてみることです。今までのやり方が正しいとは限らない。先輩から教えられたやり方を守るべきとも限らない。正しいやり方を決めるのはあくまで自分自身なのです。