森光子さんからのメッセージ「100年後の皆様へ」
2012年11月15日 公開 2024年12月16日 更新
(画像はイメージです)
長く切ない下積み時代にもあきらめず、日本を代表する女優となるまで上り詰めた森光子さん。
著書『あきらめなかった いつだって』より、次世代を担う若者たちへのメッセージ「100年後の皆様へ」を紹介します。
※本稿は、森光子 著『あきらめなかった いつだって』(PHP研究所)より、内容を一部抜粋・編集したものです。
あきらめなかった波乱の人生
本書は、各界一流のプロの半生をインタビューで解き明かすドキュメンタリー番組「100年インタビュー」(NHKBSで放送中)からの単行本化シリーズ第3弾。舞台「放浪記」上演2000回を達成した日本を代表する女優・森光子さんが、下積み時代から今日にいたるまでを語っています。
森さんは、舞台、ドラマ、司会などで長年活躍を続け、2005年には、文化勲章を受章。2009年5月には「放浪記」の連続主演2000回達成で話題を集め、09年7月には、女優として初めて国民栄誉賞を受賞されました。
しかし、41歳で舞台「放浪記」の主役の座をつかむまでには、長く切ない下積み時代があったのです。「いつか主役に」と胸に秘めながら、喜劇の舞台で脇役を演じ、戦争中は歌手として戦地への慰問団に参加。戦争が終わって、食べていくために米軍キャンプで歌い、その後、結核を患い、わびしい療養の日々。死んだといわれながら、復活……。
本書のなかで森さんは、どんなにつらくとも、あきらめずにきたことが、いまにつながっていると振り返えっておられます。
どんなときも前向きだった女優魂を伝える 森光子著 『あきらめなかった いつだって』。最後の項目 「100年後の皆様へ」 には、次代を担う若い人たちへのこんなメッセージが託されています。
100年後の皆様へ
いろいろお話しさせていただきましたが、ここまでおつき合いいただきまして、ほんとうにありがとうございました。
ふり返ってみれば自分でも驚くような人生で、よくやってこられたものと、ただただ、自分にびっくりしております。
それもこれも、人生の途上で出会わせていただいた温かい人々や、私を助け支えてくださった多くの皆様方のおかげだと感謝申し上げております。
思いますに、私がここまでお芝居を続けてこられましたのは、私が物ごとをかんたんにあきらめなかったからかもしれません。
物ごとには、あきらめていいときと、まだあきらめてはいけないときがございます。私はどんなに苦しくてもなかなかあきらめない性質でした。もしかしましたら、それがいい結果につながったのでございましょうか。
人生、あきらめたらそこで終わってしまいます。
ですから、私は大事なときはいつも次の言葉を頭の中から引っ張り出して自問自答いたします。
「もうあきらめてもいいか、まだ投げてはいけないか」と。
若い人は、若さという素晴しいものをお持ちですから、それを忘れず、自分と向き合って今の時間を精一杯生きてください。そうすれば、きっと輝くことができます。
誰でも、長い積み重ねの中から未来への道が開けてきます。かんたんにあきらめず、投げず、焦らず、そして人への感謝を忘れなければ、きっとバラ色の未来が開けるはずでございます。
100年後の人たちにこの本を読んでいただくことができて、森光子という、元気でちょっとお転婆な女優がいたことを知っていただけましたら、とてもうれしいことでございます。
皆さん、平和で変わらない温かな世の中をつくっていってください。
信じておりますから、あなたたちを。
素敵なことがたくさん待っていますよ。
変わりません。