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医師が教える「睡眠負債」をためない8つの習慣

保坂隆(精神科医)

2025年07月17日 公開

眠るのに時間がかかる、深夜や早朝に起きてしまう、熟睡ができない...。60歳以上の3人に1人が「不眠に悩む」といわれ、睡眠のストレスを抱えるシニアが増えています。本稿では、書籍『精神科医が教える 毎日がスッキリする「老後の快眠術」』より、睡眠負債をためない工夫についてご紹介します。

※本稿は、保坂隆著『精神科医が教える 毎日がスッキリする「老後の快眠術」』(PHP文庫)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

週末に「寝だめテスト」2日間で簡単に判定

「あなたには睡眠負債があると思いますか?」と聞かれたら、どう答えるでしょうか。

「毎日6時間以上は眠っているし、疲れも溜まっていないから、睡眠負債は多分ないでしょうね」という人もいれば、「朝起きるのがいつもつらいし、昼間もなんとなくだるいので、きっと睡眠負債はたまっているはず」と答える人もいるでしょう。

しかし、どちらにしてもそれは曖昧な自己判断。自分の睡眠負債を見極めるには、何か目安がなくてはなりません。

それを判断するために最も有効な方法が「寝だめテスト」です。

自分では気づいていなくても、慢性的な寝不足を抱えていた場合、チャンスを与えれば、体は必ず寝だめをしようとするはずです。だから「意識的に寝だめをしやすい環境を整えて、あとは体に聞くだけ」というのがこの判定法です。

やり方はとても簡単で、難しくはありません。休みの日の朝、時間に関係なく気のすむまで眠るだけです。

ただし、テストの前の夜は、外から光が入らないように寝室の遮光をしっかりして、目覚まし時計、携帯電話など時間がわかるものや音を出すものを遠ざけ、できれば寝室も自分一人で使いましょう。なかには、人の気配があるだけで目覚めてしまう人もいるので、テスト期間だけは家族に協力してもらうことも必要です。

こうして次の日の朝、自然に目が覚めるまでぐっすり眠るのですが、もし眠気がまだ残っているようなら、二度寝をして完全に眠気をなくします。

このように、睡眠に適した環境では、体は自然に普段の"負債"を返済しようとするので、いつもより睡眠時間は長くなります。

これが、睡眠負債があるかどうかを見分ける目安なのです。もし、いつもより2時間以上長く眠るようなら、睡眠負債があると思ったほうがよいでしょう。

ただし、たまたまテストの前日に重労働をしたりストレスが多かったりして、睡眠をたくさん必要としていたような場合もありえますから、できればテストは2日間続けるのがベストです。

その場合、2日目はいつもどおりの睡眠時間で満足がいけば、睡眠負債があるとはいえません。では、もし2日間とも2時間以上の寝だめが生じたとして、どうやって睡眠負債を解消したらいいのでしょうか。

負債なのですから、借りたものはきっちり返すのがルールです。返済法は単純で、意識してこれまでより長く眠ることに尽きます。

ただし、「それじゃあ日曜日にどっさりお返しを」と、寝だめ返済を目論むのはちょっと感心しませんね。

なぜなら一時にまとめて眠ると、かえって日常の生活リズムが崩れ、ほかの日の睡眠に影響が出てしまうからです。その結果、返済どころか借りを増やすことにもなりかねないので、あくまで生活ペースは乱さないようにしてください。欲張らず、地道にコツコツ返済していくのがポイントです。

基本的には、早めにベッドに入るなど毎日の睡眠時間を意識してちょっと多くし、休日前もそのペースを変えずに同じ睡眠時間を守ること。これを習慣にすれば、返済はスムーズに進みます。

ただし、その人の必要とする一日の睡眠時間は、年齢や職業、労働内容や健康状態によって変わってきます。20~50代くらいの年齢で、軽~中程度の労働をしている人なら、一日に7~8時間程度の睡眠が必要でしょう。

しかし、年をとると必要な睡眠時間は減る傾向なので、ある程度の年齢になれば、一日に何時間という目安にそれほどこだわる必要もなくなってきます。

「睡眠負債を抱えないように......」と神経質になっては逆効果ですから、なるべく自然体で無理のない睡眠スタイルを見つけるようにします。

そして、眠っていないときの生活を工夫することも大切です。日差しの強すぎない午前中に太陽光を十分に浴びたり、適度に体を動かすのもよい睡眠に役立ちます。

最近では、スマホの使いすぎが目や神経を疲れさせ、不眠の原因になっているケースもありますから、とくに夜が更けてからの使用はできるだけ控えるようにしたいもの。

とかく「寝不足くらい」と軽視したり無理しがちな私たちですが、睡眠負債が重なると予期せぬトラブルを招くこともあります。十分に気をつけましょう。

 

今日から簡単にできる「睡眠負債」をためないひと工夫

ここでは睡眠負債に絞ってその改善策を紹介します。ただ、前述した「午前中に太陽光を十分浴びる」と「寝る少し前からスマホを手にしない」という二点だけは必ず守ってください。そのうえで次のような工夫をプラスすれば、睡眠負債は大幅に減らせるはずです。

毎日の生活でほんの少し気をつけるだけでも効果はありますから、ぜひ続けてみてください。

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●ウォーキングなど軽い運動はおすすめですが、体を動かすのは夕方までにしたほうがいいでしょう。

●コーヒーや濃いお茶も、寝る3時間ほど前から口にしないほうが無難です。

●基本的にお酒はあまりおすすめしません。もし飲むとしても寝る前の3時間は避けてください。

●寝る2時間前くらいには明かりを落とし、落ち着いた部屋の雰囲気をつくってください。テレビやビデオの画像を見る場合でも、あまり照明の強いものなどは避けたほうがいいでしょう。

●お風呂はややぬるめのお湯につかって、寝る30分前には出ているように。眠る直前のお風呂は控えて、体の熱を冷ましてから布団に入りましょう。

●部屋の温度は暑すぎず寒すぎず、適温にしてください。

●寝室の照明は消して真っ暗にするのがベストですが、暗いのが苦手な人は、できる限り弱い照明にして眠るようにします。

●快眠の一番の妨げになるのは、無理に寝ようとすることです。焦るほど眠りは遠のいてしまいます。自分なりのリラックス法を見つけて、くつろぎましょう。

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