頑張って文章を書いてみても、どこかで読んだような、ありきたりなものになってしまう――。その原因は"残念なフレーズ"を使ってしまっていることにあるかもしれません。せっかく書いた文章を安っぽく見せないための秘訣を、書籍『「人生で大切なことに気づく」ための文章術 自分のことを書いてみる』より紹介します。
※本稿は、岸本葉子著『「人生で大切なことに気づく」ための文章術 自分のことを書いてみる』(アスコム)より、内容を一部抜粋・編集したものです。
マグロもイチジクも“まったり”?
文章の書き方を指南する本の中で、「五感に訴えるように書きましょう」という内容を目にすることがあります。しかし、文章を書き慣れていないと、「味覚」「嗅覚」「聴覚」「触覚」に訴えるように書くのは非常に難しい作業。
「においがするように」「聞こえるように」「触っているように」という文章を書くのは、かなりハイレベルな技量を必要とします。
「味覚」も同様で、実は私自身にも苦労した経験があります。
それは、かなり昔に、レストラン探訪記を連載していたときのこと。いろいろなものを食べたときに、よくありがちな「柔らかい」「甘い」などの言葉(しかも形容詞!)がすぐに思い浮かんでいたのです。
さらに当時は、食べたものを表現するのに、「まったりとした」という言葉を使うことが流行っていました。ですから、この言葉もよく反射的に浮かんでいました。「マグロでもイチジクでも、なんでもかんでも『まったり』でいいのか」と......。
ひるがえって
①「形容詞」の代わりに、「名詞+動詞」を使う
②「別の人の視点を入れる」
この方法なら、実践しやすく、ありがちな言葉を避ける手段にもなります。下に、使いがちな「形容詞」を挙げましたので①②の練習にお使いください。
急に安っぽく見える...「残念なフレーズ集」
「ワンパターンの表現」になってしまう例として、「形容詞」を安易に使ってしまうケースをご説明しました。
しかし、それだけではありません。
意外と使ってしまうのが、"お約束のフレーズ"です。
「すべてに感謝(ありがとう)」「心がほっこり」「癒されました」「自分で自分をほめてあげたい」──。あなたにも、思い当たるふしはありませんか?
ついつい書きたくなる気持ちはわかります。理由は、このようなことでしょう。
● 漠然とした感情をとりあえずまとめられるから便利
● なんとなく整った文章になった気がするから
● 深い意味はないけれど、よく耳にする言葉だから
「借り物の言葉」を使ってありきたりの作品にしてしまうほど、もったいないことはありません。あなたらしい文章にするには、こうした言い回しを避けるようにしたいものです。
前述のような"定番の残念フレーズ"のほかにも、こんなものに注意が必要です。
● オリンピックなどの大きい出来事で頻繁に使われた言葉
● 新語・流行語大賞にノミネートされた言葉
● ヒットした歌謡曲の歌詞の中にあるフレーズ
例えば、一時期は毎日のように目にした「チーム○○」「絆」というフレーズや言葉。もし、これらをどうしても使いたい場合は、エピソードに安直にはめ込むのではなく、そのフレーズを自分なりに捉えた手続きが感じられるように書きたいところです。
「『チーム○○』という言葉は照れくさくて、この言葉を使うにはためらいがある。しかし今回は「使ってもいいのではないか」と思えるほどの野球大会だった」
この程度まで書けば、読み手は「便利だから安直に使っているんじゃないな。お決まりだとわかったうえで、でもやっぱり使いたいと思って使っているんだな」とわかります。ちなみに、一般によく知られた「ことわざ」「慣用句」「言い回し」も注意が必要です。