映画『鬼滅の刃 無限列車編』は、興行収入400億円突破という邦画史上最高の大ヒットを記録しました。TVアニメも人気を博し、原作のコミックもものすごい注目を集めました。
そんな国民的アニメでありコミックですから、「鬼滅にハマりました」と言えば、多くの人が「わたしも!」と共感の声を上げてくれるのではないでしょうか。
雑談では、この共感がものすごく大事な働きをします。『鬼滅の刃』はパワーコンテンツですから話が早いんですが、これに限らずいろんな話題で相手との共感を生むことが、相手との距離を縮める鍵のひとつになります。
本稿では、雑談を盛り上げ、止まらなくなるキラーフレーズをいくつか紹介します。
※本稿は、川畑亜紀著『お人好しが損しない話し方の教科書』(日東書院本社)より、内容を一部抜粋・編集したものです。
知らない話題には「教えて」が効く!
相手と共通の話題がどうしても見つからない、と途方に暮れてしまうときがありますね。そんなときに有効なのが、「教えて」というフレーズです。
たとえばゴルフだったら、「わたし、ゴルフってやったことなくて、運動オンチで下手だと思うんですけど、はじめるならなにから手をつけたらいいですか?」と訊けばいいんです。みんな、自分の好きななにかを人に教えるのが大好きです。
そして、「よくご存じですね」と言われるのが、ものすごく嬉しいんです。だから、これまで興味を抱いてこなかったものを拒絶するのではなく、「いいきっかけだから教えてもらおう」と思うことができたら、しめたものです。そこで実際に自分の世界も広がるでしょうし、相手との距離も近づきます。
いろいろ教えてもらったら、そこで返す言葉にもキラーフレーズがあります。それが、「これまで興味がなかったけど、教えてもらって見方が変わりました」「イメージが変わりました」「わたしでもやれそうって思いました」などです。
話を聞いたことでこちらの考えが変わったと伝えると、相手はものすごく嬉しいはず。今後はあなたを見つけるたびに、その話をしてくれるようになるでしょう。
「知りたがり、教えてもらいたがり」は愛され上手の会話上手。周りに人が集まってきて、いろいろと得をします。
人との距離感を縮める「なぜ?(WHY)」「どうやって?(HOW)」
ラジオのDJがよく使うテクニックがこの「なぜ?」「どうやって?」です。ラジオの番組にゲストが来られてトークを繰り広げるとき、「なんでそれをはじめようと思ったの?」や「なにがきっかけだったんですか?」など、相手を深掘りする質問をします。
こういう質問は、ひと言では答えられません。誰もが、いろんな偶然や選択が重なったことで、ひとつの物事に取り組むようになります。ゲストにとっては大切なストーリーですから、語り口も滑らかになります。その結果、ゲストの人物像がより深みを増してラジオのリスナーに届くのです。
「どうやって?」という質問も、同じようにトークが盛り上がります。ひとつの目的を達成するためにはいろんな行程を経る必要があります。そこには、なかなか気づかないコツや注意点もあったりします。そのあたりをつい語りたくなってしまうのは、前述した「教えてください」と頼られた人の心理と同じもの。
つまり、「なぜ」と「どうやって」の質問には、たったひと言で相手の言葉を無限に引き出す魔法に似た力が秘められているのです。
雑談を止めない「魔法の聞き方」
雑談中に話題が広がらない、深くならない、先に行かないというケースは、誰もが経験してきたことでしょう。とくに相手もお人好し系コミュ障さんの場合、どう話題を広げていったらいいかわからず困っているかもしれませんし、こちらもうまく誘導できなくて、もどかしい思いをします。
これが会話の上手なコミュ強なら、相手の話を先へ先へとスピード感をもって進めてくれます。テレビ番組の司会者さんは、この展開がうまいです。
「○○○さん、こないだこんなコトがあったんですわ」
「え、そんなことがあったん? そうなん? そらびっくりするわなあ。それで、そのあとどうなったん?」
こんなやり取り、TVで聞いたことがありませんか?
まずは相手の話を聞いてびっくり。「それは知らなかった!」などとオーバーリアクションで相手の話を大袈裟に受けとめてあげる。その次に「それで?」「大丈夫だったの?」「そのあとどうなったの?」と、相手の話の先を聞きたがってあげる。
これが、話を展開する話術の基本形です。
相手の頭のなかには自分の経験が結末まで用意されていますから、つづきを話すよう促すのです。これを普段の会話のなかで実践すると、次のような形になります。
「こないだ、スノボに行ったら骨折しちゃって」
「え!? しかも右手!? 大変だったねえ! そのあとどうなったの? すぐ病院? 雪山だと病院まで遠かったんじゃない?」
予想されるその先を促してあげる。これが、話を展開する聞き方です。
これは使える!「次」を促す4つの定番フレーズ
話を展開させるように意識しても、話題によって最適な言葉は違ってきます。そこで、どんな場面でも使いやすい定番フレーズを用意してみました。
「きっかけはなんだったの?」(きっかけ)
「そうなんだ! それで!?」(リアクション+展開)
「そのあと、どうなったの?」(展開)
「それから? 最後は?」(展開)
ここに挙げた4つのフレーズを使い回せば、話を先に進めることができて、相手は気持ちよく自分の体験談を話してくれるはずです。
バラエティ番組の司会者さんもこのテクニックを用いることが多いので、意外と簡単に感じるかもしれません。しかし、簡単そうに見えて、実践するのは意外と難しいのです。それを自然体でこなしているのが、プロのプロたるゆえん。
ですからみなさんは、その姿をイメージトレーニングのつもりでじっくりと観察して、丸パクリするつもりで覚えてしまいましょう。
【川畑亜紀(かわばた・あき)】
神戸大学文学部卒業。静岡エフエム放送で局アナウンサーとしてキャリアをスタートし、のちにフリーアナウンサーへ転身。NHK大阪や毎日放送など、関西の放送局で多数のレギュラー番組を担当。2023年よりSNSでの発信を開始し、「話し方」ジャンルにおいて人気を博す。わずか2年でSNS 総フォロワー数5万5千人を突破。「話し方を義務教育に」をミッションに掲げ、一般社団法人戦略的コミュニケーション力育成協会(ASK)を設立。企業・教育機関・行政機関を対象に、「伝える力」に特化した人材育成を行っている。また、コミュニケーションに悩む個人向けの勉強会や、学生と社会人によるピッチ大会の企画・運営も精力的に実施。座右の銘は「話し方は筋トレ。誰でも鍛えればうまくなる」。