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二人から同時に求婚?! なぜか好かれる人が行っている「自尊心をくすぐる会話術」

中野信子(脳科学者)

2024年10月03日 公開

仕事でもプライベートでも、良好な人間関係を築くことは成功の鍵。でも、なかなかうまくいかない人も多いのではないでしょうか? しかし、相手とのコミュニケーションの取り方を少し変えるだけで、人間関係は大きく改善されるかもしれません。脳科学者の中野信子さんによる書籍『世界の「頭のいい人」がやっていることを1冊にまとめてみた』より紹介します。

※本稿は、中野信子著『世界の「頭のいい人」がやっていることを1冊にまとめてみた』(アスコム)の一部を再編集したものです。

 

自尊心をくすぐることで相手は自分に好意を寄せる

フランス系ユダヤ人のAさんという女性がいます。大学院で音楽理論を学び、作曲家として活躍しています。頭の回転がとても速い人で、人を飽きさせるということがありません。絶世の美女というタイプではありませんが、小柄で愛嬌があります。いつも楽しいことを探しているようなキラキラした瞳と、かわいらしい容姿とは対照的な低めのセクシーな声が彼女の魅力です。

音楽分野で活躍していくには、自分一人がいい作品を書くだけでは不十分。演奏家、プロデューサー、音響など、様々な人の協力を仰ぐ必要があるということは、私が指摘するまでもないことです。

そこでAさんは、自分が作曲家として技術を磨くだけでなく、周りにいる人の心をつかみ、虜にするための努力をひそかに続けています。

周りにいる人の心をつかんで味方にしていくというワザは、音楽分野に限らず、どんな仕事をする上でも役に立つスキルでしょう。ただ、役に立つことはわかっていても、そのためにはどうしたらいいのか、すぐには思いつかないものかもしれません。

Aさんが実行していたのは、相手の「自尊心」をうまくくすぐることでした。つまり彼女は、とても褒め上手だったのです。

 

相手の話をよく聞くことから始めよう

人間は「理解されたい」と思うもの。また、自分を深く理解してくれる人に対して、感謝の気持ちを抱き、その感謝の心を示したいと思うものです。

科学的にいうと、人間は「給料が上がる」「宝くじが当たる」などの「金銭的報酬」と同様に、「あの人はすごい!」と誰かに認められるといった「社会的報酬」を求める生き物です。脳には報酬系と呼ばれる部位があり、ある刺激によって報酬系の活動が高まると、大きな快感を覚えるということがわかっています。

また、報酬系は女性よりも男性のほうがずっと活発な活動をしています。つまり、一般的に男性が女性よりも出世欲が高い傾向にあったり、縄張り意識があったりというのは、この社会的報酬を求める衝動、自尊心を満たそうとする傾向がより強い、ということにほかなりません。

では相手の自尊心を満たしていくにはどうすればよいのでしょうか。

Aさんはまず、相手の話をよく聞くことを心がけていました。ここで重要なポイントは、「この人は自分のことをよく理解しようとしてくれている」という信頼感を持ってもらうことです。話を聞く力をつけることが、相手の心をつかむ第一歩になるでしょう。

 

表面的な部分を適当に褒めるのはNG

しかし、ここで失敗すると、相手はがっかりしてしまうのと同時に、あなたに対して味方になるどころか、マイナスの感情を抱きます。「自分の話を聞いてくれないのは、自分が『大したことない人』だと思われているからだ。こんな人の言うことなんか、聞いてやる義理はない」と。

なんといっても難しいのは、相手の話を聞いて、それに沿った形で、相手が満足するようにその人を褒めることです。

例えば、東大生が「頭がいいんですね」と褒められたとします。でもその東大生は、あまり褒められた感じがしないでしょう。小さい頃からそんなことは言われ慣れているし、「自分は試験勉強が得意なだけで、そんなに頭がいいわけではない」と考えている人も少なくないからです。

また、頭のいい人がたくさんいる環境にいる機会が多かったでしょうから、そこでもし、自分より頭のいい人を見慣れていたら、「そんな人と比べれば、自分の頭の良さはそれほどじゃない」と感じる可能性もあります。

「自分は本当の意味で頭がいいとは言えない......。でも、そんなことを言ったら『嫌味』だと思われやしないだろうか」とまで考えてしまうことも。それに、成績が良いことで、逆にいじめられた経験がある人もいるかもしれません。

「この人は上っ面のことばかり言っていて、自分のことを理解してくれていないんだ」と、悲しい気持ちになってしまう東大生もいるでしょう。

 

自分だけが知っている相手の長所を見つけたい

では、本当に褒めるのがうまい人は、どうやって褒めるのでしょうか?

やはり、相手をしっかり観察してあげることが基本になります。その人がもし、試験勉強とはまったく関係ない分野のエキスパート(「オタク」という言い方もできるかもしれませんが)だったとしたら、その分野のことを言葉を尽くして褒めてみます。

例えば、鉄道が好きな人なら「今度、九州に行こうと思っているんですよ。電車で移動しようと思っているんですが、何かオススメの電車ってあります? ○○さんなら、いい路線をいっぱい知っていると思いましたから」なんていう褒め方(持ち上げ方)ができると思います。

また、文章が美しい人なら、「□□さんからメールがこないかな?って、いつも楽しみにしているんです。言葉の選び方にアートを感じるんですよね」と褒めたりすることもできるでしょう。

学歴、肩書き、勤め先といったネームバリューなど、表面的な部分を安易に褒めるのは、あまりおすすめできません。あなたが見つけた、その相手の素晴らしいところを、心を込めて褒めてあげる。そうすると「この人は自分のことを理解してくれている」と、その相手はぐっと、あなたに惹きつけられるのです。

ただ、褒めるのがあまり上手になると、今度は相手が惹きつけられすぎて困ったことになる場合もあります。Aさんは、あるとき、二人の男性から同時に求婚され、1年近くも板挟みになって大変な状態になっていました。褒めるテクも使いすぎには注意......です!

 

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