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才能の正体は“ついやってしまうこと” 誰にでもある強みの見つけ方

大賀康史(フライヤーCEO)

2025年12月05日 公開

ビジネス書を中心に1冊10分で読める本の要約をお届けしているサービス「flier(フライヤー)」(https://www.flierinc.com/)。

こちらで紹介している本の中から、特にワンランク上のビジネスパーソンを目指す方に読んでほしい一冊を、CEOの大賀康史がチョイスします。

今回、紹介するのは『才能のトリセツ』(佐野貴著、PHP研究所)。この本がビジネスパーソンにとってどう重要なのか。何を学ぶべきなのか。詳細に解説する。

 

頑張るとは異なる才能というものの正体

目的のためにはつらくてしょうがないことでも、歯を食いしばって頑張ることを私たちは推奨されてきました。今までそういう組織が多かったという話ではなく、現在進行形の価値観だと感じています。

私が初めに勤めたコンサルティング会社で叩き込まれたのは、何事も考え抜くことであり、何事も頑張り抜くことでした。圧倒的な思考量と行動量で自分の経験の少なさをカバーせよ、と直接的にも間接的にも言われ続けていたように思い出されます。もちろん、その時の頑張りでカバーしてきたことが今に活きていることもありますが、自分らしい成果の実現からは遠ざかっていました。

本書を読めば、才能は飛びぬけた能力を表す言葉ではない、さらには「頑張る」の対極にある言葉なのだということに気づくでしょう。そして、すべての人に才能があり、人の能力のでこぼこは誰にでもあるもので、その人らしさを開放することが成しとげたい成果への最短ルートでもあることが理解できます。

今、あなたの実現したい目標は何でしょうか。その実現の道のりは自分の才能を生かすことでより軽やかなものになっていきます。

 

才能発揮のエンジン

著者によると、才能は人より優れていることではないといいます。まずはこの時点でちょっと驚きがあるかもしれません。私たちがあの人には才能があるというときは、自分には到底できないことをできる人のことを言うことが多いものです。大谷翔平や藤井聡太のような人が思い浮かぶかもしれません。私たちは才能を発揮した結果を見てそんな印象を持つ傾向があります。

本書では才能とは「ついついやってしまい、やってよかったと思えること」だとされています。え、そんなことでいいのか、と拍子抜けしてしまうでしょう。それだけ身近なところに才能はあるのです。

才能を発揮するために必要なのは、才能発揮のエンジンを起動する「欲求」を意識することが大切なようです。その欲求は自分の内側から湧き出るものであり、行動の源泉になるものとされています。

経営者やインフルエンサーで自分の欲求に素直に動き、爆発力があって人を巻き込んでいく人がいます。その欲求は周りの人を喜ばせたいというような美しいものでも、お金持ちになりたい、というような俗な欲求でも問題ないといいます。その欲求に素直な人は行動に迷いのなさがあって、苦もなく徹底的にやり切っていくように周りからは見えます。

この自分の秘めたる欲求を開放することが大切だと感じます。私自身は欲求が強い方ではないことを自認しているのですが、それでも何が大事で何はそれほど大事ではないかは強く意識しています。自分ならではの強い欲求が見つかればよく、その見つけ方は、例えば「ついつい考えてしまうこと」「過去一番楽しかったこと」「過去一番つらかったこと」などを書き出していき、その理由を追求していくと明らかになっていきます。

 

才能を見つける

欲求が明らかになったとして、今一つ行動できていないとしたら、自分の内なるブレーキをかけてしまっているのかもしれないと言われています。どうも私たちは社会の中で育つと自分の欲求を抑制して、うまく周りに順応して生きることを覚える傾向があるように思います。才能を明らかにすると、その欲求や行動に対するブレーキがかからなくなり、開放されていくようです。

さて、才能の定義は前述したように「ついついやってしまうこと」であり「やってよかったと思えること」でした。自分の才能に気づくには、次のような言葉を問いかけてみると良いそうです。「もっとこうすればいいのに、と思うことは」「苦手なこと、不得意なことは」「子どもの頃、得意だったことは」。

特に他の人に対して、もっとこうすればいいのに、こうしたら上手くいくのに、という風に感じることは、才能を見つける大事なヒントになります。他にも、周りの人がすることでイライラすること、仕事で怒ってしまうことなども、自分が得意なことの裏返しでもあるようです。

 

才能方程式を自分のものにせよ

著者は求める成果に向けたステップに対して、自分の才能を当てはめたものを才能方程式と呼んでいます。

この才能方程式を一連の流れに集約しておくことで、実際の仕事や生活に応用しやすくします。自分の武器を意識しながら仕事をすることで、その武器は活躍の舞台を得ることになります。

改めて私が感じたのは、このように才能方程式をシンプルな形にしなければならないほどに、日常の仕事や人生は複雑なものにあふれていて、私たちは日々圧倒されているのだということです。本質的なことが単純な方程式にまとめられることは、物理学や数学の世界ではよく見られます。運動方程式という物理学で最も有名な方程式は、複雑に見える物体の運動をシンプルに解き明かし、未来すらも予測できます。

おそらくこの才能方程式を実生活で活用すると、応用範囲の広さに驚くのでしょう。何物でもないと思いがちな私たちに、自分らしい成果の出し方を導き出し、さらに自分らしく生きる指針になってくれるように思わせてくれます。

 

欲求と自分の感覚に素直になろう

本書を読み通した感想は、人はどうしてもまわりの人と比較をしてしまい、自分を大したことがない人間だと思ってしまう習性があるので、このように才能を認識するプロセスは人生の支えとして大切なのだろうということです。

加えて、才能を発揮して何かをなすことは、人生に最大の彩りと喜びを与えてくれるものでもあるように思います。日々会社を運営していて、どのような仕事でも必ずと言っていいほど誰かの何らかの才能が発揮された痕跡を目にします。そしてそれは直接本人に言ってあげないと気付かないくらいに自然に行われています。自分でその才能に気づくには本書を読み、本書に掲載されている才能のトリセツのワークシートを完成させることが有用に思えます。

対話形式で理解が深められるように構成されていて、読みやすく自然とコンセプトが頭に染み込んでくるような一冊だと思います。自分の才能を知りたいすべての人や、人の才能を導き出したいリーダーであれば、本書は必ずや支えになる一冊です。

 

著者紹介

フライヤー(flier)

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