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成績は「思い込み」で変化? 脳科学者が教える「勉強脳のつくり方」

西剛志(脳科学者)

2026年01月16日 公開 2026年01月20日 更新

考え方や習慣を少し変えるだけで、脳が勉強に有利に働くようになります。学び直しを始める前に、意識したほうが良いことを脳科学者の西剛志さんが解説します。

※本稿は、『PHPスペシャル』2026年2月号より内容を抜粋・編集したものです。

 

脳を味方につけてラクに学ぼう

大人になって何かを勉強するなら、楽しくて効率の良い学び方をしたいですよね。そのためには、勉強に有利な脳をつくることが大切です。とはいえ、「もともと自分は頭が良くないから、無理だろう」と思う人もいるかもしれません。

しかし、学習能力には遺伝だけでなく、後天的な環境要因も大きく影響していることがわかっています。環境要因の中でも、とくに注意したいのが「前提」です。「自分は○○だ」といった前提(思い込み)があるとき、脳はそれをなぞってしまうのです。

スタンフォード大学の実験で、成績の良い生徒群と悪い生徒群、それぞれの思い込みの傾向を調べたところ、前者は「頭は使うほど良くなる」、後者は「能力は生まれつきのもの」という価値観を持っていました。つまり、「もともと勉強ができない人は、ずっとできない」などと思い込むと、脳は本当に成長しなくなるのです。

不要な前提にとらわれず、本来の能力を最大限に発揮することが、「勉強脳」づくりの第一歩と言えるでしょう。コツは、何事においても「それ本当?」と自問すること。「○○が苦手だと思っているけれど、それは本当かな?」という具合です。

まずは、「大人になってからの勉強は、若い頃に比べて大変かも」という前提を手放してみませんか? 実際、「加齢により学習能力が下がる」というのは思い込みです。たとえば語彙力のピークは67歳。また、文章の理解度は年齢を重ねるほど上がっていくことが研究でわかっています。

次からは、お悩み別に「勉強脳」のつくり方を詳しくお伝えしますので、ぜひ参考にしてください。

 

【お悩み1】モチベーションが上がらない

どうしても勉強を億劫に感じてしまう......。そんな「なかなか動き出せない人」向けのアドバイスをまとめました。

解決策①「勉強好きな人」と過ごす

勉強へのやる気が湧かない要因として考えられるのは、「勉強は苦しい」という前提です。まずはそれを取り払いましょう。勉強は、謎解きをするワクワク感や新しい発見に満ちています。つまり、本来は「楽しい」のです。

前提を一人で取り払うのが難しい場合は、「勉強好きな人」と過ごしましょう。教育系のYouTube動画などを見るのでもOK。他人が楽しく学んでいる姿を見ると、脳が学習し、モチベーションが高まるはずです。

ここで重要なのは、勉強に対して真剣になりすぎないこと。真剣に取り組もうとするとグルタミン酸という神経伝達物質が溜まり、疲労感が出やすくなります。勉強前も、必要以上に意気込まないようにしましょう。

解決策②時間を区切る

「教科書の内容を丸暗記できるまで勉強してください」と言われたら、ゲンナリしますよね。でも、「毎日2分ずつ教科書を読んでください」なら、「それくらいならやってみようかな」と思えてきませんか?

それは後者のほうが、ドーパミンという神経伝達物質が分泌されやすいからです。ドーパミンは「やる気ホルモン」とも呼ばれ、人が期待したときに出ると言われています。

たとえば、「30分だけ」「電車に乗っている間だけ」などと時間を細かく区切り、「これなら実現できそう!」と自分に期待することで、ドーパミンの分泌を促しましょう。期待がやる気を生み、行動につながるのを実感することができます。

解決策③メリットを4つ挙げる

ドーパミンの着火点となる「期待」を生むためには、脳に「勉強で得られるメリット」を認識させることが不可欠です。「物知りになる」「収入が上がる」「人の役に立てる」「自信がつく」など、メリットを思い浮かべましょう。

メリットの数は、1個より2個、2個より3個、3個より4個が◎。4個以上になると脳は「たくさん」と一括りにして判断する性質があり、それ以上増やしても効果は変わらないので、4個で充分です。

 

【お悩み2】記憶力が下がってきた

年齢を重ねるにつれ、とくに自信がなくなってくるのが記憶力なのではないでしょうか。できるものを取り入れてみてください。

解決策①見える景色を変える

勉強で行き詰まったときは、場所を変えると、学んだ内容が頭に入ってきやすくなります。それは、場所が変わることで、記憶をつかさどる海馬が活性化するからです。

原始人にとって、「ここに木の実がある」といった場所に関する記憶は、生命維持に不可欠でした。そのため、新たな場所を認識するたびに海馬が活性化するようになったのです。

記憶力に不安を感じているなら、いつもと違う部屋や、初めて行くカフェなどで勉強すると◎。難しければ、部屋の模様替えをしたり、行きつけのカフェで違う席に座ったりして、目に入る景色を変えましょう。また、普段から知らない道を歩き、こまめに脳を刺激しておくと、記憶力アップにつながります。

解決策②「勉強前の運動」と「勉強後のコーヒー」を習慣にする

体を動かして血流が良くなると、BDNF(脳由来神経栄養因子)という物質が分泌されて記憶力が上がることがわかっています。最新の研究では、「息が切れる程度の運動」をした直後に勉強すると、記憶の残存率が上がるという報告もあります。

一方で勉強が終わったら、コーヒーを飲んで一息つきましょう。ある実験によると、学習中よりも、終わってからカフェインを摂取したグループのほうが、記憶の定着率が高かったとのこと。ただし、記憶力に違いが出るまでには、「コーヒー2杯分程度」のカフェイン摂取が必要です。

ちなみに勉強をしている最中は、集中力を高めるミントティーを飲むのがおすすめです。

\記憶力は落ちると思えば落ちる!?/

年齢が上がるほど記憶力が落ちるというのは事実ですが、それを意識しすぎるのも考えものです。

というのも、米国のタフツ大学から興味深い実験結果が報告されているからです。18歳から22歳、60歳から74歳の人を集めて、それぞれを2つのグループに分け、一方に「心理学の実験です」、もう一方に「記憶力の試験です」と伝えてテストをしたところ、前者の高齢層は、同じ条件でテストを受けた若年層とほぼ同程度の成績を収めました。

一方、後者の高齢層の成績は、若年層より30%も正答率が低いという結果に。ちなみに若年層は、前者も後者も同スコアでした。

思い込みによる弊害を侮ってはいけないのです。

 

【お悩み3】すぐに疲れてしまう

せっかく勉強を始めても、続かなければ元も子もありません。仕事や家事にも役立つ、脳疲労の回復術を知っておきましょう。

解決策①柑橘系またはラベンダーの香りを嗅ぐ

香りは、脳疲労を取りたいときの心強い味方です。たとえば柑橘系の香りには、脳を目覚めさせる効果があります。

また、ラベンダーの香りもおすすめです。リラックスタイムに嗅ぐと良いイメージがありますが、じつは勉強中にも効果的。ラベンダーの香りは、「愛のホルモン」と言われるオキシトシンの分泌を促し、脳疲労を除去してくれるからです。

ルームスプレーを使って部屋を香りで満たす、アロマオイルをハンカチにたらしておいて疲れたら嗅ぐ、香り付きのハンドクリームを携帯してこまめに塗るなど、やり方は何でもOKです。自分に合った方法で香りを楽しみ、勉強中の脳を癒やしてください。

解決策②植物と「丸いもの」をそばに置く

勉強で疲れてしまい、集中力が切れそうなときは、「緑」を見ると回復するという実験結果があります。とくに植物の緑は、原始人にとって「水があるサイン」であり、安心感の源でした。そのため、今でも人間は緑を見るとリラックスし、疲労が取れるのです。室内に観葉植物を置くのがベストですが、窓の外の街路樹や遠い山に目をやるだけでも効果的です。

さらに、「丸いもの」にも脳を癒やす効果があります。丸い形状のオブジェや丸っこい動物の写真を勉強机に飾ったり、丸のモチーフが描かれた文房具を使ったりすると◎。

緑と丸の効果を組み合わせて、丸い形の葉っぱがついた観葉植物を置くのも良いかもしれません。

\お楽しみを「予約」しよう/

旅行を計画する、素敵なお店を予約するなど、楽しみな予定をつくると、脳が日常的に活性化します。そのワクワク感が、当日はもちろん、当日が近づくまでの間も脳を癒やしてくれるからです。

「疲れたときのご褒美」としてではなく、「勉強を楽しむための燃料」として、予定に組み込むのがおすすめです。

著者紹介

西剛志(にし・たけゆき)

脳科学者

東京工業大学大学院修了。2002年に博士号を取得後、遺伝子や脳内ホルモンなど最先端の研究を手がける。脳のパフォーマンスを高めるためのノウハウを企業や個人向けに幅広く提供。『脳科学でわかった仕事のストレスをなくす本』(アスコム)、『1万人の才能を引き出してきた脳科学者が教える 「やりたいこと」の見つけ方』(PHP研究所)など著書多数。

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