『それスノ』審査員TAKAHIROが語る「一流の共通点」とは? マドンナ専属を経て見えた景色
2026年01月21日 公開
『それSnow Manにやらせて下さい』の完コピダンスバトルの審査員としておなじみのTAKAHIRO(上野隆博)さんは、マドンナの専属としてツアーに参加するなど、世界で評価を受けたダンサーであり、振付師、演出家としてさまざまなシーンで活躍されています。
一流のアーティストの依頼を多く手掛けられるTAKAHIROさんだからこそ感じる「一流の仕事」とは。そして、TAKAHIROさんが折に触れて書き留めてきた言葉をまとめた『「私なんて」と考えてしまうあなたも、絶対に前向きになれる40の言葉』に込められた思いとは。お話をお伺いしてみました。
聞き手:PHPオンライン編集部(次重浩子)
誰もいなくても、観客が「見えて」いる
――TAKAHIROさんはマドンナをはじめ、一流のアーティストの方に向けた楽曲の振付やパフォーマンスの演出など、さまざまな作品を手掛けていらっしゃいますが、お仕事をされる中で、一流とされる方に共通するものは何か感じますか。
【TAKAHIRO】まずは、アーティストの方でいうと、常にファンの姿が見えているということです。
例えばリハーサルスタジオで、一人でマイクを握って歌っている時。その方の目の前にあるのは鏡なんですが、「もっと盛り上がっていこうぜ!」と、本当に目の前に観客がいるかのように呼びかけます。
また、ライブ会場でリハーサルしている時も、客席に観客は誰もいないじゃないですか。でも、花道を走る場面で、ただ動きを確認しているんじゃなくて、ファンの歓声に応えるように、客席に向かって指さしたりしているんです。
想像力がすごいというか、「この方には観客が見えている」と感じます。僕たちが見えている以上のものが、想像力で補完されている。今ある場が練習の場じゃなくて、本番と繋がっているんですよね。人気絶頂の中にいる方は、このあたりがすごいと感じます。
黒の隣は白じゃない。なるべく濃いグレーを目指す
それから、一流のスタッフさんですごいなと思うのは、「NO」とか「ダメ」という言葉がないことです。
僕はステージ演出も手掛けているんですが、いろいろとアイディアを提案します。例えば武道館で、ライブステージの中心に巨大な砂時計があって、ライブ中ずっと砂が降り落ちているようにしたい、とか。
制作者側の人は荒唐無稽なアイディアを出されて、「何を言っているんだ」って一瞬唖然としますが、「でも、こんな感じのイメージなんです」と説明すると、優秀なスタッフさんは「なるほど。一回検証してみましょう」と、「NO」と言わずにどうしたら実現できるか考えてくれるんです。
この前もコンサートの特殊効果を考えていて、天井からたくさんLEDの液晶をぶら下げたいって話をしたんですが、計算すると重量オーバーになってしまう。普通だと「無理ですね。数量を削ってください」ってなるんですが、いや、待てよと。LEDの液晶は上から吊り下げるんじゃなくて、下に台を置いて載せればいいんじゃないか、とかいろいろ考えてくれて、アイディアを実現してくださったんです。
「100」が理想値だとしたら、「NO」「無理です」と言ってしまえば「0」ですよね。
でも考えて考えてチャレンジしていけば「0」はないんです。「やっぱり難しいね」という結果になる場合もないわけじゃないけど、チャレンジした分だけ前進しているから「30」ぐらいにはなっている。やってみて結構うまくいっちゃって「これ120じゃない!?」って時もあるし。
黒の隣は白じゃなくて、その間のグレーから白になっていく色がある。そのグラデーションの色をできるだけ濃くしてみようっていう方々が、一流とされる現場には集まっていると感じます。そういう方と話していると「すごい!」と思うし、学びがありますね。
3万人の笑顔の種を作っている
――TAKAHIROさんは、どんな現場でも100パーセントの力を出すことをモットーにされているとのことですが、一流のスタッフさんのお話と通じるものがありますね。でも、TAKAHIROさんのように、一流としてあり続けるのは大変じゃないですか。継続する力はどうやって培われるんでしょうか。
【TAKAHIRO】まずは自分が好きなことをやっているって思えること。自分は「仕事」っていう言葉をほとんど使ったことがないんです。たとえば「ものづくり」とか、「制作」という言葉を使います。
次に、何をするにも最終の決断は自分自身で出せているって思うこと。
例えば、振付の依頼を新しくいただいたとします。その時に、「これをやらなきゃいけないんだ」って思うのと、「これをやるぞ」って思うのとでは違う。常に物事に対して能動的であることが、継続の楽しみになっています。やらされているんじゃなくて、やっているんだと。
それから、いかにこの場でワクワクできるか、自分の中で光の当て方を変えたりします。例えば、深夜までアイディアを考えていて、めっちゃしんどい時。違うところからフォーカスしてみるんです。
「アイディアを考えなきゃ、どうしよう!」っていうところから、「このアイディアを作ったら、1万人、いや、3万人の人がすごい笑顔になってくれるかもしれない。そんな種をここで作っているのか!」「これを一流の、あのアーティストさんがやってくれる。それを俺が書かせてもらえるんだ!」「こんな歳になって、こんなに夢中でボロボロになるまで向き合えることがあるなんて、すごいな!」「そしてこれを書いたら、なんと、ありがとうって言ってもらえちゃうんだ。嘘だろ」「しかもこれを書くことによってご飯まで食べさせてもらえる。すごいぜ!」――そう考えると楽しい。めっちゃ楽しいです。
人は自分が思っているよりも、誰かが言うよりも、大きな可能性を秘めている
――たしかに。視点を切り替えるって大事ですね。
ただ、誰しも楽しめる仕事ばかりとは限らないじゃないですか。『「私なんて」と考えてしまうあなたも、絶対に前向きになれる40の言葉』では、読者へのエールが盛り込まれていると感じましたが、仕事や日常生活で辛いとか、元気が出ない人に贈りたいエールはありますか。
【TAKAHIRO】僕もあるんですよ、辛いって思うこと。ただ「辛い」の症状によって、エールが違うと思うんですよね。
「大丈夫。明日はあるさ」って言ってもらえたら元気が出る日。「そんなこといいから遊ぼうよ」って言ってくれたほうが楽になる日もあるし、「わかるよ。めっちゃ辛いよね」って共感してもらえることで安心できる時もある。「もう全部捨てちゃおうぜ」って言ってもらえて、心がふわっと軽くなることもある。
なので、万能薬のエールはきっとないんだと思う。だけど、僕も昔はパッとしないねってよく言われたし、しんどい時もいっぱいあったけど、粘っていたらきっと景色が少しずつ変わっていくから。そんなメッセージをこの本には込めたつもりです。
万能薬は作れなかったけど、自分の中の経験と、学んだことと、元気になれそうな、前に進めそうな言葉をいっぱい詰め込んだので、ページをめくっていただいて「この言葉なら、今日はしっくりくるぞ」となってくれたら嬉しい。
もう一つ伝えられることがあるとしたら、人は自分が思っているよりも、また誰かが言うよりも、大きな可能性を秘めているということ。それだけは確実に言える。
なぜなら、たくさんのアーティストの方を見てきて、「自分は無理だ」って思っている子も、最初はあまり目立った評価をされていなかった子も、地に足をつけて地道にがんばっていったらセンターになれたっていう例をいっぱい知っているから。
カメの歩みでもいいんです。1日ですごい距離を進める才能よりも、どれだけ地道に、愚直に続けられるかっていうことのほうが大事。
マドンナだって、自分はこんなにまでなれるって思っていなかったって言ってたし、みんなそうだと思うんです。
自分が思っている以上に、周りが自分を評価する以上に、それぞれが持っている可能性は、広く、深く、大きい。それは断言できる。
だから粘るんだ。強くなくていいから、小さくていいから。ちょっとずつ、ちょっとずつ、足を進めてみよう。きっとそれが変化と進化に繋がっていきます。
一歩を踏み出して、一緒に明日を見ましょう!