「読解力がないから本が読めない」と思っていませんか? 実は、文章が読めるかどうかは才能や読み方の問題ではなく、読む前の段階に大きな秘密があります。書籍『「読む力」と「地頭力」がいっきに身につく 東大読書』より解説します。
※本稿は、西岡壱誠著『「読む力」と「地頭力」がいっきに身につく 東大読書』(新潮社)より一部抜粋・編集したものです。
読めない原因の9割は「準備不足」
たとえばみなさんの中には、「本の内容がなかなか頭に入ってこない」とか、「文章を読むのが遅い」という人も多いと思います。そういう人の多くは、「自分の読み方が悪いのではないか?」「自分には読解力がないのではないか?」と考えていると思いますが、実は違います。
「本や文章が読めない問題」の原因の9割は、「準備不足」なんです!
「準備不足」ということを証明するために、1つ文章を用意しました。
この文章を読んで、「これを書いた人が何を言いたいのか」を考えてみてください。
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昨今はLINEによるコミュニケーションが主流になり、若者はみなLINEをするようになりました。指1本、タップ1つで自分の感情を表現できるようになったのです。笑いも怒りも、彼らはタップ1つで表現します。
コミュニケーションというのは元来、ボディーランゲージやフェイシャル・エクスプレッション、語気や雰囲気も全部含めてコミュニケーションだったはずです。それがタップ1つで表現できるというのは、良いことなのでしょうか? 悪いことなのでしょうか?
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いかがでしょう。ちょっとわかりづらいですよね? 「ボディーランゲージ」とか「フェイシャル・エクスプレッション」とか、よくわからないカタカナ語が使われていて、なかなか内容が頭に入って来にくいです。
また、「良いことなのでしょうか? 悪いことなのでしょうか?」で終わっているので、結局これを書いた人がLINEに対してどういう想いを持っているのか、ちょっとよくわからないですよね。
これは、良い読み方をする人だろうが悪い読み方をする人だろうが、読解力があろうがなかろうが関係なく、何が言いたいのか理解しにくい文章だと思います。理解しにくいから当然、読むスピードも遅くなります。
「準備」をすれば、いっきに簡単に読めるようになる!
しかし、もしこの文章に「最近の若者はなぜ、コミュニケーションが不得手なのか」というタイトルがつけられていたらどうでしょうか? またはこの文章が書いてある本の帯に、「徹底解説! なぜ最近の若者はコミュニケーションが下手なのか?」と書かれていたらどうでしょうか?
「あ! これを書いている人は、最近の若者がコミュニケーションが不得意になった理由の1つが、LINEだと考えているんだな!」とすぐにわかりますよね? どんなに難しい言葉が使われていようが、「良いことなのでしょうか? 悪いことなのでしょうか?」と書いてあろうが、「LINEは悪いものだと考えているに違いない」と一瞬で理解できるはずです。
ただ、「タイトルを読んでいるかどうか」。
ただ、「本のカバーや帯の言葉をきちんと読んでいたかどうか」。
そんな些細なことで、この文章が「読みやすいかどうか」が分かれてしまうのです。
東大生は「読解力」があるわけではない
「東大生はみんな地頭が良くて読解力があるから、文章がきちんと読めるのだろう」
「文章がきちんと読めるかどうかって、才能だよね」
そんな言葉をよく耳にしますが、実はこれはまったくの間違いです。
たとえば東大生はたしかに、他の学生よりも国語の入試問題で高得点を取ることができます。しかしこれは、単に才能があるから読めるとか、地頭が良いから読めるということではないんです。
東大生は、「読解力」ではなく「ヒントを探す力」がある
東大生の多くは、国語の長文読解問題が出題されたら、長文には目もくれず、まず真っ先に「問題文」を見ます。なぜなら、問題文の中にはその長文の内容を問う問題がずらっと並んでいるので、ここからその長文の内容をおおよそ把握することができるからです。
また、東大生はみな、文章を読む前に文章のリード文や文章のタイトルなどもチェックします。
こうして「文章の外のヒント」を吸収しておけば、文章のおおよその内容を想像することができます。ある程度本を読んでいれば、「ああ、これと同じような内容を他の文章で読んだことがあるな」「このテーマについて書かれた文章なら前に読んだことがあるぞ!」と、まったく新しい文章であっても、過去に読んだ文章の内容と関連させることができます。
こうして、東大生は多くのヒントがある状態で文章を読み始めます。どういう内容が文章の中に盛り込まれているのかをあらかじめ理解できている状態で文章を読んでいるのですから、素速く、かつ正しく読解できないはずがないのです。
「読み方」や「読解力」以前の問題で、「文章の外からヒントを得る力」が理解度とスピードを左右するのです!
「読解力」と「ヒント探し」の力を試す実験
まだ信じられないという人は、書店に行って、こういう実験をしてみてください。
1. 表紙もタイトルも何も見ないで、1冊本を選んでみる
2. その本のページをペラペラめくって、真ん中あたりのページを適当に開く
3. そのページの内容が理解できるかどうかをチェックする
4. 3で理解できなかったら、カバーや帯に書いてある文を読んだ上でもう一度そのページを読み直してみて、理解できるかどうかをチェックする
この実験、ほとんどの人は「3」の段階ではまったく理解できないと思います。
東大生にも同じ実験をしてもらいましたが、実験に協力してくれた東大生は全員、3の段階では「理解できなかった」と答えました。しかし、彼らに「4」と同じことをしてもらうために「その本のカバーと帯を見てもいいよ」と言ったところ、ほとんど全員が「今度は理解できた」と言いました。
このように、東大生が文章を素速く、かつ正しく読解できるのは、「読む力」が優れているのではなく、「文章の外からヒントを得る力」があるからなんです。
その本の内容を素速く、かつ正しく理解できるか理解できないかは、「どうやって読むのか」という「3」の段階が重要なのではなく、「その本を読むためのヒントが適切に得られるか」という「4」の段階が重要なのです。