1. PHPオンライン
  2. 仕事
  3. 「起きてすぐスマホ」は意志の強さでは治らない 行動経済学者が教える朝の悪習慣を断つ技術

仕事

「起きてすぐスマホ」は意志の強さでは治らない 行動経済学者が教える朝の悪習慣を断つ技術

竹林正樹(行動経済学者)

2026年07月14日 公開

すんなり起きられない、スマホの見過ぎで遅刻寸前...忙しいはずの朝なのに、理性がはたらかず無意識で動いてしまうのは「脳のクセ」が原因だといいます。行動経済学者の竹林正樹さんは著書『すぐやる人の脳のクセ!』にて、認知バイアスをうまく活用して行動を変えるためのナッジを解説。

本稿では、忙しい朝にバタバタせず、一日を気持ちよく過ごすためのナッジをご紹介していきます。

※本稿は竹林正樹著『すぐやる人の脳のクセ!』(飛鳥新社)より一部を抜粋・編集したものです。

 

初頭バイアスを味方につける、朝のナッジ

初頭バイアスとは、最初の印象がその後の判断や気分に大きく影響を与える心理現象のことです。この認知バイアスは、対人関係だけでなく、日々の生活にも強く影響しています。朝にどんな印象を持つかによって1日の流れが決まることを考えると、朝は不快な情報を避け、「気持ちのいい朝だ」と感じられるような仕組みをあらかじめ設計しておく必要があります。

最近は、「朝にやるべき△△習慣」や「オススメのモーニングルーティン」といった情報があふれています。たしかに、そうした習慣を身につけられれば理想的ですが、現実には「それができたら苦労しない」と感じるような、ハードルが高いタスクも少なくありません。

本書では、「完璧な朝」を追い求めるのではなく、「心地よい朝を邪魔する習慣をやめるためのナッジ」を提案します。キーワードは、ルーティンに特化した設計です。行動のハードルを下げ、無理なく気持ちよく朝を迎えるための工夫を厳選して紹介します。

 

目が覚めたらカーテンの方向に手を伸ばす

こんな人にオススメ:なかなか起きられない人、二度寝してしまう人
ナッジ:スモールステップナッジ

朝、アラームが鳴っても、「まだ布団から出たくない...」と思うことは誰にでもあるものです。これはまさに現在バイアスの影響によって「今この瞬間の快適さ」を優先してしまい、「遅刻」という未来のリスクを後回しにする心理が働いている状態です。

そんなときに有効なのが、スモールステップナッジです。これは、小さな行動から脳と体に「起きる準備」をさせるための仕掛けです。たとえば、「片手を布団から出す」というアクションだけでも、脳が「そろそろ起きよう」という指令を出しやすくなります。

ここで重要なのが、手を伸ばす方向です。多くの人が無意識にスマホの方向へ手を伸ばしますが、これではせっかく朝スッキリしている脳がネガティブな情報にさらされることによってイライラしてしまいます。

そこでオススメなのが、カーテンの方向に手を伸ばすことです。カーテンに手を伸ばして、そのままカーテンを開け朝日を浴びることで、体内時計を調整するホルモン「メラトニン」の分泌が抑えられます。すると、体が自然と起床モードに切り替わり、脳と体にとって「自然な朝のスイッチ」となります。

また、休日は寝坊が多くなるため、事前に時間割を決めておくとよいです。休みの前日の夜に、「明日は△時に起きる」と決めておけば、不思議とその時間に目が覚めやすくなるものです(予言の自己実現バイアス)。この現象は、多くの研究でも明らかになっています。

私の場合、「8時起床、8時半近所のゴミ拾いがてら散歩、9時朝食、9時半〜11時半図書館で論文執筆」といったスケジュールを決めています。実際、そのとおりに行動すると、大きな充実感を得られた状態で午後を迎えることができます。

 

スマホの充電コードを短いものに変える

こんな人のオススメ:起きてすぐにスマホを触る人、スマホの見すぎで朝バタバタする人
ナッジ:逆アクセスナッジ

「直感」はとても単純です。起きてすぐのぼんやりした時間に「なんだかいい朝だ」と感じられれば、その日1日をポジティブに過ごせるようになります。とはいえ、現実はなかなかそうはいきません。目が覚めた瞬間、反射的にスマホを手に取り、SNSやニュースなどを見てしまう人が多いのです(現在バイアス)。大量の情報が目に入ると、寝ぼけたままの直感を混乱させ、一気に疲れが押し寄せます。

理想的なのは、寝室にスマホを持ち込まないことです。しかし、「緊急の連絡が来るかもしれない」「ワンルームだから寝る場所とスマホの距離が取れない」などの問題もあり、むずかしいものです。

そこでオススメなのが、スマホの充電コードを短いものに変えること(逆アクセスナッジ)です。コードが短くなることで、スマホはコンセントの近くにしか置けなくなります。結果として、ベッドの中でスマホを使うことがなくなり、「気がついたら手にはスマホ」という状態から解放されます。さらに、コードが短いと絡まりづらく、見た目もスッキリします。これにより物理的にも心理的にも、スマホとの距離を自然に作ることができます。

毎朝スマホのアラームで起きているという人は、思い切って「アナログの目覚まし時計」を買うのがいいです。また、すぐに買えない場合は、解約したスマホやガラケーで代用できます。スマホのアラームを目覚ましにしていると、起きた瞬間に手に取り、そのままニュースやSNSに流れてしまう望まない動線ができてしまいます。これでは、せっかくの朝のさわやかな時間を情報の洪水で台無しにしてしまいます。

アナログの目覚まし時計を使えば、スマホに触れる理由が1つ減り、朝の時間を自分のために取り戻すことができます。音だけで確実に起きることができ、余計な誘惑は一切なし。これこそ、直感に優しいナッジです。

 

区切りの時間に音楽をかける

こんな人にオススメ:家を出る前にバタバタする人
ナッジ:リマインドナッジ

「気づいたら、もう出かける時間ギリギリ!」そんな経験、ありますよね。これは、寝起きのぼんやりした状態(専門用語で、睡眠惰性といいます)では理性がうまく発動しないため、「まだ余裕がある」と感じ(楽観性バイアス)、間に合わなくなるまで気づかずに起こる現象です。「そろそろ切り替えよう」と知らせてくれる「区切りの合図」がないと、ついダラダラと過ごしてしまうのです。

そこでオススメしたいのが、音楽を「リマインダー」として使うこと(リマインドナッジ)です。好きな音楽をかけることで、睡眠惰性から脱却しやすくなります。昔は、夕方に町内のスピーカーから「夕焼け小焼け」が流れてくると、子供たちが一斉に帰宅しはじめました。私はまだその記憶が残っていて、「夕焼け小焼け」を聞くと自然に「もう帰ろうか」と感じます。このように、音楽には条件反射を作り、自然に行動を切り替える力があるのです。

著者紹介

竹林正樹(たけばやし・まさき)

行動経済学者

青森県出身。立教大学経済学部、米国University of Phoenix大学大学院(Master of Business Administration)、青森県立保健大学大学院修了(博士(健康科学))。
若い頃、祖母に通院するよう説得して拒絶された経験から、「人を自発的に健康行動へと動かす」ことの探求をはじめてナッジ理論に出合う。現在、「頭ではわかっていても、健康行動できない人を動かすには?」をテーマにした研究を行っている。「ホンマでっか!? TV」(フジテレビ)をはじめ、各種メディアでナッジの魅力を発信し、年間約200回の講演を行っている。
著書に『心のゾウを動かす方法』(扶桑社)、『ビジネスパーソンのための使える行動経済学』(大和書房)、『行動経済学トレーニング』(かんき出版)などがある。

関連記事

アクセスランキングRanking