なぜあの人の褒めことばはすんなりと心に入ってくるのか――。FRUITS ZIPPERやfishbowlをはじめ、作詞作曲や音楽のプロデュースをするヤマモトショウさんは、「上手に褒めるためには勉強が必要」だと話します。
日常でも使える褒めことばを165語集めた一冊『NEW褒めことば辞典』(KADOKAWA)を4月に上梓したヤマモトさんに、褒め上手な人の習慣や、ご自身が褒めることから得たプラスの変化についてお話しいただきました。
褒めるのが上手な人は何が違う?
――誰かに褒められるとき、素直に嬉しいと感じられる言葉をくれる人、反対に社交辞令的だったり嫌味にすら感じる言い方をする人、分かれると思います。前者の"素直に嬉しい褒めことばを与えられる人"にはどんな共通点があると思いますか?
【ヤマモト】褒めことばって、普段から言っていないと言えないと思うんです。本当に「すごいな」と思った時に「すごい」という言葉が出るためには、日頃そんなふうに生きている必要があるのかなと。
これは本には書かなかったんですけど、相手を褒めるって本当に難しくて、結構勉強が必要だと思うんですよ。相手への理解というか、ちゃんと知ることが必要で。
たとえば「あの人が好きと言っているこれってどういうものなんだろう」って、ちょっとでも調べてみようという気持ちで動けると、それは全然簡単じゃないとわかる。その上で相手とのコミュニケーションに臨むと、やっぱりすごいなって思えるし、純粋に褒め言葉が出てくるはず。
相手に向き合う姿勢が積極的で前向きな人は、やっぱり褒めるときも自然なんですよね。逆にSNSだと、その対象のことを詳しく知らないから、いとも簡単に「大したことない」って言えちゃうんだと思うんです。詳しく知っていて文句を言う人がいるとすれば、それは本来の意味での批判なので、筋が通っているんです。
つまり、関心がなかったり、そもそも好きじゃない相手を褒めようとしても、あまり伝わらないんだと思います。
真剣に向き合う姿勢が何にでも生きてくる
――それはヤマモトさん自身も実践されていることですか?
【ヤマモト】そうですね。例えば、新しいアーティストと関わる時は、事前にかなり調べるんです。本人と話せるならまず対話をして、マネジメントや近くのスタッフの方ともできる限りコミュニケーションとりますし、自分で調べられることは調べて楽曲制作に取り組みます。
今、世の中で受け入れられている楽曲の多くは、アーティストに対する解像度の高さとか、取り組む姿勢の強さが伝わるものなんですよね。
例えば、米津玄師さんが手がける主題歌って、作品に対しての解像度がめちゃくちゃ高いと言われていますよね。やや雑に解釈をすると、米津さんはその作品をめっちゃ褒めているんだよなって思うんです。それってやっぱり一個一個に真剣に取り組んで、コミュニケーションを取っているということが楽曲にも表れているということかなと思っています。
とても普通のことかもしれないですが、本気で取り組む姿勢って褒めることに限らず、アイドル活動でもプロデュースする側でもどんな仕事でも"うまくいっている人"に共通していると、僕は感じています。
こう思えたきっかけが一つあって。今、静岡で「fishbowl」というローカルアイドルのプロデュースをやってるんですけど、じつは元々静岡のことが好きじゃなかったんですよね。
――ヤマモトさんは静岡ご出身でしたよね。
【ヤマモト】はい、出身地なんですけど、正直つまんないなって思ってたんですよ。例えば、好きなアーティストは全然静岡でライブやってくれないし、ツアーがあっても通過しちゃう。エンタメが少ないと思ってたんです。
でも、一回外に出てから、今こうやって仕事をすることになり、面白いものを積極的に探しに行ったり、真剣に取り組むと、静岡って褒めたくなるところいっぱいあるじゃん、と。過去の自分のざっくりしたスタンスに対して「すみませんでした」と言いたくなる瞬間が本当にいっぱいあって。やっぱり自分の問題なんだなって実感したんです。
しっかりとした態度で向き合うと、静岡の人も反応してくれる感覚がありました。シンプルなことなんですよね。いかに真剣に向き合うかという。
今は情報が多すぎるので、それが重要じゃないように見えてしまうんですよね。何万フォロワーとか何百万回再生といった数字が先行するんだけど、実際にはやっぱり一対一の関係性なので、真剣に向き合うことの重要性は変わらないどころか、より重要になってくるなと日々感じます。
相手を褒めることで実感できた変化
――褒めることで相手が変わったと感じた経験はありますか?
【ヤマモト】静岡の件は一つありますね。自分が知らなかった、本当に面白いと思ったことを伝えると、「外から見るとそうなんですね」みたいな。
――ちなみに、静岡のどんな魅力に気づかれたのでしょうか?
「しきじ」というサウナがあって、サウナ好きの聖地と言われているんですけど。敷地という地域の水がすごくいいから、水風呂がいいんですよね。で、その水で炊いたご飯も美味しいんですよ。味噌汁もうまい。だからしきじに行ったらご飯を食べた方がいい。これって、地元の人やサウナ好きには知れていることかもしれませんが、もっと広く伝わってもいい話だと思って。
静岡ってエリアでだいぶ雰囲気が違うんですよ。大きく三つのエリアに分かれていて、もともと江戸時代は遠江と駿河と伊豆で別の国で。だから浜松市の方と静岡市の辺りって雰囲気が違うんです。そういうのも面白くて。違いもあれば共通点もあったり。一口に静岡といっても全然知らないエリアがいっぱいあるなというのも、fishbowlのメンバーや関係者からも勉強させてもらってます。
外に一回出た人間から見た印象を伝えると、静岡の人は意外と言われたことなかったみたいなことが結構あって。「これが自分の魅力なんだ」とお互いが気づいて、「じゃあこんなことを一緒にやってみましょう」みたいなことが始まったりするんです。