たとえ実力に差がなくても、自信がある人とそうでない人がいる。その違いを分けるひとつの重要な要素に、幼少期~思春期ごろの「褒められ体験」がある。
そう指摘するのは、日本代表やプロ野球選手などのトップアスリートや経営者、芸能関係者の目標達成・メンタル強化のサポートを行い、これまでのべ5800名以上を担当してきた、メンタルトレーナーの石津貴代氏。
本稿では、石津氏の新著『メンタルトレーニングの教科書~本番に強くなる! 自信をつける!』より、「褒められ体験」がその人の自信の持ち方に与える影響を解説した一節をご紹介する。
※本稿は、石津貴代 著『メンタルトレーニングの教科書~本番に強くなる! 自信をつける!』(技術評論社刊)より一部抜粋・編集したものです。
「どんなに良い結果を出しても自信がつかない」の謎
「あなたは自信がありますか?」と聞かれたらどのように答えますか?
・自信がある
・すごい人を前にすると揺らぐ
・失敗すると自信がなくなる
・常にない
など、さまざまな答えが返ってくると思います。
仕事や試合など大事な局面だけでなく、生活においても、"自信がある・ない"という言葉はよく耳にするのではないでしょうか。しかし、「どうしたら自信がつくのか?」、「自信がある人とない人は何が違うのか?」というところまで掘り下げて考える機会は多くないかと思います。
世の中には、頑張ってどんなに良い結果を出しても、自信がつかないという人は多くいます。私のクライアントにも、世間的には成功している人──プロ野球で活躍し1億の年俸をもらっている選手や会社を上場させた経営者など──結果を出しているのに「自信がつかないからどうにかしたい」とメンタルトレーニングをはじめる方が多数いらっしゃるのです。
「成功すれば、結果を出せば、自信は後からついてくる」という考え方もありますが、その理論で行くと前出の方たちはとっくに自信を手に入れているはずです。けれども、本人たちは「自信がない」と言う。そこにはちゃんと原因があったのです。
「自信がある」とはどのような状態か
そもそも「自信」とは何でしょうか?
自信とは「自分で等身大の自分の能力や価値などを信じ、受け入れること」です。自分のことを過小評価することなく、自分の長所や能力、努力してきた過去や、これまでの成長に対してきちんと「OK」を出せている状態。これが、「自信がある」ということです。
「何かに秀でているから自信を持つ」とか「人から一目置かれているから自信がある、すごい!」ということではありません。自信とは自分自身で「今の自分はこれでOKだ」という認識を持ち、前向きに受け入れていることで生まれます。
自信に似た言葉で「自己肯定感」という言葉があります。これは「自分の弱さや短所も含めて、丸ごと自分のすべてを受け入れる」というもの。少しニュアンスは違いますが、自己肯定感も高めていくことも、メンタルトレーニングの目的のひとつです。
他に自信と似ている言葉で、ネガティブな意味合いがあるものに以下のものがありますが、どちらも根底に自信のなさがある状態を表しています。自信とは似て非なるものです。
○自信過剰…コンプレックスや劣等感の裏返し、自信があるように振る舞っている状態
○自意識過剰…自分が他人にどう見られるかを考えすぎること
自信がない人に見られる主な特徴としては、以下のようなものが挙げられます。
・行動力がない
・言い訳が多い
・威圧的な態度や発言が多い
・マイナスな発言が多い
・ストレスやプレッシャーに弱い