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褒めるのは逆効果? 「打たれ弱い部下」を活かす方法

小倉広(組織人事コンサルタント/心理カウンセラー)

2013年08月26日 公開 2024年12月16日 更新

どんな職場にも存在する「打たれ弱い部下」。そんな彼らを注意すると、会社を休んでしまったり、対応を誤れば逆ギレされてしまうことも。上司はどのように接すれば良いのでしょうか。組織人事コンサルタントの小倉広氏が解説します。

※本稿は小倉広著『打たれ弱い部下を活かす技術』(PHP研究所)より一部抜粋・編集したものです。

 

打たれ弱い部下は「上から目線」に敏感

打たれ弱い部下というのは、根底に大きな劣等感を抱えているので、どうしても相手の優越感には敏感に反応してしまいます。たとえば、成功談を聞かされた瞬間、「上から目線」だと感じてしまうのです。そんなふうですから、アドバイスのつもりで言った成功事例であっても、やはり、自慢話や武勇伝としか思えないのです。

「上から目線で当たり前だろ、上司なんだから!」と上司が思うのは当然かもしれませんが、このことが打たれ弱い部下には、かなりの劣等感を与えることになるのです。

とにかく、相手の優越感というものに対しては非常に敏感なので、成功事例をはじめ、よかれと思って言ったアドバイスなどは、ことごとく歪曲して受け止められてしまいます。

大事なノウハウには目を向けず、上から目線にばかり反応し、「結局、威張りたいだけだろ」とか「見せびらかしだ」といった、不平不満ばかりが出てきてしまうのです。

余談ですが、私はこれまでに数多くの書籍を書かせてもらっていますが、おもしろいことに、多くの方はわりとスッと読んでくださって、「おもしろい本だ」とか「勉強になります」とおっしゃってくださいます。

一方、アマゾンレビューなどを見ると、「上から目線で偉そうだ」とか「失敗談のふりをした成功談の自慢話だ」といった「上から目線」に過敏に反応したコメントが目立つのです。

おそらく、そうした「上から目線」に敏感な人というのは、劣等感の強い人なのでしょう。

打たれ弱い人とは、劣等感が肥大している分、想像以上に「上から目線」に過敏です。ちょっとでも相手にその気配があると、ピピッと瞬時に反応し、弱い犬ほどよく吠えるように、猛烈に反発します。

よかれと思ってアドバイスする成功事例でさえこれほどなのですから、当然、まるきりの自慢話や武勇伝の場合は、劣等感を鋭くえぐり、さらにその傷口に塩をすり込むような、壮絶なダメージを与えることになってしまいます。

 

成功談ではなく失敗談という手がある

成功事例をほとんど語らないで、逆に失敗談を語ると、これが意外にも人に受け容れられるものです。

実際、同じ成功事例を語るときでも、「僕はこんな大失敗をしたのですが、そこでこういうことをしたら何とか抜け出すことができたんですよ」という話し方をすると、劣等感の強い打たれ弱い人でも、意外とすんなり聞いてくれます。

劣等感を刺激しないからです。失敗談を聞くことで、「この人は目線が低いんだ」と親近感を覚え、とりあえずは受け容れてみようと思うわけです。

いったん受け容れてもらえたのなら、あとは何を話しても受け容れてもらえやすくなります。多少自慢っぽい成功談を話しても、「でも、昔は失敗して苦しみを味わったんですよね」と考えてくれるので、不平不満にはつながりにくい。

一方、どんなに素晴らしいやり方を伝授されたとしても、失敗談といった、麻酔なしには、すべては「上から目線」だと判断し、結果的には逃走や闘争の方向に向かってしまいがちです。

成功事例を説くときには、成功の陰にあった失敗のほうをまずは話すことが大切です。これは、打たれ弱い部下にかぎらず有効な話し方です。

 どんな人にも多少のコンプレックスはあるものです。失敗から這い上がっていった話のほうが、結局人には受け容れられやすいものなのです。

 

「褒める」も上から目線って知っていましたか?

今の若い人たちは、とくに劣等感に対して敏感です。そんな彼らは、上司に上から目線で言われることをことのほかイヤがります。それだけ劣等感が肥大しているのです。何ともかわいそうな話だと言えます。

叱ることが打たれ弱い部下の劣等感を増大させるということは、すでに述べてきたとおりですが、実は、褒めることも相手の劣等感を大きくしてしまいます。

たとえば、「君は優秀だね」「よくがんばったね」といった褒め言葉は、考えてみれば、明らかに「上から目線」の発言です。

そのため、劣等感の強い打たれ弱い部下からしたら、「何だよ、偉そうに」と、反発心を抱いてしまいます。本当は褒められているにもかかわらず、素直に喜べないわけです。

ここで唯一彼らに対して有効な褒め方というのは、「認める」ということです。

褒めるという行為は「上から目線」ですが、認めるという行為は「横から目線」になります。

相手と同じ立ち位置になることで横から目線になれるわけですが、そうすると、会話は必然的に友達同士のそれに近いものになります。たとえば、「あなたは優秀だね」と(褒めようと)思ったのなら、「お前、スゴイな!」といった言葉になるはずです。

感覚的なことではありますが、そのじつ、この感覚というものがとても重要なのです。

もちろん、絶対に褒めてはいけないということではありません。部下との間に信頼関係ができていれば、「君は優秀だね」「よくやったね」など、上から目線の言葉であっても、それは何ら問題ありません。

問題ないばかりか、ストレートな分、それは強烈な武器になり得ます。部下のモチベーションはアップし、能力も伸びていくことでしょう。

しかし、信頼関係ができていない状況では、何を言ってもマイナスにとられてしまいます。つまり、ここで述べたように、褒め言葉さえ「上から目線だ」と思われてしまうわけです。

さらに言えば、打たれ弱い部下というのは、基本的に人と信頼関係を結ぶのが苦手です。そのため、残念ながら上司との間に信頼関係ができていないことのほうが多い。つまり褒め言葉の多くは「上から目線」として捉えられていることが多いのです。

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