「脱成果主義」の最適な目標設定とは? ~社員を大切にする人事評価
2013年10月01日 公開 2015年08月31日 更新
《『「社員を大切にする会社」の人事評価』より》
結果もプロセスも共に重視する目標せって
目標には定量と定性がある
成績を評価するには、指標となる目標の設定が不可欠です。目標には、大きく分けて2つの種類があります。それは、「定量」と「定性」です。
定量というのは、数値化されていて、それを尺度として明確に測れる成果目標のことです。これを曖昧にしている会社が多いのですが、尺度となる数値化された目標がなければ、結果を評価できません。
また、目標を評価につなげていくためには、5段階評価であれば、5段階の「際〈きわ〉」の部分の数字が可視化されている必要があります。
たとえば、設定された目標の達成度で110%以上が「5」、110%を切ると「4」になるといった設定です。数値化された目標があり、評価の尺度も明確になっていることが大切です。
定性というのは、成果に至るまでの過程に着目して、行動の価値を測るためのプロセス目標のことです。分かりやすく行動目標とも呼んでいます。会社の業績や業務効率の向上につながる行動目標の項目例をいくつか挙げると、「プレゼンテーション力」「顧客拡大力」「処理速度」「業務改善」「品質の向上」「コスト意識」などがあります。こうした項目に基づき、一定期間の具体的な到達目標を設定して取り組んで、その遂行の度合いを評価します。評価に当たっては、評価者が主観で勝手に決めるのではなく、客観的に評価できるよう、あらかじめ評価基準を設けておきます。
結果以外も数値化が必要
成果目標を設定する際には、最終的な結果の数字だけではなく、その結果を出すために必要な要素も数値化し、目標として設定する必要があります。
プロスポーツの世界では、選手の細かい要素も見て評価や査定を行っています。プロ野球の投手であれば、「15勝した」という貢献度だけではなく、投球回数、防御率、奪三振率、被本塁打率、与四死球率、さらには、「あの局面のあの抑え方が良かった」といった1プレーも評価や査定に入ります。
企業の世界に置き換えると、売り上げや利益だけを見るのではなく、営業なら訪問件数など、最終目標に到達するための数値も評価軸に入れているということになります。
たとえば、50件以上訪問したら5段階評価の「5」、50件を下回ったら「4」、20件を下回ったら「1」といった設定をするわけです。そういう数値までちゃんと目標として設定している会社のほうが、やはり社員の納得感を得られる正当な評価につながります。
ほかの人より2倍の件数を訪問しているのに、売り上げが少ない営業マンがいるとしましょう。それは営業のやり方が悪いのかもしれません。あるいはまた、今は仕込みの時期で、あとで売り上げが伸びるのかもしれません。営業のやり方が悪いのであれば改善が必要ですが、ほかの人の2倍の件数を訪問しているということは、人より努力している、チャレンジしているわけです。評価としては、そのことを考慮に入れるべきでしょう。
最終結果だけで評価していると、社風が荒れます。プロ野球であれば、規律を無視し、
「とにかく打てばいいんだろう」
「剛速球を投げればいいんだろう」
というふうな選手が増えてしまいます。
私が知っているセ・リーグでは、バントの失敗が多いと評価や査定に響きます。チームプレーですから、バントも重要です。
「俺はピッチャーだ。勝つためにただ投げればいいんだろう」
という考え方は間違っています。
「違いますよ。あなたが先発投手として5回まで投げて降板したとします。その間、あなたのバントが成功して1点取り、相手チームが0点なら、そのあと中継ぎ・抑え投手が相手打線を封じ込めれば勝てるわけです。バントの練習もしてください」
ということです。
チームの勝利が最終目標であれば、ピッチャーの勝利数はもちろんのこと、バントの成功の数も数値目標となります。
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