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モタさんの 仕事に追いつめられない “大丈夫!” な考え方

斎藤茂太(精神科医/随筆家)

2013年10月09日 公開 2022年09月28日 更新

《『モタさんの落ちこみやすい人の”大丈夫!”な考え方(愛蔵版)』より》

 

仕事は人生のひとコマに過ぎない

 どんなに頑張っても仕事で評価を得ることができない。苦手な上司や同僚がいて会社に行くのが苦痛。希望していない部署への配置転換が決まった――。

 会社勤めをしていれば、多かれ少なかれ、思い通りにならないことで悩む場面がある。

 努力することで活路を見出せることもあるが、自分の力だけではどうしようもないこともあるだろう。

 そんなときは気分が落ちこんで、会社に行くのが億劫になってしまったり、ストレスを感じて、体調に変化が出てしまう人もいるかもしれない。

 だが、どんなに思い悩んでも状況は変化しないのである。悩むことにエネルギーを費やすよりも、少しでも快適な状態になれるよう、発想を転換してみてはどうだろう。

 あなたにとって「仕事」とは何なのか。

 仕事は人生のなかで多くの割合を占めているだろうが、人生すべてではないはずだ。ときには割り切り、切り離し、自分の感情を仕事から自由にする時間も必要なのである。

 仕事での評価を得ることができないときには、自分の能力を客観的に見てみよう。自分の出した成果と、会社が求めていた成果が一致しているだろうか。人は誰でも自分への評価は甘めになる。これは仕方のないことだ。自分の潜在的な能力まで含めて評価しているからである。だが会社は、ひとりひとりの潜在的な能力まで見極めることはできないのである。「もっと高く評価されていいはず」と思ったときには、潜在的な能力も含め、もっと能力を発揮するにはどうしたらいいかといった点に注意してみよう。

 人間関係で悩んでいるときには、相手をもっとよく知るように心がけてみよう。自分が知らなかった相手の一面に気づくことで、コミュニケーションの取り方などに工夫できる点が見えてくるかもしれない。

 希望しない部署に転属になったときには、とりあえず新しい環境に飛び込んでみよう。なかには配置転換がいやで退職してしまう人もいるが、最初から苦手意識や嫌悪感を持たないほうがいい。意外な面白さに気づくかもしれないし、人間関係が広がるかもしれない。どんな可能性があるかわからないではないか。

 発想を転換して仕事に向き合えば、意外な境地が開けることもある。

◎ポイント◎ 発想を変えてゆとりを持つ

 

 

すべてをひとりで背負い込まない

 責任感の強い人ほど完璧主義の傾向が強い。

 そんなタイプの人は仕事でまわりの人から頼りにされ、信頼を寄せられるだろう。

 だが、どんなに優秀な人であっても、個人の力には限界がある。周囲の期待や信頼を裏切らないよう頑張り続けることで、いつのまにかすべての責任が自分にあるかのように思い込んだり、ちょっとしたミスで精神的なダメージを受けてしまっては、その人本来のよさが発揮できなくなってしまう。

 会社での仕事というのは、たくさんの人間が力を合わせてこそ成立する。そもそもひとりで背負いきれるものではないのだ。

 「誰も頼れない」「ひとりで頑張るしかない」そのような気持ちに駆られたとき、ちょっと立ち止まって考えてみてほしい。本当に助けを求めることができないものなのだろうか。また、どうしてそのように思ってしまうのだろうか。

 上司や同僚、部下、後輩など、ほかのメンバーに声をかけてみることで解決できる問題は少なくない。

 いわゆる「できる人」には、仕事の配分も多くなりがちだ。だが、限界まで頑張ってもこなしきれない仕事までをも、だまって耐え続ける必要はないのである。

 できないことは 「できない」といっていい。

 そうしないと、誰もあなたの大変さに気がつかない。ひとつの仕事が終わっても、また次も同じような配分の仕事を割り振られ、いつまでたっても苦しみから抜け出すことができなくなる。そのようなことが続けば、いずれ限界が来てしまうだろう。

 一生懸命な人ほど、「ほかの人も頑張っているから」「誰にも迷惑はかけられない」と考えて、苦しみや重圧感を自分のなかに抱え込みやすい。そのようなことが積み重なってしまうと、自分に自信がなくなり、「能力がないのではないか」「だめな人間なのではないか」と、自分自身に疑惑の目を向けることになる。その思いが自分を追いつめることになり、頑張るほど自信がなくなるという悪循環を生む。

 そんなときには、「頼ってもいい」「大変だと口に出してもいい」と発想を転換してみよう。そう考えることが、自分の力を発揮できる環境作りの第一歩になるのである。

◎ポイント◎ 本当に大変をときは、人を頼ってもいい

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