《PHP文庫『ウザい話し方』より》
聞き上手は「話していて楽しい人」
本音をいえば誰でも、相手の話を聞くよりも自分の話を聞いてもらったほうがうれしい、ということはすでに述べました。
話を上手に聞いてくれる人というのは、誰にとっても「話していて楽しい人」なのです。それだけに、仕事でも恋愛でもよく“モテ”ます。
また、そのことに多くの人が気づいているからこそ、「聞き上手になる」ことをテーマとした本や記事などが増え、「傾聴」やカウンセリングの技術にも注目が集まっているのでしょう。
難しい理論はさておき、聞き上手になるための具体的なコツだけは身につけておいて損はありません。5つほどご紹介します。
〔1〕頭を空っぽにして相手に同化する
カウンセリングの世界では、相手の話を聞くときには、相手の気持ちに同化するのがいいとされています。
イメージとしては幽体離脱して相手の身体にすっと入って、同じ風景を見る感じです。
しかし、慣れるのには時間と経験が必要。人は他人の話を聞いているときでもずーっと頭のなかでいろいろ考えてしまっているからです。自分が次にしゃべることを常に考えている「終わり待ち」の人などはその典型です。
(うーん、それは違うんじゃないかな?)
(うわ、こんなこと言っちゃってるよ)
(次はこの話、しようっと)
などと考えていて、話が終わるのを待ちかねたように「あ、そうなんだ、でね……」と自分が考えていたことを話し始めてしまいます。これでは「あなたの話なんて聞いていませんでした」と言っているようなものです。
なので、なるべく自分の考えはお休みにすることが大事。そこで、「相手の話をすべて記憶するつもりで聴く」という方法が有効になります。ここまで集中すれば、余計な考えに注意がそれてしまうことは避けられます(どうしても自分が次に話したいことが頭に浮かんでしまうようなら、それはメモします。メモすれば安心できるので、再び相手の話に集中することができます)。
授業のときにノートを取りながら先生の話を聞いたものですが、あれも「他の余計なことをしない」という意味では、とても意味があったわけです(書くのに必死になって、覚えられないということはあっても)。
これぐらい真剣に聞いていると、突然「で、君はどう思う?」と振られたときにはとっさに返答を思いつかないかもしれません。それでも大丈夫。「あ、ごめん、話に集中してて」とすぐに答えられないほうが、「熱心に聞いてくれている」と、かえって好印象なぐらいです。
〔2〕相づちは特に意識しなくてもOK
相手の気持ちにシンクロしている場合には、相づちも自然とシンプルになっていきます。
集中して聞いていれば、いわゆる「気の利いた相づち」を考えているひまはないのです。
相手が「まいっちゃってさあ」と言ったときには「まいっちゃうよね」と勝手に繰り返してしまうし、相手が「そしたら、すごいことになっちゃってさ~」と言ったら、「すごいこと?」と質問できるでしょう。
相手が話しているときにこちらが返す言葉はこれぐらいで十分です。ほかには「それで?」とか「うんうん」だけで事は足ります。気の利いたことを言おうとする必要はまったくありません(実際、上手なカウンセリングをビデオで見ると、カウンセラー自身はほとんど言葉を発しないことに気づきます。それはもう、驚くほどです)。
〔3〕リアクションは大きめに
「ちゃんと聞いているよ」ということを伝えるために、目をきちんと見て、うなずきは大きく、そして笑顔を忘れないようにしましょう。
いつもよりもオーバー目にリアクションをとるだけで相手はうれしいですし、身体を動かすと自分としても気持ちがほぐれます。
うなずきについては、ちょっとしたテクニックもあります。小刻みに「うん、うん……うん、うん」というよりも、じっと聞いていてごくたまに「そうなんだー!?」と大きくうなずきましょう。実感がこもるうえに、相手としてもセカセカした気持ちになりにくいようです。
〔4〕まず自分が落ちつく
自分が緊張すると、相手も緊張します。緊張は伝染するのです。ですから、相手のためにも、自分が落ちつける環境を作りましょう。
たとえば座席の位置。正面で向き合うと視線のおきどころに困る、という人も多いでしょう。そういう場合にはカウンター席のように並んで座れる場所を選びます。相手が自分の右側にくるか左側にくるかで、リラックス度が変わるのであれば、より落ちつくはうを選びます。テーブルの角の席に斜めになって座るのもオススメ。
聞き上手になろうとして、自分がパニクってしまうというのは最悪の状況。落ちついて聞くためには自分のコンディションについても十分気を配ることです。
〔5〕沈黙を怖がらない
「会話が途切れるのは気まずい」と感じて、相手の言葉が途切れると「とりあえず何か言わなくては」と考えてしまう人も多いはず(僕もどちらかというとそうです。「沈黙恐怖症」ですね)。
相手が黙り気味のときに、無理に話題をつなごうとしない勇気もときには必要。相手はこれから話すことを、じっくりと考えているだけかもしれないからです。
沈黙を怖がらず、それでも相手の話への集中を途切らせないように。黙って笑顔で「それで?」と促すのも効果的です。
<書籍紹介>
実はあなたもやっている!?
ウザい話し方
話題泥棒、自虐自慢、「でも」「だって」の乱用……その話し方は人を疲れさせます! 「なぜか交友関係が広がらない」とお悩みの人必読。
<著者紹介>
(いおた・たつなり〉
作家・心理カウンセラー、米国CCE.Inc.認定GCDFキャリアカウンセラー
東京大学教養学部卒業後、角川書店、博報堂、博報堂生活総合研究所を経て独立。「コミュニケーション」「恋愛・結婚・仕事」「生活者心理」「社会変化と男女関係」を主なテーマに執筆や講演を行う。鋭い分析と優しい語り口が人気となり、『解決!ナイナイアンサー』(日本テレビ系)、『私の何がイケないの?』(TBS系)などメディア出演多数。
また、東京・恵比寿にて女性のための人生相談ルーム「恋と仕事のキャリアカフェ』を主宰。“日本一女心のわかる男”として、働く女性や職場で女性との接し方に悩む男性などから多くの支持を集めている。
著書に13万部を超えるベストセラーとなった『特定の人としかうまく付き合えないのは、結局、あなたの心が冷めているからだ』(クロスメディア・パブリッシング)がある。その他、『結婚できないのはママのせい?』(阪急コミュニケーションズ)、『今すぐ「グズな心」をやっつける方法』(三笠書房)、『子猫と権力と×××~あなたの弱点を発表します』(クロスメディア・パブリッシング)、『フェイスブックで「気疲れ」しない人づきあいの技術』(フォレスト出版)、『一瞬で幸せ本能がめざめる心のゆるめかた』(中経出版)、『「2回目のない女」を卒業します』(メディアファクトリー)など。
[オフィシャルサイト】http://www.iotatatsunari.com/