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うしろ姿に差が出る! できる男のビジネススーツ

唐澤理恵(パーソナルデザイン代表取締役)

2014年01月28日 公開 2021年08月24日 更新

スーツの基本を知らずにおしゃれをしても、底が知れる

最近、街でも新幹線でも会合でも、スーツのパンツの裾を折り返しのない"シングル"にしている男性が多いことに、いささが驚いています。

私が会社を始めた2000年頃は、折り返しのあるダブルにしている男性が多がったはずです。男性のスーツにエレガンス(優雅さ)を求めるようになってきた、ひとつの流行と解釈していますが、ほとんどの男性は、なぜ自分がシングルにしているのがをよく理解していないように感じます。

百貨店やブランドショップでは、パンツの裾をシングルにするかダブルにするかを客に尋ねます。指示通りに仕立て上げることが常だそうですが、ポール・スミスのあるショップで尋ねてみると、基本はダブルをすすめるそうです。そして、シングルと言われればそれに従うとのことでした。

エトロのあるショップでは、男性にも優雅にスーツを着こなしてもらいたいというブランドコンセプトがあるため、シングルをすすめるそうです。20万円以上のスーツの場合、それもあり得るでしょう。

ファッションとは、絶対これでなければならないということはありません。が、その意味を知って着用しているのといないのとでは、着こなし方に差が付く、というのが私の意見です。

まずは、スーツの歴史と意味にふれておきます。

軍服から進化したスーツですが、元々は社交の場やパーティで着用されました。ちなみに左襟にあるフラワーホールは、詰め襟だった軍服の最上部のボタンホールの名残です。

スーツのジャケットの襟を閉じれば詰め襟になりますから、試してみてください。フォーマルの場で着用されていたスーツのパンツの裾は、シングルでした。

1900年初めにスーツ姿で乗馬していた紳士が、馬がら降りたときと乗っているときのパンツの丈を調節するために、降りたときに裾を折り返したのがダブルのきっがけです。ダブルのまたの名を「泥除け」というのはこのためです。

乗馬をする際にジャケットの裾がまくれ上がらないように切れ目を入れたのがセンターベンドの始まりだということは、前述のとおりです。つまり、パンツの裾のダブルとジャケットの裾の切れ目は、動きやすさと機能を考慮しての工夫だったというわけです。

そこから、フォーマル用のスーツは「裾がシングルのパンツに、ベンドのないノーベントジャケット」がマナーである一方、ビジネス用のスーツは「裾がダブルのパンツに、センターベントかダブルベンツのジャケット」が一般化したという歴史です。

その流れを汲んで、私は、ビジネススーツのパンツの裾はダブルをおすすめしています。もちろん、素材や、その方のポジションなど、着る場面を想定してシングルにする場合もありますが、稀だといえます。

ファッションを考えるとき、時代の流れによる生活様式の変化を無視することはできません。時代とともに形骸化していくことも多く、本来の意味も次第に消えていきます。

しかし、ファッションには相手との人間関係を決定してしまうほどの威力があることを考えれば、なぜそれを着ているのか、なぜそのように着こなしているのかを知っておくほうが得策です。

しかも、それを知っていることで、その衣装に合った立ち振る舞いや言葉遣いとなり、より一層あなた自身を魅力的に見せてくれることにもつながります。

私が日々の仕事で大切にしていることは、「なぜそれをするのか、なぜ今これをしなくてはいけないか」という意味を明確にした上で行動することです。私の部下たちにはいつもそれを問いかけてきました。

いざ想定外のことが起きたときに、意味を知っていれば、自分で考え、自分で行動することができます。

印象マネジメントのコツも、それに尽きると思います。装いや髪型、話し方、振る舞いについても、「なぜ」と自問自答することは自らを客観視すること、つまりセルフイメージを高めることにつながります。

そしてそうすることによって、人とのコミュニケーションがより豊かになると、私は心から信じています。

[ 仕事も印象マネジメントも、基本を知る者が勝負を制す ]

 

<著者紹介>

唐澤理恵

(からさわ・りえ)

〔株〕パーソナルデザイン代表取締役

お茶の水女子大学被服学科卒、早稲田大学経営学修士、学術博士(コミュニケーション学)。〔株〕ノエビアに営業として入社。新規事業・営業企画を担当、さらに営業拠点長を歴任後、同社初の女性取締役に32歳で就任し、マーケティング部門を担当する。38歳で独立。現在は、〔株〕パーソナルデザイン代表取締役として、政治家・企業トップのヘアスタイル、服装、話し方などのイメージコンサルティングを手がける。個人顧客のほか、多くの企業で経営者・管理職、また広報・営業社員を対象とした印象表現やコミュニケーション研修を実施する傍ら、九州大学などで非常勤講師も務める。東京・港区にある赤坂サカス内でPDSパーソナルデザインスタジオを運営。ビジネスパーソンを対象に印象表現を指南する。新宿伊勢丹メンズ館でも同サービスを提供。

 

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