ディズニーランドでは、なぜ「蚊」が発生しないのか?
2014年05月23日 公開 2024年02月01日 更新
《『ディズニーランド成功のDNA』より
水にさえこだわるのがディズニー流
ディズニーランドとディズニーシーでは毎日、多くの水があらゆる場所で使用されています。少し思い出すだけでも、あちらこちらに水と一緒の光景が思い浮かぶはずです。
しかし、ディズニーランドで蚊などの虫が発生しないのは、どうしてでしょう?
もちろん、ディズニーリゾートで使われているのは、ただの水ではありません。普通の水を入れているだけでは、あっという間に害虫や藻が発生してしまうからです。詳細は明らかにされていませんが、徹底的に研究された成分を配合した水で満たされていることは想像に難くありません。
しかもその水が、もし子どもたちの口に入ってしまっても、安全でなければなりません。そこまで計算されているのです。
余談ですが、堀貞一郎氏が大学で教えていたとき、ディズニーランドで再処理したきれいな水と水道水を並べて、どちらが再処理した水かを当てたらディズニーランドのパスポートをさしあげるといったけれども、誰一人挑戦できなかったそうです。それほど、ディズニーランドの水はきれいなのです。いくらにおいを嗅いでも、光を当ててもわからないほど、きれいな水です。
さらに驚いたのは、スプラッシュマウンテンの話です。適度に水に濡れて、すぐに乾くような、気持ちのよい濡れ具合というものがあるそうです。
しかも、気温や湿度、風向き、風速などが深く関わっているので、アメリカのアトラクションの水処理方法をそのまま持ってきただけでは、日本ではうまくいかないといいます。そこもまた、日本で研究と試行錯誤の結果、導き出された水が使われています。
では、あの大量の水はいったいどこに流してしまうのでしょうか? 答えは簡単です。流してしまうのではなく、徹底して水を再処理し、再利用しているのです。これはディズニーが環境に配慮し、細心の注意を払った結果です。
パークのバックヤードには巨大な下水処理施設があり、そこでは利用した水を飲用に適すほど再処理しています。
「しかし、パークに流れる川や海の水の色はあんなに濁っているじゃないか」という反論が出るでしょうが、あれはわざわざ着色しているのです。もちろん、人体や環境に影響がないように、ほどよく濁るように調整されています。
なぜ、そんなことをしているのかといえば、これも答えは簡単です。パーク内の川底に、もしも排水溝やコンクリートが見えたり、アトラクションの設備が見え隠れしたりしたら、その瞬間に川ではなくただのプールだと気づいてしまうでしょう。それでは何もかも台無しです。
一事が万事、この調子なのです。ただ、そこまでしても、ディズニーランドは満足していないようです。もっとよいものを提供し、ゲストにもっと感動を味わってもらうためにはどうあるべきかを、常に考えています。
「完璧な状態などあり得ない。もっとよくなるはずである」
これがディズニーランドの声なのです。
<書籍紹介>
東京ディズニーランドの成功の秘密、そしてそのホスピタリティの源流は、日本への誘致・建設のコンセプトのなかにあった。
<著者紹介>
ホリテーマサロンテーマパーク研究会
ホリテーマサロンは、メディア関係者が東京ディズニーランドの総合プロデューサーを務めた堀貞一郎氏を招いて開催していた朝食会が発展してできた勉強会です。この会は、毎回1つのテーマについて講師から話を聞くことと、1業種1会員の異業種交流会であることが決められていました。後に帝国ホテルで毎月開催されるようになり、2月と8月を除いて、毎月1回ずつワインやビールを片手に、招いた講師の講演を聞いたあと、フリーディスカッション形式で知見を広めていきました。講師には。事業家・作家・芸術家・学者・アスリートなど、さまざまな方々が登場しました。ときには、堀氏自身が講師となって、「東京ディズニーランドを誘致した当時の話」や、「モーツァルトの楽しみ方」「長江とダム建設と西遊記」「歌舞伎はこう見ればもっと楽しい」など多彩な話が繰り広げられました。
2012年5月の記念講演を最後にホリテーマサロンは幕を閉じましたが、その後、株式会社プラネットの代表取締役・小池和人氏を中心に「テーマサロン」として引き継がれています。