歴史街道2011年6月号書評から
2011年05月06日 公開 2022年08月18日 更新
『千思万考~歴史で遊ぶ39のメッセージ』
黒鉄ヒロシ 著
幻冬舎/1,575円(税込)
「黒鉄歴画」の魅力満載!
テレビ朝日系列毎週日曜昼放送「サンデースクランブル」の人気コーナー、「黒鉄ヒロシの千思万考」が本になった。カラーイラストとともに、独自の歴史観で日本史上の人物を縦横に論評。「エッ?」と驚いたり、「なるほど」と頷いたりで楽しめる。(辰)
『仏の発見』
五木寛之 著/梅原 猛(対話者)
平凡社/1,470円(税込)
仏の力を信じる人気作家と碩学の邂逅
仏も昔は人なりき――。その存在は、己の心の内に発見できるという。仏の力を信じる人気作家と哲学者が、自らを「悪人」として心の闇と哀しみを赤裸々に語る。話題はジャズの即興演奏のように展開。やがて親鸞へと至り、二つの知が共鳴する。(佐)
『谷 干城~憂国の明治人』
小林和幸 著
中公新書/840円(税込)
「代表的明治人」の実像に迫る
西南戦争で活躍した勇敢な軍人...谷干城に対する多くの人の評価だろう。しかし、そうした見方は一面的に過ぎる。公を顧みぬ藩閥政府を批判し、国家を心から愛した谷こそ、「明治の精神」を体現した男であった。谷干城の実像に迫る本格評伝。(水)
『ばんば憑き』
宮部みゆき 著
角川書店/1,785円(税込)
宮部ワールド全開の江戸もの怪談集!
表題作「ばんば憑き」をはじめ、怪奇譚でありながら人情噺、ミステリーでもある6編が収録されている。なかでも、凶器として使われた木槌に魂が宿り、物の怪と化して悪さをする「野槌の墓」は、江戸の風情漂い、じんわりと心に沁みる傑作だ。(後)
歴史街道 2011年6月号
「なに、弾正が寝返っただと?」。元亀3年(1572)、織田信長は窮地に陥ります。信長包囲網により身動きできぬ中、武田信玄が上洛戦を開始。さらに追い討ちをかけて、松永弾正久秀が叛旗を翻したのです。額に青筋を浮かべた信長は、ふと口元を緩めます。「あ奴らしい。おそらく親父らもこうしたであろう」。信長は二つの顔を思い出していました。父・織田信秀と舅・斎藤道三です。信秀、道三、弾正...。いずれも戦国の世に「梟雄」と呼ばれた男です。旧来の秩序や価値観が揺らぐ中、下層から実力でのし上がり国を奪う者。天下布武を志す信長もまた、その一人でした。未曾有の国難に直面し転換期を迎えた現代日本に、梟雄が示すものを探ります。第二特集は「震災に立ち向かった日本人」です。