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『日本と日本人について』―松下幸之助が語る日本人の伝統精神

PHP研究所ビジネス出版部

2015年04月18日 公開 2022年10月05日 更新

〝松下幸之助の著作を装いも新たに多くのビジネスパーソンに! 〞というコンセプトで始まった「松下幸之助ライブラリー」も本書で10作目。おかげ様で、これまでたくさんの 読者から反響をいただき、改めて松下さんの人気ぶりには驚かされます。

 読者ハガキを見ると、「前に買った文庫本が、何回も読んでボロボロになったから購入した」とか、「若い頃に読んだが、再度読んでみたくなって」といった感想が結構あります。また、実際に会社を経営している方からは、日々悩みや心労の尽きない仕事の中で、「松下さんの本から勇気をもらっています」という声が目につきます。人一倍現場で苦労してきた松下さんだからこそ、その言葉は経営者にとって、まさにかゆい所に手が届く親身のアドバイスということなのでしょう。

 さて、今回の本はこれまでの本とは少し趣を異にし、世界の中で日本人の特質に焦点を当てた、いわば松下流の日本人論です。本書の全体を通じて流れているのは、日本という国に対する深い敬意と限りない愛情です。独特の気候風土と長い歴史の中で培われ、かつ祖先が連綿と受け継いできた日本の伝統精神は、世界に誇るべき優れた思想・精神であるという主張です。

 一つのエピソードをご紹介しましょう。昭和20(1945)年8月16日、終戦から一夜明けたこの日、松下さんは幹部社員たちを集めて「臨時経営方針」を発表しました。その中で松下さんは、「今日の破局は、明治以後、日本人が日本精神を忘れた当然の帰結である。むしろ、この敗北を日本精神を取り戻す絶好の機会と考えよう。真の日本精神こそが国家を復興させ、将来の繁栄への基となる」という趣旨のことを力強く語りました。敗戦の翌日に「絶好の機会」と語るとは驚きですが、それよりも、日本精神こそが繁栄の原動力であると喝破しているところが松下さんの真骨頂でしょう。

 本書では「天皇制」「太平洋戦争」という、とかくイデオロギー論争の格好のテーマとなり得る話題についても、自らの立場を端的に表明しており、松下さんの歴史観を知る上で貴重な一書と言えます。長らく紙の本では入手困難でしたが、この機会にぜひご一読ください。

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