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松下幸之助の成功には「心のプロセス」があった!

ジェームス・スキナー(経営コンサルタント)

2015年09月17日 公開 2024年12月16日 更新

《『心をひらく あなたの人生を変える松下幸之助』より》

 

心をひらけば、願いはかなう――あなたの人生を変える「松下幸之助」

 

松下幸之助の世界をすべて見て

 あれだけ大きな企業をつくれたのはなぜだろう?
 あれだけたくさんの会社を築き上げられたのはなぜだろう?
 あれだけ社員から愛され、素晴らしい関係を構築できたのはなぜだろう?
 あれだけ企業経営のみならず、各分野において成果を出せたのはなぜだろう?
 松下幸之助に関するさまざまな本を読み、資料館に行ったり、ゆかりの深い土地を訪ねたり、いろいろな人の話を聞いたり、本人の邸宅を訪問したり、持ち物に触れたり、彼の建てた社にお参りしたり……と松下幸之助の世界をすべて見てきた。

 そこで考えた。
 このすべてをつなげる本質とは、いったい何なのか?
 さまざまな著作から引用される文章であるとか、側近だった人たちの語るエピソードであるとか、そのひとつひとつをつなげているものとは、いったい何なのだろうか?

 

経営だけじゃない

 松下幸之助のやってきたことのひとつひとつを真似ようとしても、それだけではダメなのだろう。私たちが直面している現実とは事情が違っているからだ。
 時代も変わっていれば、文化も変わっている、環境も変わっている。
 それに、だれもが電器メーカーをつくろうとしているわけではない。事業家ばかりでもない。ビジネスパーソンもいれば、主婦や学生もいる。科学者やジャーナリストもいる。
 松下幸之助の知恵ははたして会社経営だけにしか通じないのか。
 会社経営だけでなく、国づくりにも応用できるのではないか。
 家庭を営むうえでも応用できるのではないか。
 ボランティア活動においても、活用できるのではないか。
 毎日の生活にも広く活かせるのではないか。
 私たちが直面しているさまざまな状況において、どのようにその知恵を活用できるのだろうか。
 こういうとき、このような場合は、もし松下幸之助が当事者だったら、どう判断するのだろうか。

 

どこを見ればいいのか?

 こんなことを思い浮かべつつ、瞑想をしていると、松下幸之助の世界のさまざまなイメージが頭の中に交錯してきた。見学させてもらった創業の地や旧本社といったゆかりの地とか、発明した製品や愛用していた自転車といったゆかりの物とか、松下真々庵の庭や邸宅の中とか……。
 そして、そのときに閃いた。
 松下幸之助のいったいどこを見れば良いのか……。

 それは松下幸之助直筆の文字だったのだ!

 若いときから武道を嗜んでいた私には、武道家としての一面がある。
 そういう関係もあって、先述のように、宮本武蔵という昔の武道家が大好きなのである。

 昔の武道家というのは、流派を打ち立てて、その最期には、巻物を遺す。
 自分の必殺技とか秘伝を巻物に描き記して、後世に託している。
 しかし、宮本武蔵について調べてみると、おもしろいことに、巻物がない。その代わりに、何があるかというと、自画像1枚。両手に剣を持って、立っている自分の姿だけだ。

 分かる人には分かるだろうが、分からない人には、分からなくていい……。
 そんなところに武蔵の気迫が感じられる。

 「この1枚から私の技を盗めるものなら盗んでみろ。
 すべてここにある。
 私が描いた私の姿を見て、分かってほしい」

 私は武道家としてそんな目でずっとこの絵を見てきた。

 そのことを思い出して、松下幸之助の直筆の文字を見るとどうだろう?
 やはり、彼の哲学がすべてその中に集約されていた!

 筆を手に取るときにひとつひとつ、なぜこの字を選んで、わざわざ遺そうとしたのか?
 適当に書道の手本を書いているわけでは決してない。
 これは、社員に一番伝えなければならないメッセージだ。
 これは、後継者に一番伝えなければならないメッセージだ。
 その漢字の選び方の中に哲学が秘められていたのである。

 PHP研究所や松下資料館を見学していたとき、松下幸之助直筆の文字4つが、私の目にとまった。
 この4つの漢字を並べてみたら。そこにひとつのプロセスが描かれていた。
 そして、このプロセスというのは、松下幸之助みずからが、あれはどの大事業を成し遂げるために使われたプロセスそのものだったのである。

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