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Voice7月号書評から

『Voice』編集部

2011年07月22日 公開 2022年09月08日 更新

『日本経済 復活まで』

竹森俊平 著
中央公論新社/1,050円(税込)
 未曾有の地震と震災で戦意喪失したかにみえる日本。しかし筆者はいう。「もし今後2年程度で電力不足が解消されれば、次に日本に訪れる局面は『高度成長』である」。
 供給のボトルネックがなくなり生産の拡大が容易になる、東北の復興活動が本格化するという点などに加え、筆者が着眼するのは、「ポスト震災経済」はかつての高度成長時代と同様「輸出主導」とならねばならない、という点だ。輸出こそが日本経済を高速で回転させたモーターであり、今後起こりうる石油価格高騰を踏まえても、その強化が新しい未来を生み出すという見立ては説得的である。翻って、政府のいう「いまの日本経済があまりに輸出主導型であり、それを内需主導型に戻さねばならない」という認識が誤りであることも理解できよう。
 震災発生当時の様子を日記というかたちで記した第一部と併せ、これからわが国が向かうべき道を明確に描き出した一冊。(T.F)

『ご先祖様はどちら様』

高橋秀実 著
新潮社/1,470円(税込)
「なんてったって、お前は最後の縄文人だからな」と、とある先輩同業者にいわれたことをきっかけに、自分の先祖探しの旅に出かけた著者。家系図を辿り、戸籍を調べ、お寺の過去帳やお墓を訪ね歩く過程でのさまざまな出会いや発見がユーモラスかつ、しみじみと描かれていく。
 なぜ日本人は家系図にこだわるのか、先祖につながる感覚とは、そして個性とは何か......。古来、日本人が大切にしてきた価値観の再発見の旅でもある本書を読むと、「自分自身の存在」についてあらためて深く考えてみたくなってくる。
 最後に、祖父と祖母のお墓参りに出かける著者。お墓に佇みながら、ご先祖に声をかけることの意味に思いを馳せる。たったひと言、「元気でね」と声をかければよかった、と。
「ごめんね、おじいちゃん、おばあちゃん。本当にごめんなさい」。その末尾の一文が、胸の奥にじんわりと染みわたる。(T.K)

『誰でもわかる放射能Q&A』

澤田哲生 著
イースト・プレス/800円(税込)
 福島第一原発事故以降、メディアで事態や状況を解説する場面に、じつに多く出くわす。しかし、単語も単位も、素人には正直、よくわからない。実際、少なからずデマも流れているようだ。本書は、原子核工学の専門家がQ&A方式で、初歩的な疑問に対し平易に解答したものだ。原発や放射能の基礎知識から、危機への対策に加え、ニュースからではわからない実情も学べてしまう。(E.T)

『男性不妊症』

石川智基 著
幻冬舎/777円(税込)
 不妊で悩んでいるカップルというのは意外に多い。赤ちゃんはそんなに簡単にできるものではないのだ。日本では、不妊は女性に原因があるという誤解が強いが、実際は原因の約半分が男性にあるという。男性不妊専門医は少ないという間額も。一方で、生殖医療の世界は日進月歩。治療の方法があるのなら......。なにより不妊治療は、夫婦揃って取り組むことが大事、ということがよくわかる。(T.N)

『インテリジェンス機密から政策へ』

マーク・ローエンタール 著
慶應義塾大学出版会/4,410円(税込)
 米国の情報機関で長年働いた経験をもつ研究者の手による評価の高いインテリジェンスの教科書が、ついに邦訳された。近年、日本でも手嶋龍一氏らの著作を通じてこの分野への関心が高まっているが、過度な警戒や期待が根強く、そのリアルな姿が理解されているとはいえない。本書を日本語で読む環境が整ったことで、インテリジェンスに対する偏った見方は矯正されていくだろう。(M.K)

Voice 2011年8月号

東日本大震災から4カ月余り、この間、政治家たちは無能な菅首相を引き摺り下ろそうと、政局にうつつを抜かすばかり......。だが現在の日本には、東北の復興はもちろん、TPP参加の是非、中国との外交問題など、喫緊の政策課題がまさに山積している。そこで今月は、「日本再生への緊急直言」と題する緊急特集を組み、政治家たちに喝! を入れます。もう1本の特集は、「『反原発』原理主義の愚昧」。日本のエネルギー政策はいかにあるべきか、一時の感情に流されず、冷静に議論しました。今月号も、ご堪能ください。

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