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不況下で社員のモチベーションを高めるには?~松下幸之助の経営問答

2016年09月27日 公開 2022年08月18日 更新

「不況で仕事がなく、社員のあいだに沈滞ムードが広がっています。そのようななか、社員に働きがいを与えるにはどうすればよいでしょうか」

ある講演会でこうした質問を受けた松下幸之助は、つぎのように答えています。

 

どんなときも希望をもたせてやらねばいかん

仕事がないというのは、どうにもできんやないですか。経営を預かる者は、仕事がたとえなくても、社内を沈滞させないように考えなくてはいかん。それができるかどうかが、経営者としての分かれ道でしょう。

仕事がないなら、あした一日休め、しかしただ休んではいかん、一日分相撲を取れ(笑)相撲を取って力を鍛えよ、勇気を鍛えよ。仕事をやっても売れんからというて、きみらの腕を落としてはいかん。腕を磨くためには、外で鉄でも拾ってきて、ヤスリをかけよ。

なんか、そういう積極性のあることを言わにゃいかんのです。経営者というものはどんな場合でも、経営意欲を失うたらあかんわけです。希望をもち、希望をもたせてやらなければいかん。経営者は、こういうときは先頭に立って、みずからの勇気を鼓舞し、従業員の士気を鼓舞して、何かを与えるんです。仕事がなければ、仕事以外のものを与える、後日プラスになるものを与える。

それでも、なんにもないというなら、掃除でもしろ。掃除にはぞうきんが要るが、ぞうきんが減るというのだったら、足でやれ。足は減らん。それは冗談やけど、それくらいのことを言い、与えるだけの勇気をもつ経営者が、これからのほんとうの経営者なんです。ともにシュンとして、困ったなと言っておったら、悪くなる一方です。

そこで、どうしても人員整理をやらなければならなくなったら、その利害を説いて、「会社はこのとおり金はない。今まで、10億円なら10億円儲かっていたんだが、今は1円も儲けていない。会社も、10億円犠牲になっておるから、きみらもだれか犠牲にならにゃいかん。1カ月交代でもいい、1年交代でもいい、お互いに休んでくれ。しかし、会社はこれ以上、金を出すことはできん。これ以上出すと、会社はつぶれる。会社はだれのものでもない、諸君のもんだ。だから、働いた者が1割ずつでも出して助けあえ。会社がつぶれたら帰ってくるところもなくなるぞ」、それくらいのことを言える経営者でないといかんのです。 〔1977〕

PHP総合研究所研究本部編『松下幸之助の経営問答』(PHP文庫)より

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