1. PHPオンライン
  2. 生き方
  3. なぜいつも「お母さん」はイライラしてるのか? 心の奥底に残る「女は家で家事」

生き方

なぜいつも「お母さん」はイライラしてるのか? 心の奥底に残る「女は家で家事」

金井篤子(名古屋大学大学院教授)

2011年09月01日 公開 2024年01月16日 更新

家庭と仕事のバランスが上手く取れない。子育て中の女性にとって、なかなか出口のない問題の一つである。実際に子育て中の男性に比べ、子育てをしながら仕事もしている女性の方が不満足感は強いという。どうすれば女性の「ライフワークバランス」は保たれるのだろうか――名古屋大学大学院教授・金井篤子氏が「子育て中の女性」が抱く葛藤への処方箋を出す。

※本稿は、『PHP8月増刊号 くらしラク~る♪』特別企画「仕事も家庭も上手にハッピーバランスを見つけよう」より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

「ワーク・ファミリー・コンフリクト」

仕事にやりがいを求めて働いている人、生活のために働いている人、子どもの教育資金のために働いている人など、働く目的は人それぞれだと思います。

働く目的は何であれ、「男は外で働き、女は家で家事をする」といった伝統的な男女の役割分担意識が残っている人も多くいます。

30代~40代の女性にとって、それは親世代の考え方だと感じる人もいるかもしれません。しかし、外で働いて稼ぐ父と、家を守る母の姿を見て育った世代には、誰から言われるわけでなくても、女の自分が家事をしなくては、という感覚が身についてしまっていることがあるのです。

母として、妻として、家族を大切にしようとしながら働くわけですから、当然家庭と仕事の間で「どちらを優先させるべきか」というせめぎあいが生じ、心に葛藤が生まれてきます。

働く主婦を悩ますこの葛藤は、「ワーク・ファミリー・コンフリクト」と呼ばれ、仕事と家庭を両立させようとする際に発生することがわかっています。その葛藤の解消を目指す取り組みが、「ワーク・ライフ・バランス」と言われるものです。

親世代と比べると、今は仕事と家庭の調和のとれた生活のための制度がずいぶん整えられています。しかし、いくら社会的な制度が整っても、まだまだ女性が家庭を担う部分は大きいのが現実。

主婦が毎日忙しく働くのは、家族の幸せを願うからこそ。幸せになるためには、いかに「ワーク・ファミリー・コンフリクト」を小さくできるかが重要なのです。

 

働く主婦がぶちあたる壁

「ワーク・ファミリー・コンフリクト」は、大きく3つのことが考えられます。

1つめは、「家庭が仕事に影響を及ぼす葛藤」です。たとえば、仕事中に子どもが急に熱を出して保育園に迎えに行かないといけない状況を想像してください。これは誰かが至急、保育園に行く必要があります。保育園に行くために、諦める仕事を判断、調整していくなかで葛藤が次々に起こることが想像できます。

2つめは、「仕事が家庭に影響を及ぼす葛藤」です。家事をもっときちんとしたいのに、仕事で疲れて気力がなくなってしまうような状況です。

3つめは、「仕事と家庭に時間が費やされて、自分が自由に使える時間がないと感じる葛藤」です。

すべて仕事か家庭か、どちらかでのストレスが原因で、もう片方の達成感がマイナスとなってしまう状況を指しています。

次のページ
パートタイマーでも例外ではない

関連記事

アクセスランキングRanking