社畜か自分か。サラリーマンの選択
2017年07月20日 公開 2017年07月21日 更新
※本記事は、藤本篤志著「できる人は社畜力がすごい」(PHP新書)(はじめに)より一部を抜粋編集したものです。
それにもかかわらず、本書を手に取り、この「まえがき」を読み始めたあなたは、最初のハードルを越えました。働く上で、とても大切なメッセージを読む機会を得たからです。それは、単に怖いもの見たさが動機かもしれませんし、社畜ではなく「できる人」という言葉に興味を持ったからかもしれません。もしくは、たまたま私の他の著書を読んだ経験のある方かもしれませんが、理由はどうであれ、本書を手に取っていただいたことがとても重要なのです。
なぜなら、「社畜」という言葉を前向きに捉えると、成長できるサラリーマンの共通項が見えてくるからです。もちろん、成長したサラリーマンの誰一人として、「社畜」として成長したという意識はありません。しかし、分析すれば分析するほど「社畜」概念から学ぶべきことが多いということに気付くはずです。
そう考えると、不思議な言葉です。誰からも嫌われ、誰をも救っているのですから。
社畜の反対語は、敢えて言えば、「自分」です。もしくは、「自分という個性」です。
『できる人は個性力がすごい』というタイトルだったなら、本書を手に取るかどうかは別にして、ほとんどの人が納得するでしょう。しかし、そこに、成長のエンジンはありません。「えっ? まさか! 個性がなぜ成長のエンジンにならないの?」と思う人は多いでしょうが、成長できない人の大半は、自分、もしくは自分の個性を重要視する人だからです。
つまり、大袈裟に言うなら、社畜か自分か、そのどちらを選択するか、ということが、サラリーマンが成長するかどうかの分かれ道だということなのです。本書は、「社畜か自分か サラリーマンの選択」をテーマとして、心を込めたメッセージを書いていく予定です。いまは、疑問だらけであったり、ただ単に怖いもの見たさであったりかもしれませんが、本書を最後まで読んでいただいた方に届けたいメッセージは、働くサラリーマンの人生を変えると言ってもいいぐらいのとても大切なものになるでしょう。
しかし、「良薬は口に苦し」という諺があるように、本当に役立つ「自分のための働き方」を追求するのは、それほど楽なことではありません。特に、ちょっとした言葉尻だけで拒否反応や敵対視する癖のある人は、どれだけいい素質を持っていてもサラリーマンとして成功しません。その理由は、たとえ良薬であっても、口に苦ければ飲もうとしないからです。その結果、能力アップののりしろが制限されてしまうことになります。
私は、既に12年以上のコンサルティング経験で何千名というサラリーマンと接してきて、そのような方々、つまり、自分の価値観とほんの少し違うだけで、自分を変えるかもしれない新しい扉を開くことさえできない方々を数多く見てきました。どれだけ話し合っても、説得を試みても、「自分の価値観に合わないことはすべて間違っている」という主張を変えようとしません。「あなたが間違っていると言っているのではない。あなたの価値観と違うことから学ぶこともあり得るのだ」というメッセージすら、受け入れられないのです。最後は、自業自得なのでしょうが、本当に残念でなりません。
私がビジネス書を書き続けているのは、コンサルティングで知り合う機会がない大多数の方々に対して、私が仕事を通して得た「良薬」を一人でも多くの方にお伝えしたいからです。最初のハードルを越えたみなさんには、是非とも、最後のハードルまで越え続けていただきたいと思います。
人生は一度しかない――という言葉があります。
「こんなはずじゃなかった」と後悔しても、失った時間は二度と戻りません。だからこそ、自分自身を成長させるためのノウハウに接することができた人と、できなかった人とでは、天国と地獄ほどその後が変わるのではないか、ということを最近、強く思います。
本書が、その一助になれば、この上ない幸せです。
<付記>
本書は、新書でありながら、臨場感あふれる登場人物たちのやり取りが随所に盛り込まれています。実際に働いている人々の視線で、一緒になって悩み、疑問を抱き、解決していくことで、身近な問題として取り組めるように工夫しました。
新書では珍しい手法ですので、戸惑われる方もいらっしゃるかもしれませんが、読み進めていくうちに、徐々にこの狙いと効果について、気付いていただけることを期待したいと思います。