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『幸福の黄色いハンカチ』と高倉健さん~倍賞千恵子の現場

倍賞千恵子

2017年07月28日 公開 2020年11月20日 更新

※本稿は、PHP新書『倍賞千恵子の現場』より、一部を抜粋編集したものです。
 

スーパースター、高倉健さんのオーラ

高倉健さんと初めて共演したのは『幸福の黄色いハンカチ』(1977年、山田洋次監督)です。

初めてお目にかかったのが、東京・築地の東劇で開かれた記者会見のときでした。顔を合わせた共演者の高倉さん、武田鉄矢さん、桃井かおりさんは、それぞれ仕事の畑が違うので、みんな知らない人同士。私もガチガチに緊張していました。

会見前に喫茶室でみなさんとお茶を飲んだとき、映画初出演の武田さんが大ヒットした「母に捧げるバラード」の延長のようなエピソードを披露して、みんなで涙が出るほどゲラゲラ大笑い。ふと気がついたら緊張も何もなくなって、会見にもリラックスして臨むことができていました。

健さんの第一印象は、「やっぱりかっこいいなあ」

ずっと第一線で仕事をされてきたスーパースターのオーラというか存在感というか、これまで会ったことのない人に出会ったという感じでした。

とくに印象が強かったのは、その「眼力」です。なにしろ私はずっと目のちっちゃな「お兄ちゃん」と仕事をしていましたからね。

『幸福の黄色いハンカチ』は、北海道の網走から夕張まで武田さん、桃井さん、健さんが赤いファミリアに乗って旅をするロードムービーです。

私は夕張での回想シーンの出番がほとんどでした。ほかの3人が撮影チームとともに北海道を移動する間、私はひたすら待ち続け、夕張で3人を迎えるかたちで合流しました。

健さんは、映画初出演で監督に叱られてばかりいた武田さんや、緊張している桃井さんを撮影後に慰めたり励ましたりしながら関係を深めていったそうです。

私はすでにできあがったファミリーに毎回ゲストの女優さんを迎え入れる『男はつらいよ』とは、ちょうど逆の立場です。

だから最初は気持ちが張っていました。初日ロケはみんなで食事したあと、お茶を飲みに行くことになりました。ちょうど雨が降っていたのですが、そのとき山田監督から突然、
「倍賞君、健さんのところに行って、兄弟が何人いるのか聞いてきてごらんよ」
と言われ、え?と思いながら健さんのところへ行き、そこでお話を聞いているうちに、いつのまにか腕を組んで相合い傘をしていました。ドキドキしていたので結局、兄弟は何人だったのかは覚えていません。

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ハンカチを見てポロポロ涙が流れた

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