いまの若者が重視しているものは何か
2018年05月08日 公開 2023年02月01日 更新
「最近の若者は何を考えているのか」「なぜ新入社員がすぐに辞めてしまうのか」など、若者世代に対して、どのように向き合えばいいのかわからないという悩みが、企業において顕著に増加している。今、若者に何が起こっているのか。企業はどう対応すべきなのか。若者研究の第一人者である原田氏に明快に解説してもらった。
取材・構成:平出 浩
写真提供:博報堂
若者が重視しているのは「バランス」と「ホドホド」
日本生産性本部の新入社員へのアンケートを見ると、近年の新入社員は社長になりたい人が減っていることがわかります。「どのポストまで昇進したいか」という質問に対し、例えば団塊の世代は「社長」と答える人が大勢いました。
その後、社長になりたい新入社員はどんどん少なくなっていって、代わりに伸びたのが「専門職」です。団塊ジュニア世代が新入社員の時には、専門職になりたい人が非常に多くいました。大企業で出世して上に行くより、個人としてたくましく生きようと考える人が増えたのでしょう。
しかし近年は専門職志向も徐々に減ってきて、「管理職」の人気が高まっています。社長になっても、不祥事が起こると、メディアの前で頭を下げることになるし、専門職というのも、SNSで大勢の友達とコミュニケーションをとって生きてきた立場からすると、偏屈に見えるのかもしれません。そこでバランスのよさそうに見える管理職に憧れるという構図なのでしょう。実際には中間管理職は上にも下にも気を遣わなければならず、つらい立場なのですが。
ともかく、今の若者が非常に重視しているのは「バランス」です。人間関係のバランスもそうだし、仕事と生活のバランスであるワークライフバランスもまさにそう。左遷されたり窓際族になったりするのは嫌だけど、かといって、トップに上り詰めて、多大な責任は負いたくない。何に対しても「ホドホド」を望んでいるのです。
ゆとり世代の大きな特徴の一つに「SNSとともに生きてきた」ことが挙げられます。彼らは30歳近くになっても、小学校や中学校時代の友達とつながり続けています。
例えば、ある山奥の貧しい村に生まれ育った神童がいたとします。そして「僕は日本から貧困をなくすために生きていく」と決意し、奨学金をもらって、東京大学に進んだとします。ところが、東大に入ると、まわりは親が裕福な人がほとんど。彼らと接するうちに、自分の感覚も麻痺してきて、自分やその周辺のことを中心に考えるようになっていく。かつては、これが田舎から東大に進んだ人の一般的なありようでした。
ところが今は、東大に進学しても、田舎の小中学生時代の友達とSNSなどで交流し続けるのです。東大を卒業して官僚になったとしても、地元に残るマイルドヤンキー(地元志向が強く、同年代の仲間や家族との関係を大事にする若者)たちとつながっている。できちゃった結婚をして、早々に離婚して、アパートを追い出され、漫画喫茶に住んでいる同級生とも連絡を取り合っている。
こうなると、東大から官僚になるようなエリートであっても、幅広い層の人の気持ちがわかることになります。これはゆとり世代以降の特徴の一つで、よい面といえるでしょう。