「学校中心主義」から「生活中心主義」へ
学校外の話もしておきましょう。子どもの主なストレス因として、「教室ストレス」と「家庭ストレス」が挙げられます。
このうち、教室ストレスを縮減することが大切で、それは先生たちの役割ですが、家庭ストレスから救出することも同じく重要です。
子どもも大人も、家庭という「第一の場」、学校や職場という「第二の場」の往復が生活のメインになりがちです。だからこそ、家庭ストレスや学校ストレス・職場ストレスを発散する「第三の場」が重要となります。
第三の場というのは、家、学校以外の活動場所、大人であれば、家、職場以外の居場所ということになります。
家では親と十分なコミュニケーションがとれない、十分に食事がとれない、貧困により生活が苦しいなどのストレスを抱える児童のために、地域で展開されている「子ども食堂」などがその例と言えます。
「子ども食堂」は、栄養が不足しがちな貧困家庭の子どもに食事を提供するという意味合いだけではなく、様々な副次的メリットをもたらしています。
子どもたちにとって「子ども食堂」は、地域とのつながりを持ち、さらに大人たちにしっかりと愛されるという行為を経験することによって、家庭ストレスや教室ストレスを解消する、第三の場としての役割を果たしているのです。
他にも、学童や地域クラブ、大人も交えたサークル活動など、居心地のいい「第三の場」のあり方は様々です。
このような地域活動がそうした役割を果たすことも多いのですが、日本では地域活動よりも、どうしても学校で管理された部活動が中心になりがちです。
そのため、「学校空間から解放されたい」という児童・生徒にとってはそれが苦痛になる場合もありますし、部活では学校と同じ先生が指導し続けるがゆえに、生徒が先生からの評価を気にしなくてはならず、逆にストレスを感じてしまうというケースもあります。
「第三の場」の多様化を進めるためには、学校中心主義を問い直すこと、学校中心主義を生活中心主義へと変えていくことをベースに考えていく必要があると言えるでしょう。
※本記事は荻上チキ著『いじめを生む教室』(PHP新書)より一部抜粋・編集したものです