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嫌な記憶はゴミのせい? 「捨てる」と自己肯定感が上がる理由

大嶋信頼(心理カウンセラー)

2018年08月02日 公開 2023年05月24日 更新

人が物を捨てられない理由

「物が捨てられない!」という方はたくさんいらっしゃいます。

「そんなの捨てちゃえばいいじゃない!」とみんなは言うのですが、じつは「もったいないから捨てられない」という単純な理由のほかに「物に記憶が条件づけられているから捨てられない」という面白い理由があったんです。

要するに、物を捨ててしまうと過去の記憶が失われてしまって、自分自身が保てなくなる不安です。

誰でも、「記憶で人格ができている」という感覚がありますから、過去の記憶が物を捨てるとともに失われてしまったら、自分がまったく違う人間になってしまうかも?という不安があったりするんです。

たしかに、その不安はあながち間違っていなくて、物に条件づけられていない記憶は劣化していきますから、不快だったものまでいつしか美化されていきます。

記憶が美しく変化していくと、それまで「不快」や「苦痛」で低かった自己肯定感が、美しい記憶によっていつの間にか高くなって美しく輝いてしまったりするんです。

でも、人には「美しく輝いてしまうと周囲から嫉妬されてしまう」という恐怖があるから、それを避けたくなる、という癖があったりするんです。

その癖が、物をどんどん捨てることで変わっていったりするから興味深いんです。

 

物を捨てただけで自己肯定感が大幅UP

20年間、過去の恨み、つらみを消せなかった方が、昔から大切に取っていた、大量の雑誌をまとめて資源ごみに出しました。

すると、しばらくすると記憶の忘却がはじまって、不快な記憶がどんどん抜けていって、やがて美しい記憶だけが残るようになっていきます。

あんなに怒りと憎しみにまみれていたのに、そこから解放されて「自分はよくこれまでやってきた!」と武勇伝に変わったときに「あ! 自己肯定感が高くなっている!」と感じることができるんです。

自己肯定感が高くなっていくとともに、その方がどんどん美しく輝く姿を見て「自分も物を捨てよう!」と、家に帰ったら慌てて「もったいない」と思っていた物を捨てはじめたんです。

実際に捨ててみると「あ! 自分が変わらないように、自分に対する戒めのように物を取っておいたんだな!」ということがわかってきました。

自分が変わって自己肯定感が高くなってしまうことを、心のどこかで恐れていた自分を感じることができたんです。

「これを捨ててしまったら後で大変なことになる!」というのは「自分が変わってしまって、周りから嫉妬されることを恐れていたからかも!」と感じられたんです。

そうなんです。汚い物にまみれて、低い自己肯定感のままでいれば人から見向きもされないで嫉妬の攻撃を受けないで済むかも?と思っていました。

でも、物を捨ててあらためてわかったのは、自己肯定感が高いほうが嫉妬されないんだ!ということ。

物を溜め込んで捨てられずに、自己肯定感が低いままだったときのほうが周囲からの攻撃が酷く→ますます自己肯定感が低くなって...という悪循環でしたが、物を捨てて記憶が美化されたときに「あ! 自分は周囲の嫉妬をまったく気にすることなく自由に生きていけるのかも!」という感じに気持ちが変わっていったんです。

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「すべて捨てよう」と唱えながら捨てるのがコツ

著者紹介

大嶋信頼(おおしま・のぶより)

心理カウンセラー

株式会社インサイト・カウンセリング代表取締役。米国・私立アズベリー大学心理学部心理学科卒業。カウンセリング歴30年、臨床経験はのべ9万件以上。『それでも大丈夫 不安を力に変える方法』(青山ライフ出版)など著書多数。

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