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生き方

あなたの人生に必要な本、不要な本の見極め方

名越康文(精神科医)

2018年12月17日 公開 2024年12月16日 更新

得意な分野の本を10冊ほど読んでみる

本のレベルがわかるようになるには、たとえば自分が今すごく関心をもっているジャンルのなかで5〜10冊ほど読んでみることです。そうすると、まずはそのジャンルの本のレベル、あるいは著者の知的レベルや関心のレベルがわかるようになってきます。

私の専門は精神医学、心理学ですが、20代の頃、医学から心理学に分野を広げようとしているとき、まずは社会心理学の本を5〜10冊ほど読んでみました。「こんな実験をするとこんな結果が出る」というような、ざっくりしたことが書いてある入門書、ハウツー本などを読むことが大切な段階もあるのです。

社会心理学系の本を10冊も読んでみると、だいたい同じようなことが書いてあることに気がつきます。ですから15冊も読むと飽きますが、そうすると自分の選択眼が鍛えられるため、あとは冒頭にサッと目を通すだけで「この本はもう読まなくていい本だ」ということがわかるようになっていくのです。

同じジャンル、同じテーマの本を必要に迫られてたくさん読んでいるうちに、勘や選択眼が磨かれていきます。すると、ほかのジャンルの本でも5ページに1か所くらい面白い、20ページに1か所くらい面白いというレベルの本を、かなりの確率で選べるようになるのです。

そうなると、読書は人生の中でかけた時間に比例するすばらしいものになります。

専門分野以外では、身体技法研究家の甲野善紀(こうのよしのり)先生の影響もあり、武術の本に凝って50冊以上は読んだため、レベルがわかるようになりました。

ほかにレベルがわかる分野としては、文学から横に派生して剣豪小説、古代史を中心とした歴史関係と量子論の入門書です。量子論は好きなのですが、本格的な本の内容はほとんどわかりません。それでも量子論を解説した一般書を十数冊ほども読んでいるうちに、ある程度それらの本のレベルはわかるようになりました。

ですが、実は私の「レベルがわかる力」が鍛えられたのは、最初は本ではなく、映画でした。

読書嫌いだった私の趣味は映画であり、思春期からけっこう映画を観てきたため、今ではポスターを見れば自分が観るべき映画かそうでない映画か、だいたいわかるようになりました。それが本選びにも応用できるようになったのです。

ちなみに、ゴルフもなかなかの腕前である私の知り合いの社長さんは、関係図書も何十冊も読んだため、もう本のカバーを見ただけで内容のレベルがある程度わかるそうです。

誰でも必ず、何か興味のある分野、得意な分野をもっているはずです。みなさんも、自分が好きなジャンル、興味のある分野からレベルを知る力を鍛えればいいでしょう。まずは自分の土俵から始めてみてください。そうして蓄えていった見抜く力、洞察力が、いつかほかの分野に及ぶ力になるのです。

本のレベルを嗅ぎ分ける力を鍛え、グレードがわかるジャンルをいくつかもっていたら得です。時間もお金も無駄にせずにすみます。

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なかなか読み進められない“頂の本”を持っておく

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