暗記ものは忘却曲線に合わせて復習
受験には暗記がつきものです。でも、年号や単語などを単純に数字や文字として暗記すると、すぐに忘れてしまいます。
エビングハウスというドイツの心理学者は、「無意味な音節」をどれだけ覚えていられるかを調べて「忘却曲線」を作りました。すると、
・20分後には42%忘れる。
・1時間後には56%忘れる。
・約9時間後には64%忘れる。
・1日後には67%忘れる。
・2日後には72%忘れる。
・6日後には75%忘れる。
・31日後には79%忘れる。
という結果が出たそうです。20分後に半分近く忘れるというのは、驚きです。
しかし、カナダの大学の研究では、1日後に10分、1週間後に5分、1カ月以内に2〜4分復習すると、ほぼ記憶は保たれる、と発表されています。
覚えたことを24時間後、1週間後、1カ月後に軽く復習して反復すると、よく記憶が保たれます。この結果を参考にして、僕も、復習のタイミングを大事にしていました。
そもそも、「無意味な音節」を覚えるのはとても難しいことです。でも、これを「意味ある言葉」にすれば覚えやすくなります。
一つはおなじみの語呂合わせです。
年号でも、例えば「オランダ商館を出島に移す」1641年、これはおじいちゃんの生まれ年の300年前だとか、「イロヨイ(1641)返事、出ないで出島だ」のように、覚えにくいものはどんどん強引に語呂を作っていきましょう。
もう一つがエピソード記憶です。
ちょっとしたイラストやオリジナルストーリーを書いて、そのイラストやストーリーを軸に覚えるなど、意味のないものに意味を持たせることも記憶の定着には非常に有効だと思います。
教養こそが、人生を豊かにする最大のツール
いくつか、僕が実践した勉強法をご紹介しましたが、楽しみや睡眠時間を犠牲に勉強を続けることはとても大変です。何かモチベーションがないと続きません。
目標を達成するためには、自分の内側にモチベーションをきちんと持ったほうがいいでしょう。特に、資格試験は合格することがゴールではなく、スタートです。その資格を使ってどう生きていくのか。その先の夢を叶えるためには、自分の内なるモチベーションが十分になくてはうまくいきません。
僕の場合は、「医師になって、一人でも多くの人を消化器系の病気から救いたい。そのために勉強をして国立の医学部に入学するのだ」というモチベーションが一つ。そして、もう一つは、実は「教養を身につけたい」でした。
教養のある大人になりたい。どのようなテーマでも話せるような賢さがほしいと切実に思ったのです。
試験に受かることはプロセスのようなもので、勉強をする目的は自分の知識や知的体験を増やすことだ、そして「人生とは何かを学ぶもの」だと思っていました。それには、ある程度幅広く、それでいて系統立てて学問を学んでいく必要があると考えたのです。
例えば哲学を学ぶにしても、科学や数学をある程度分かっていないといけない。科学と宗教はどこでどのように分かれたのかという過程の中にも哲学はある。
哲学を考える上で、言葉ではあいまいになってしまうことを数式で表現する中で数学は生まれました。多様な視点がないと、教養が深くなっていかないのだと知りました。
医師としても、哲学や自然科学や、さまざまな学問領域に精通していないと、病気や患者さんの背景を深く理解することができないと思うのです。
受かる勉強をすればいい、ということだけでなく、勉強することで人生が豊かになり、物事に精通していく過程を楽しめれば、学ぶ意欲もわきます。
いろいろなことを知っていれば、一つの情報に触れたときに、様々な角度から理解し、反応することができる。自分もそうなりたいと切実に思ったことが、勉強をするモチベーションになりました。
その気持ちは今も変わりません。幼少期は大嫌いだった勉強ですが、今では「人生を豊かにするもの」として捉えています。だから僕は、これからも勉強をし続けたいと思っています。