<<石井洋介、医師でありながら、ゲームアプリ「うんコレ」を開発、日本うんこ学会 会長、消化器外科医、厚生労働省職員、在宅診療医、経営コンサルタント、クリエイターと多くの顔を持つ。
16歳で難病指定されている潰瘍性大腸炎を発症し、治療過程で高校生活から落ちこぼれ、19歳の初めてのセンター試験、偏差値は30にまで下がっていた。
医師を志した石井少年はどのようにして、偏差値30から医学部合格を果たしたのか。限られた時間の中で、最大限の結果を出すために効率化された勉強へのアプローチ方法とは?
『19歳で人工肛門、偏差値30の僕が医師になって考えたこと』から、そのエッセンスの一部を紹介したい。>>
※本稿は石井洋介 著『19歳で人工肛門、偏差値30の僕が医師になって考えたこと』(PHP研究所)より一部を抜粋し、編集したものです
机の前に座る習慣を身につけるための「写経」
高校に入学してすぐに病気になってしまった僕は、4年以上ほとんど勉強をしていない状況でした。
勉強の基礎がまったくできておらず、はじめてのセンター試験模試の結果は、数学のⅠは34点、Ⅱに至っては6点でした。
これで、どうやって医学部に合格するんだ、と自分に突っ込みを入れたくなるぐらいでしたが、「医師になる!」という目標を達成するためには、とにかく勉強するしかありません。
今のように、無料や安価な受験アプリがある時代でもなく、できるだけ親に迷惑をかけずに、最安値で国立の医学部に合格する。こんな奇跡を起こすにはどうしたらいいか──。
そこで手にとったのが、大平光代さんの『だから、あなたも生きぬいて』(講談社)、そしてヤンキー先生こと義家弘介さんの本でした。ファッション誌の着こなしを真似るように、逆境を乗り越えた人の人生を真似するような感覚でした。
二人に共通する最初の勉強法は、「とにかく書き写すこと」でした。
僕の場合は手術からあまり時間がたっていなかったので、勉強する以前に体力がなく、机の前に1時間も座っていられないという問題がありました。長時間の受験勉強に挑む前に、まずは勉強の基礎体力をつけるために、単純に机の前に座る習慣を身につける必要がありました。
そのリハビリとして、「書き写す」という行為は有効でした。まるで仏教の経典を書き写すようにひたすら書くので、僕は、これを「写経」と呼んでいます。
書き写すものは、朝日新聞の天声人語など短いものから始めましたが、好きな小説や哲学書など、勉強に関係のないものが最初はおすすめです。とにかく机に向かって作業をする時間に耐えるトレーニングからスタートしたのです。
不思議なもので、言葉を書き写しているうちに心が洗われ、落ち着いて、集中力が養われ勉強のモチベーションもじわりと上がって、長く座っていられる自信もついてきます。「長時間勉強するのが苦手」という人にはおすすめです。
もちろん、書かなくても勉強はできます。一方で、書いて勉強すると、書いたノートを見て「これだけ勉強したんだ」と可視化できるところ、満足感につながるところが利点だと思います。
成績が上がって自信を得るには時間がかかります。こういう小さな努力の積み上げは、成績が上がらなくても達成感や自信を得られる方法の一つです。