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自律神経に悪影響! 「姿勢がいい人」に忍び寄る"かくれ猫背"の恐ろしさ

小林弘幸(順天堂大学医学部教授)

2019年01月24日 公開 2022年12月07日 更新

姿勢がいいのに"背中にこりを感じる人"が疑うべき「かくれ猫背」

猫背は直立姿勢と比べると、内臓を圧迫することになりますから、健康にいいとはいえません。なにより、あまりかっこよくありませんよね。

みなさん気づいたときに、一瞬は胸を張っていい姿勢を取ろうとするのですが、いつの間にか戻っていることが多いようです。

また、「自分は猫背ではない」と思っていても、「なんか、テレビで観み る俳優やモデルの人とは、立ち方が違うなぁ」と感じることもあるでしょう。猫背にならないようにと、今度は無自覚に「かくれ猫背」になってしまっているケースです。

かくれ猫背とは、身体は「丸まろう」としていて、意識が「伸ばそう」と考えているときに、うまく背筋を伸ばす方法がわからなくて、変に胸を張ったりしてしまう状態です。

筋肉にかかる負担は、通常の猫背より大きいといわれています。周囲から姿勢がいいといわれていても、本人が背中や腰のこりを感じる場合は、このケースが当てはまるかもしれません。
 

猫背が続くと酸素が足りなくなってしまう

姿勢の乱れが、血流や内臓など多方面の弊害に猫背の姿勢では脳が酸素不足になるので、ストレス耐性も低くなります。そうなると、いっそう猫背が進行し、定着してしまいます。

「酸素が足りなくなる」というのは、どういうことでしょうか?

気道は、ストローと同じです。首をくの字に曲げている時間が長いと、気管が圧迫されて呼吸が浅くなり、脳だけでなく全身に酸素が少ない状況になります。

酸素は肺で血液に取り込まれますから、猫背だと胸きよう郭かくや横おう隔かく膜まくの動かせる範囲が狭せまくなります。

胸郭は12対の肋骨や胸椎によって構成されています。一般に、胸郭は「肺や心臓を守る頑丈な籠のようなもの」と思われているのですが、これにはちょっと誤解があります。

防御しているのは事実ですが、ガッチリ動かないようなものではないのです。肋骨は脊椎や胸椎と、関節や肋軟骨でつながっています。そのため、籠のような胸郭は、呼吸に合わせて柔軟に膨らんだりしぼんだりします。

というよりも、「胸郭が広がることによって、空気を吸い込んでいる」というべきかもしれません。

映画や漫画などで「アバラが2~3本折れたみたいだぜ」というセリフがありますが、そんなに折れたらまともに呼吸はできません。「肋骨は呼吸するための装置だ」という人までいるぐらいなのです。

「深呼吸しようとすると、背中が痛いんです」というほど肩こりのひどい人は、つまり胸郭・肋骨を広げられないぐらい、肩や背中の筋肉が固まってしまっているわけです。

呼吸は、ヨガや座禅などの瞑想法はもちろん、あらゆるスポーツのメンタル管理で重視されています。酸素を効率よく取り込まないとマラソンのような長距離は走れませんし、脳だって酸素が必要です。

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首の血管が圧迫されることで、血行が悪化し健康に影響が出る

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