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Q・B・Bブランドで「ベビーチーズ」のシェア7割。 開発先導と高収益を両立する六甲バター株式会社

三宅宏和(六甲バター株式会社社長)

2019年02月27日 公開 2019年04月15日 更新

「ゲーム感覚で、面白がってやればいい」

三宅 次に、もう一つの経営目標である「高収益安定企業」について申し上げます。弊社では営業利益率を10%確保できるように活動しており、おかげさまで直近の2017年度は、11%を上げることが出来ました。アメーバ経営を導入した効果が表れています。

そもそもプロセスチーズは、海外の原材料を輸入し、加工して製造します。原材料のメインは8割が輸入のナチュラルチーズです。主に南半球のオーストラリアやニュージランドからですが、最近、北半球のアメリカやヨーロッパなどからも輸入し始めました。

そして、海外の原材料の相場や為替レートが、かなり業績に影響を及ぼします。弊社はアメーバ経営導入前の2007年、13億円ほどの大きな赤字を出してしまいました。

それを受け、翌08年には、抜本的なコスト削減や値上げ、容量変更など、思い切った手を打ちました。一方で外部環境も少し良くなり、黒字を確保できました。さらに09年には体質改善の効果で、かなりの利益が出るようになった。そして、経営に余裕ができた2010年に、アメーバ経営を導入したのです。

――「起死回生の一手」としてアメーバ経営を導入されたわけではないのですか。

三宅 私は入社以来、主に生産部門で働いてきたのですが、それまでも弊社の生産現場では、さまざまな管理体系の手法を導入していました。例えば、いわゆるトヨタ生産方式や、経営学者ピーター・ドラッカーが提唱する目標管理制度などです。

他者が開発した管理体系に対して、「良いものなら、やってみたらいい」という社風があったものですから、アメーバ経営導入にあたっても、「新たに管理体系の一つのやり方を取り入れる」という認識で、それほど抵抗感を生じませんでした。

逆に「新しく始めたけれど、いつまで続く?」というような声も上がっており、「しばらくやってみて、うまく行かなければ再考しよう」という、お試し感覚でのスタートだったかもしれません。当時、私は生産の部長で、取締役でした。

――過去に導入された手法と比較して、アメーバ経営の特徴をどう感じられましたか?

三宅 まったく違うのは、「生産が商売する」ということですね。
それまで生産部門では、「1日に1000ケース作れ」と言われたら、とにかく1000ケース作ることだけを考えていました。

「時間当り採算」ということは意識になく、ある売上(総生産)を生み出すためにどれぐらいの時間を掛けたか、両者を紐づけて考えることをしていませんでした。

時間管理については、「誰が休んでいる」「他部署から何人か応援に来た」という労働管理上のことだけを記録していたぐらいです。

――その一方で、他者の管理体系を導入されてこられたので、コスト削減については意識されていたのではないですか?

三宅 たしかに、コスト削減は意識していました。メインは「歩留まりを高めること」。ただ、「今月はこれだけの歩留りで、設定値より良化した。その分これだけムダを省くことができた」という発想で止まっていました。原材料費や燃料費、設備費などの経費を、トータルでいかに抑えていくかということに、発想が向かっていませんでしたね。

そして、経理部門から目標値を与えられ「このままでは会社全体で売上はxx億円、利益はxx億円しか出ない。生産部門は1億円、コスト削減してほしい」と言われ、それに従うのみ。歩留りを高め、機械の稼働率を上げるなどして、必死に要求に応えているだけでした。

――生産部門はまさに、受け身の経営を強いられていたのですか。

三宅 これに対して、アメーバ経営では考え方がまったく異なります。「部門別採算制度」ですから生産部門を構成する各部署は、それぞれが採算を取らねばなりません。商品を売り渡す際の価格や年間の生産量を、営業部門と交渉するところから始めます。

そのうえで、売上(総生産)はいくらを目指すか、利益をどれだけ確保するかを自ら設定し、原材料費や燃料費、設備費など経費の枠を設定していくのです。

これまでは、歩留りを高く出来たり、機械の稼働率を上げても、利益額がどれだけ増えたのかがわからなかった。それがアメーバ経営によって「今年は1億円の利益」という目標設定を行い、その実現が会社全体の利益の1億円に直結すると実感できるようになる。私は皆に「あまりプレッシャーを感じず、ゲーム感覚で、面白がってやればいい」と言いました。

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「悪いものは良くしよう」「良いものは、より良くしよう」とする力

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