<<京都で注目を集めるステーキ丼専門店「佰食屋(ひゃくしょくや)。
ランチのみの国産牛ステーキ丼専門店。どんなに売れても、店名の通り1日100食限定。営業はわずか3時間半。売り切れれば営業は終了なので、結果的に飲食店なのに残業ゼロ。佰食屋は驚くほどの「ホワイト企業」なのである。このお店で働きたいという希望者が後を立たない。
代表の中村朱美さんは実は、いわゆるロスジェネ=氷河期世代を社員として積極的に採用している。そこには失われた時代に苦しめられた世代への思い、そしてその実力への評価がある。著書『売上を、減らそう。』より、人材と採用について触れた一節を紹介する。>>
※本稿は中村朱美著『売上を、減らそう。たどりついたのは業績至上主義からの解放』(ライツ社刊)より一部抜粋・編集したものです
「就活弱者」を活かす採用
佰食屋では、さまざまな背景を持った人、つまり普通の会社から見ると「マイノリティ」の方が働いています。
子育て中の主婦やシングルマザー、障がい者や留学生、中卒、高齢者……。70歳以上の人も3名いて、わたしは彼女たちのことを「おばあちゃんズ」と呼んでいますが、めちゃめちゃ元気で現役で、バリバリ働いてくれています。
これまでの経験から、コンプレックスを持っている人がとても多いです。
面接で20社30社受けたけれど、どこにも採用されなかった。子育てや介護で早く帰らなければならず、周りのスタッフに申し訳ないと感じていた。
なかには、「どんなに頑張ろうがミスをしなかろうが、なにか気分を損ねると、アルバイト先の先輩に殴られる」という理不尽な経験をした人もいました。
こういった人たちを採用するようになったのは、「残業ゼロ」「誰でもできる仕事」といった職場環境にくわえ、「学歴不問、職歴不問」にしていたおかげでもあるのですが、あるとき気づいたのは、これまでの苦労がたくさんあるからこそ人にやさしくできる人が本当に多い、ということでした。
これまで不遇な扱いを強いられてきたからこそ、まず会社の方から「あなたを大切にします」という姿勢を示すことで、自然と従業員も「この職場を大切にしたい」という思いを持ってくれているのかもしれません。
世の中がイメージする「仕事ができる人」は、手際がいい反面、ちょっとした軋轢を生む危険もはらんでいます。
テキパキ仕事ができるからこそ、少しでも自分のペースを乱されると、「ちょっと待って!」と口調が乱暴になる。思うように仕事の進まない同僚がいると、「しっかりしてよ!」とイライラする。イライラは周りにも伝播します。それがお店の雰囲気を損ねてしまう。
真面目にコツコツと仕事ができる人。おとなしくて消極的だけど、人にやさしく接することができる人。いわゆる「就活弱者」と呼ばれる人の中には、そういった人たちがたくさんいます。多くの会社は、そんな人たちのすばらしさを見落としてしまっているのではないでしょうか。