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仕事

伸びる会社は人材育成に時間とお金をケチらない

小山 昇(株式会社武蔵野社長)

2019年08月05日 公開 2024年12月16日 更新

「教える」だけでなく「育てる」勉強会を

社員がどうなれば「育った」といえるのか。それは、会社の方針をきちんと理解し、方針の通りに行動・実践している、ということです。

武蔵野の方針を徹底・実行するために作成しているのが「経営計画書」です。武蔵野にとって経営計画書は事業の核心であり、武蔵野のすべてを明記したものといっても過言ではありません。

それほど重要な経営計画書ですが、作成しただけではもちろん何の意味もない。経営計画書は、中身が実行されてはじめて意味を持ちます。

そのため、毎年「経営計画発表会」を盛大に行ない、私自身が自分の言葉でその中身を説明します。

ただ、それだけでは当然、社内に浸透しません。

そこで、定期的に実施しているのが「早朝勉強会」です。武蔵野では、朝7時半から8時半まで、1時間かけて行なう早朝勉強会を、半期に10回以上開催しています。

私が講師を務め、経営計画書の中身や、仕事のコツ・心得を45分間にわたって解説します。そして、残りの15分間で、出席者が一人30秒ずつ、感想や学んだこと、これから実行していきたいことなどを全員の前で発表していきます。

はじめは誰でも、たいしたことは言えません。「大変勉強になりました」「今後の仕事に役立てたいと思います」などと、心にもないことを口にします(笑)。

でも、それでもいいのです。他の社員の感想を聞きながら、「あの人はあんなことに気づいたんだ」とか、「自分もそろそろ本腰を入れないといけないなあ」と思うようになります。

早朝勉強会は、はじめの45分間が「教える」時間、残り15分間が「育てる」時間です。中小企業には「教える」だけで中身が身につき、みずから実行するような社員が入社してくることは、まずありません。だからこそ、意識して「育てる」ことが必要です。

武蔵野では、経営計画発表会、早朝勉強会に加え、パートやアルバイトも含めた全社員に方針を発表する「政策勉強会」、「全社員勉強会」などを実施し、方針の共有を図っています。

ほかにも、会社の制度や評価の仕組みを理解するための「武蔵野ガイダンス」や、必要な業務知識を身につけるための研修など、社内勉強会が頻繁に開催されます。

これらの勉強会は「参加自由」としていますが、全社員に自主的に参加するよう期待しても、土台無理な話です。そこで、参加回数が賞与の評価に反映されるようにしました。そうなると、イヤイヤながらも全員参加するようになります。

内容をどれだけ理解できたかは二の次です。まずは参加すること。理解はそこから始まります。
 

社員のやる気を引き出す表彰・褒賞制度

社員の成長のためにはお金と時間を惜しまない――その一環として導入しているのが、数々の表彰・褒賞制度です。

「社長賞」「優秀事業部賞」「優秀社員賞」「新人賞」など、全部で16種類の表彰・褒賞があります。それぞれに選考基準があり、賞金金額や人事評定においてアップする号俸が決められています。

これらを行なう上で間違いやすいのは、「今年は際立った成果を上げたケースがなかった」という理由で、社長賞を「該当者なし」にしてしまうことです。それでは社長賞が出るか出ないかは経営サイドの胸三寸で決まることになり、社員の中から「今年は社長賞を狙ってやるぞ!」という意気込みが失われてしまいます。

プロ野球の首位打者は、たとえ3割を切っていたとしても、打率トップの選手が首位打者です。ホームラン数が30本に達しなくても、ホームランを一番多く打った選手がホームラン王です。タイトルとはそういうものです。

だから、どんな業績であっても、毎年トップの成績を上げた者が社長賞を受賞するようにしなければなりません。

また、成績優秀者だけが表彰されるのでは、成績を上げられない社員は面白くありません。武蔵野では、成績以外の観点からも、様々な表彰を取り入れています。

その一つが「永年勤続表彰」です。当社で勤務を続けると、5年、10年、20年、30年の節目に旅行券がプレゼントされます。10年目以降は10万円で、配偶者がいる人は20万円。

ただし、社員の場合、海外旅行に行くことが支給の条件です。単に国内旅行に行くだけでは盛り上がりに欠ける。日常から離れ、異文化に触れることで、家族で思い出になるようなイベントにしてもらいます。

他にも、職場における環境整備(一般にいう「5S」)をがんばった人に賞金や食事券を出したり、一定期間中、無事故無違反で過ごせばもらえる「安全運転表彰」や、社員同士の投票でノミネートされる「縁の下の力持ち表彰」なども設けています。

受賞者は経営計画発表会や政策勉強会など、多数の社員が集まる場で、壇上に上がって表彰されます。そういった経験がすごく大事なのです。

みんなの注目が集まる中で、これまでの努力や取り組みが称賛される。一方、ギリギリのところで受賞できなければ、とても悔しい思いをする。その悔しさをバネに、「来期こそ取ってやるぞ!」という意欲が燃え立つのです。

※本稿は、マネジメント誌『衆知』2019年1・2月号の好評連載「実践ホワイト経営」より一部を抜粋編集したものです・

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